011:ゆみさん(57歳)・たかしさん(62歳)

定年後は夫婦で「暮らすように旅したい」YouTuber夫婦の夢の叶え方

定年後は夫婦で「暮らすように旅したい」YouTuber夫婦の夢の叶え方

更新日:2025年05月24日

公開日:2025年03月15日

定年後は夫婦で「暮らすように旅したい」YouTuber夫婦の夢の叶え方

50代から新しい一歩を踏み出して、第二の人生を歩み始めた人たちを追う「わたしリスタート」。夫の定年後の夫婦の過ごし方を50代からコツコツ計画し、今、暮らすような旅を楽しんでいるゆみさん夫妻。夢を実現させて、夫婦一緒に歩んでいく秘訣とは?

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あなたの“リスタートのヒント”が、きっと見つかるはず。
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ゆみさん夫妻のリスタート・ストーリー

定年後は世界中を周って、“暮らすような旅”をしたい――。

そんな多くの人が憧れる夢を実現させた、ゆみさん夫妻。夢を抱き始めたのは、リスタートする10年も前のこと。ゆみさんが45歳、たかしさんが50歳のときだった。

旅の資金づくりに励んだり、断捨離をして住まいをダウンサイジングしたりと、“旅”を基軸としたライフスタイルへとシフト。10年かけて少しずつ準備を重ね、たかしさんが60歳で定年を迎えた2022年から、世界を長期で旅する生活をスタートさせた。

同時期に始めた、YouTubeチャンネル「ごろごろ旅 今からが旅の適齢期」では、「若くない世代が暮らすように旅する」をテーマに、現地の観光情報をはじめ、街の景色や地元食材で自炊する様子を紹介。日常に重点を置いた旅のスタイルが人気となり、チャンネル登録者数は5万人超に。

50代から夢の旅暮らしを叶えたお二人に、実現までの試行錯誤の道のりや旅の醍醐味について伺った。

定年後は夫婦共通の趣味「旅」をもっと楽しみたい

―― 世界中を“暮らすように旅する”、今の生活を始めたきっかけは?

ゆみさん:定年後の夫婦の暮らし方を考え始めたこと。

2人とも旅が大好きで、夫婦で毎年海外旅行に出掛けていたのですが、夫が会社勤めのため長期休暇がなかなか取れず……。いつも短い期間で観光地をめぐる、急ぎ足の旅ばかりでした。

本当はゆっくりとその土地の文化や歴史を味わったり、街をぶらぶらと歩いたりしたいのに、毎回後ろ髪引かれる思いで帰国の途に。旅をするたびに、そうしたモヤモヤとした心残りが積もっていきました。 

そんなとき、定年後に世界中を旅している方たちのブログを熱心に見るようになって。私たちも夫が定年したら、「長期で“暮らすように”旅をしながら世界中を周ろう!」と将来プランを計画。定年を迎える10年ほど前から、少しずつ準備をしてきました。

――今がチャレンジのタイミングと思った理由は?

ゆみさん:夫が60歳で定年したことと、旅の資金が準備できたこと。

2022年、いよいよ旅する新生活をスタート。せっかくなので旅の記録をブログで発信しようと考えていましたが、映像のほうが現地の様子をよりリアルに伝えられると思い、YouTubeチャンネルを開設しました。

たかしさん:とはいえ、コロナ禍やウクライナ侵攻もあって世の中が不安定だったこともあり、65歳まで1年更新で働ける「再雇用制度」を利用して、勤務を継続することにしたんですね。

1年で3か月休みがもらえるというので職場で申請したら、実際にはちょっと人繰りができず3ヶ月は無理ということで(笑)、結局1か月半の休みをもらい、ヨーロッパ南東部にある「バルカン半島」の国々を45日間でめぐる旅に出ました。

その後、仕事は2年更新して、2024年から完全に無職に。今の時代だと早期リタイア、最初はどうなるか少し不安でしたが、今の暮らしが楽しくて、後悔はしていないです。

――最初はどんな旅からスタートしましたか?

