本物に触れる感動

ヨーロッパ旅行で出会った歴史を感じるタペストリー

公開日:2021.04.10

2019年10月から11月にかけての地中海クルーズで出会ったゴブラン織りのタペストリーの大きさや美しさに圧倒されました。私がゴブラン織り制作を始めるきっかけとなったタペストリーをいくつかご紹介します。

宮殿の中の大広間のタペストリー

宮殿の中の大広間のタペストリー

このタペストリーは、ナポリのカポデイモンテ美術館にあります。部屋や家具の大きさと比べても、このタペストリーの大きさがわかります。

タペストリーのフレームには繊細な表現で、草花や果実、人などが織り込まれていて、中心になる絵を引き立てています。またタペストリーの下段には、製作所と制作年が織り込まれています。

当時の政治、人物、服装、文化、景色など、いろいろなことが読み取れませんか。数人の織手が横に並んで、原画を確認しながら織っていく姿が私には目に映ります。数え切れない数の色糸を駆使しての表現技術に驚かされます。

王宮の中のタペストリー

王宮の中のタペストリー

王宮の中のタペストリー

王宮の中のタペストリー

また、海辺に近い旧王宮にはサン・デーナロの宝物美術館があり、ここにはたくさんのタペストリーが展示されています。2時間も飽きずに2度周り、堪能しました。屋上からの街の景色も、遠くまで見通せて良いところでした。

何のために大きなタペストリーが当時必要だったか、おわかりでしょうか。石造りの建造物では夏は涼しいのですが、冬場は大変冷たくて、寒いのです。壁の装飾目的の他に、保温効果もありました。

モンゴルのゲルの内部にもたくさんの織物が配置されているのと似ていませんか。現代私たちは床や畳の上にカーペットを敷いたりしていますね。感触を楽しむため、装飾効果を狙ったものなど、多様な目的を持っています。皆さんのお家の中を見渡してみてください。必ず1、2枚はありますね。

初めて織ったゴブラン織り

初めて織ったゴブラン織り

私がベルギーの学校で、ゴブラン織りを習って初めて織った作品です。

これまでに日本の綴れ織りを経験していましたから、思いのほか呑み込みが早かったのか、
毎日5時間くらい織り続けて7日で出来上がりました。昼休みには持ち寄り弁当を食べるのですが、(私は最寄り駅の商店でサンドウィッチなど買っていた)ワインを気軽に飲むので(昼間から?と思いつつ)驚きました。

この学校では歴史あるタペストリーの修復所も設置されていて、日々作業は続けられていました。これもまた、大変な作業です。似た色糸を染めて、使わなくてはなりません。最終日には校長先生から、修了証書と機械で織られたゴブラン織りのクッション2個を頂き、今も大切に使っています。

次回は日常生活に用いられている国産のタペストリーとカーペットをご紹介したいと思います。

 

■もっと知りたい■

いしだて まさこ

京都府舞鶴市生まれ。’75年、趣味で染織を始める。’02年よりカルチャーセンターの染織講師になり個展は10回開催。趣味はクラッシック音楽を聴く、読書、墨彩画、パステル画、トレッキング、グランドゴルフ。計画~乗り物・宿の手配まで自分で手がける個人旅行も得意。

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