ゆみさん:実は、当初は自宅を手放して、世界中を転々としながら旅暮らしをしようと考えていたんです。

でも、夫は定年したといえ、まだ働いていましたし、これから先、本当に“家なし長期旅”が実現できるか自信がなかったため、まずは1か月半の休みを利用して「お試し旅」をしようと思いつきました。

その旅で試したかったのは、滞在中、「健康を保てるか?」「夫婦で協力し合えるか?」「YouTubeの撮影がちゃんとできるか?」ということ。

旅先も環境が整っている先進国だとお試しにならないと思い、あえて少し不便な場所を選んでみたんです。実際、現地で夫が高熱を出して体調を崩したり、旅の準備もYouTubeの撮影も結局、私一人のワンオペ状態になったりと結果はさんざんなものに(笑)

旅自体は楽しめたものの、家を引き払って長期の旅に出るのは今の私たちには現実的じゃないと、冷静に判断できました。

お金、家、高齢親のこと…夢実現に10年かけて

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(画像提供「ごろごろ旅」

――暮らすような旅の一番の醍醐味とは?

ゆみさん:地元の食材を思う存分楽しめること。

旅行先でスーパーや市場に行くと、その土地でしか食べられない食材がたくさんありますよね。長期滞在のときはいつも民泊に宿泊するので、現地のフレッシュな食材を調達して、キッチンで調理します。食卓でリラックスしながら、その土地の食文化を味わえるのが、最大の楽しみかもしれません。

たかしさん:長期滞在だとゆったり過ごせるのも魅力ですよね。午前中だけ観光に行って、午後は昼寝をするとか、そういう贅沢な時間の使い方もできます。あと民泊の場合、洗濯が自由にできるのもうれしい。私、妻から「洗濯担当大臣」と呼ばれるぐらい、洗濯を干すのが大好きなので、それだけは一生懸命やっています(笑)
 
――暮らすように旅するためのコツはありますか?

ゆみさん:荷物を最小限にしすぎないことです。

私は、普段の外出時にスマホ1つで移動するぐらい、荷物を軽くしたいタイプなんですけど、さすがに海外旅行時はいざというときの持ち物を揃えておくべきだと経験から学びました。この年齢になると体調不良が心配なので、薬もさまざまな用途に合わせて多めに準備。防寒着も忘れずに持っていきます。

ただ、 調味料はあれこれ持っていきません。

普段の食事から塩、醤油などシンプルな味付け、お酢の代わりにレモンなど、旅先でも手に入るもので調理しているので、海外でも「調味料がないから料理ができない!」なんてことにはなりません。旅する生活のおかげで、日々の食事もだいぶシンプルになりました。

お金、家、高齢親のこと…夢実現に10年かけて
50代60代の旅のリアル情報の動画は「役に立つ」と人気が高い(画像提供「ごろごろ旅」

――日本を長期不在するための準備は?

ゆみさん:もともと計画的な性格なので、老後資金の準備は若い頃から少しずつしていました。ただ、具体的な目標額や分配を考えたのは、定年後の夢が見えてから。

自宅は、手放して旅しながら暮らす予定だったので、断捨離をして荷物を最小限に。賃貸で借り手がつきやすいよう、郊外の住宅街から利便性の高い都市部のマンションに引っ越しました。

さらに、遠距離で親の介護をしていましたが、介護度が高くなったため、首都圏の施設に入居してもらい、ひと安心。実家の整理や売却も行いました。

なかなかハードでしたが、こつこつ10年かけて環境を整えました。

結果、親の介護もあって、当面、家は所有したまま長めの旅を楽しんでいくことにしましたが、ある程度の見通しはついているので安心して旅に出ることができています。

YouTubeに挑戦!夫婦共同作業を円満にするコツ

――YouTubeの撮影や編集で大変な面はありますか?

ゆみさん:めちゃめちゃ大変です。

お店に撮影の許可を取ったり、レストランでは他のお客様に迷惑をかけないよう気を配りながら食レポをしたりと、結構神経を使います。だから、日本に帰ってきて、YouTubeとは関係なくレストランに行くと、『あ、撮影しなくていいんだ』とホッとしますよね(笑)

動画編集も、DaVinci Resolve(ダビンチリゾルブ)というハリウッド映画制作でも使うような難しいソフトを選んでしまったので、最初はかなり苦戦しました。今でも1日8時間ほど編集作業をし続けて、5~6日間でやっと動画1本が完成するような状態。作業期間中は睡眠不足が続きます。

あまりに大変なので、途中で何度もYouTubeをやめようと思ったことも。そのたびに夫から「絶対やめないほうがいい!」と叱咤激励されて、再び奮起して立ち上がるという……。「あなた、応援するだけで何もしないじゃん!」って、文句言ってましたけどね(笑)

たかしさん:妻の血のにじむような努力(!?)を見ていたら、自分にはとてもできないって思っていたんですけど、少し前から私も編集やナレーションに挑戦するようになりました。少しでも妻の負担を軽くしたいですから。

チャレンジしてみたら、案外自分にもできるんだって、自信が芽生えつつあります。

――これまでの経験で役立っていることは?

ゆみさん:スマホやPCなどのIT機器の操作には慣れていたので、その経験はかなり役立っていますね。

苦手意識を持たずに取り組むことができるって大事。YouTubeにもチャレンジできました。

海外に行くときは、Googleマップや翻訳機能、タクシーの配車アプリを駆使することでスムーズに街歩きができています。

――YouTubeを始めて、収入面ではどんな変化が? 

ゆみさん:チャンネル登録者数が5万人となり、多くの方に見ていただけることをとてもありがたく思っています。

いただいた収益は、皆さんにお見せしたいシーンや、普段ならチャレンジしないような旅の経験に活用させていただいています。収益額は月ごとに大きく変動するため、基本的には自分たちの旅資金で計画を立てています。

――定年後の夫婦関係をうまく続ける秘訣は?

ゆみさん:いやぁ、こちらがうまくいくコツを聞きたいぐらい(笑)。夫はいわゆる“昭和な人”で、家のことはほとんど妻任せですから。

たかしさん:面目ないです。自分はもう定年したのだから、家のことも旅の準備もやろうとは思うんですけど、何から手を付けていいかわからず、結局妻に負担をかけてばかりです。

ゆみさん:まぁ、お互いさまの部分もありますし、今さら相手を変えようとするのは無理があるのでね。

一つ、我が家で工夫しているのは、オンライン上で表計算ができる「Googleスプレッドシート」を活用することです。例えば、夫にお願いしたいことと期日を表にまとめて、リスト化したものを共有。共同編集ができるので、夫がタスクを終えたら、その部分をグレーに色付けしてもらっています。

 スプレッドシートは「Googleカレンダー」とも紐づいているので、旅の予定表も見られてとっても便利なんです。渡航先別に「マイカレンダー」というものを作って、現地時間に設定。そこにフライトのチケット情報やホテルの予約メール、行きたいレストランの候補など、すべての旅情報を集約しているので、あちこち探す手間も省けます。

夫にとっては会社の仕事の延長線上っぽいのか、使いやすそう。夫婦間での情報共有ができたり、やることが明確になったりするだけでも、ストレスはだいぶ減る気がします。

YouTubeに挑戦!夫婦共同作業を円満にするコツ

今からが、旅も夫婦の在り方も、きっと適齢期

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(画像提供「ごろごろ旅」

――旅をし続けるために健康面で気を付けていることは?

ゆみさん:普段、旅暮らしで家を留守にすることが多いので、定期的にジムなどに通えないのが難点。なので、旅先でも自分の体重で負荷をかけてストレッチを行う、「自重トレーニング」をしています。運動器具もお金も必要なく、すき間時間にできるのでお手軽です。

自宅で編集作業しているときは、14時~17時まで1時間ごとにスマホでタイマーをかけて、ラジオ体操を流す習慣も。ずっと座りっぱなしで作業していると、どうしても体が硬くなるので、意識して体を動かすようにしています。

――失敗やミスから学んだことはありますか? 

ゆみさん:失敗というほどではありませんが、何のために旅を始めたのかを見失わないようにしています。

最初の頃は、とにかく「シニア旅YouTuberとしてがんばりたい」と漠然と考えていましたが、最近は、YouTubeの視聴回数にこだわるのはほどほどにして、自分たちの行きたい場所に行っておきたいという気持ちを大切にしたいと思うように。

自分たちが本当に行きたい場所に行き、楽しみたいものを楽しむことが大事。人生後半に差しかかっているからこそ、根っこにある望みを叶えながら、ぼちぼち続けていけたらと思っています。

たかしさん:海外ではお金より健康や安全を優先すること。

真夏にイタリア・ナポリの民泊に宿泊したときのこと。部屋のエアコンが壊れていたのですが、宿のホストから「大型扇風機を用意する」ことと「料金を安くする」との直接交渉に応じて、予約時に使用したサイトを通さずに契約変更して、宿泊することにしたんです。

でも、想像以上の猛暑で二人とも熱中症気味に……。もともと3泊する予定でしたが、意識が朦朧として危ない状況だったので、すぐに部屋を引き払い、別の民泊に移りました。

最終的に返金はしてもらいましたが、海外、それに無理がきかないお年頃ですから、「料金が安くなるから、まあいいか」と妥協してはいけないことがあると痛感しましたね。

――チャレンジをして得た最大の教訓は?

ゆみさん:脳は使えば使うほど開花する!

YouTubeの動画編集は初めてでしたが、ちょっと無理してでも挑戦するうちに、だいぶ編集技術が上がりました。それに、私は人前でのトークがあまり得意ではないんですけど、今は「お話するのが楽しい!」と思えるように。

若い頃よりも今のほうが、頭が働いているんじゃないかしら。脳って使えば使うほど伸びる。年齢は関係ないんだと思います。

今からが、旅も夫婦の在り方も、きっと適齢期
(画像提供「ごろごろ旅」

――これがあるからがんばれる、勇気が湧いてくるものは?

ゆみさん:YouTubeを見てくださる方々からのコメントです。

「この方、私たち夫婦のことをよくわかってくれているなぁ」ってこちらがビックリするほど、よく見てくださっていて。その洞察力に感嘆することもしばしばです。コメント欄を通じて、みなさんと心の交流ができるのが元気の源かもしれません。

たかしさん:「奥さんをもっと大事にしてあげてくださいね」と、私への要望コメントもたまにありますが(笑)。驚くほどアンチコメントが少なくて、みなさんに温かく見守ってもらえていることをひしひしと感じています。

――今後チャレンジしたいことや目標はありますか? 

たかしさん:妻からも勧められているんですけど、自分のYouTubeチャンネルを作るのも楽しそうかなと。世界各国の文化や歴史をコンパクトに紹介する番組とか、アイデアを温め中です。英語が好きなので、英語でナレーションするのも面白そうです。

ゆみさん:私は、旅の活動にしても家のことにしても、夫婦の役割分担がうまく回ることが目標です(笑)

6対4でも、7対3でも、私の担当部分が多少、多くても構わないので、お互いのできることや得意を生かしてうまく分担できたら、もっと心地いい旅ライフが実現できる気がします。

50代のリスタートに必要な3つの備え

「今の旅する生活を実現させるために、夫の定年を見据えて10年前から着々と準備。夢を叶えるにはそれなりの準備期間とブレない心が必要かもしれません」(ゆみさん)
 
1.自分にとってのベストを調べる力

やりたいことや欲しいものがあったら、まず目的を定めてから調べると範囲が広がり、自分が望むベストにめぐり合いやすくなります。旅行でも、いきなり行きたい“国”を絞り込むより、「どんな体験をしたいのか?」と目的を決めて叶えられる場所を複数リストアップすると、選択肢が広がります。

2.必要なものにお金を配分する力

自分の夢や望む暮らしを設定したら、そこに向けてしっかりと資金を準備することが大切。でも、誰でも大金を貯められるわけではないので、お金の多寡(多い少ない)にかかわらず、適切に配分することです。必要のないことに使わない勇気を持つことが大切だと思います。

3.夢実現に向けて環境を整える力

家の住み替え、高齢親の介護、実家の整理・売却など避けては通れない現実問題に向き合うこと。受け身にならず、心づもりをしてコツコツ環境を整えていくことが大事。私もこの10年はなかなかハードでしたが、夢実現のために環境を整えてきたからこそ、安心して羽ばたけました。

 

取材・文=伯耆原良子 写真=菅井淳子 企画・構成=長倉志乃(HALMEK up編集部)


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HALMEK up編集部
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