離婚や慰謝料の対象になるの?モラハラが原因?
弁護士&夫婦関係専門家に聞く!50代のセカンドパートナー事情
弁護士&夫婦関係専門家に聞く!50代のセカンドパートナー事情
更新日:2025年12月07日
公開日:2025年03月30日
「セカンドパートナー」は夫婦を救う?壊す?

人生の折り返し地点に差しかかる50代は、夫婦や男女関係について改めて考え始める時期でもあります。最近よく耳にする「セカンドパートナー」も、そのひとつ。
夫婦問題に詳しい山下環弁護士と、夫婦問題研究家の岡野あつこさん。2人の専門家の知見をもとに、「セカンドパートナー」という関係が夫婦にどんな影響を与えるのか、そして、これからの夫婦関係をどう見つめ直せばいいのかを考えていきます。
セカンドパートナーとは、主に配偶者や正式な恋人以外の「2番目のパートナー」を指し、本来は「肉体関係を伴わないプラトニックな関係」として定義されることが多い言葉です。
「不倫とは違い、精神的なつながりを大切にする関係」とも言われますが、一方で、夫婦関係にどのような影響やリスクがあるのか、冷静な視点も必要になってきます。
セカンドパートナーは法律的にアウト?セーフ?

「肉体関係がないから大丈夫」と考えがちなセカンドパートナーですが、法律の世界ではどう見られるのでしょうか。
たとえ肉体関係がなかったとしても、特定の異性と親密に過ごすことで、配偶者に強い疎外感やストレスを与え、夫婦関係に亀裂を生む可能性があります。その結果、離婚問題に発展してしまうケースもあります。
山下環弁護士は、次のように説明します。
「夫婦の婚姻生活の平和を破壊したと言える場合などは、慰謝料が発生する可能性があります。肉体関係がない場合、慰謝料が認められないケースも多いのですが、実際には認めた裁判例もあります」
つまり、精神的なつながりを重視するセカンドパートナーであっても、
- 異性の友人関係として社会的な常識から大きく外れている
- 夫婦生活の平穏を明らかに乱している
と判断されれば、慰謝料の対象になる可能性があるということです。
慰謝料の金額は、
- 夫婦関係がどの程度破綻しているか
- 問題になっている期間の長さ
- 当事者が受けた精神的苦痛の大きさ
などを総合的に見て決まります。
肉体関係を伴わない場合は、一般的な不倫より金額が低くなることが多いものの、数十万円規模の慰謝料を認めた裁判例もあります。
実際に、肉体関係のない異性の友人関係であっても、結果的に夫婦関係の破綻を招いたとして、44万円の慰謝料支払いを命じられたケースもあるそうです。
セックスレス問題の背景は、思った以上に深い

次に、今の夫婦が直面しやすい「セックスレス問題」についても触れておきましょう。
一般的には、1年以上性行為がない状態が「セックスレス」とみなされることが多いと言われています。
男性は年齢とともに、体力や機能面から性行為が難しくなることがあります。一方で、女性は閉経後も性的な欲求やスキンシップへの願望が続くことも珍しくありません。この「性のあり方のズレ」が摩擦を生み、パートナーシップに影響することがあるのです(もちろん、男女が逆のケースもあります)。
夫婦問題研究家の岡野あつこさんは、セックスレスに悩むときには、まず原因を見極めることが何より大切だと話します。
「体の問題なのか、心の問題なのか。忙しさやストレス、過去のすれ違いなど、背景は一組一組異なります。必要に応じて、カウンセリングや医療機関の助けを借りることも選択肢のひとつです」
夫婦で対話を重ねることで、関係が改善していくケースも少なくないそうです。セカンドパートナーを持つ前に、「まずは2人の関係をどう整えるか」を考えることが、遠回りのようでいて近道になる場合もあるでしょう。
増える夫婦の悩み…見えにくい「モラハラ」の怖さ

近年、山下弁護士や岡野さんのもとに多く寄せられるようになったのが、「モラルハラスメント(モラハラ)」に関する相談だといいます。コロナ禍による在宅時間の増加なども影響し、悩む女性が急増しているそうです。
モラハラは、目に見えにくい心理的支配や精神的な虐待のこと。具体的には、
- 暴言や人格を否定するような言葉
- 無視や冷たい態度などの継続的な仕打ち
- お金を自由に使わせないなどの経済的支配
などが典型例です。これらの行為は、被害者の自尊心をじわじわと傷つけ、深い精神的ダメージを与えます。
岡野あつこさんは、モラハラへの対処についてこう話します。
「いちばん大事なのは、まず自分の心と体を守ること。そのうえで、日記や録音などの証拠を少しずつ残し、カウンセラーや弁護士といった専門家に早めに相談してほしいと思います」
モラハラで心が傷つき、自信をなくした人の中には、「自分を認めてくれる誰か」を求めてセカンドパートナーに惹かれるケースもあります。心のつながりや安心感を求めるのは、ごく自然な気持ちと言えるでしょう。
ただし、その選択がかえって新たなトラブルや法的リスクにつながることもあるため、感情だけで動かず、冷静な視点を持つことが大切です。
夫婦関係を見直す第一歩は、日々のコミュニケーション

では、夫婦関係を良好に保つために、私たちにできることは何でしょうか。
山下弁護士は、「日常的な感謝と気遣い」が鍵になると話します。
「『ありがとう』のひと言には、夫婦関係を穏やかに保つ大きな力があります。長く一緒にいるほど、つい省略してしまいがちですが、意識的に伝えることで関係がやわらかくなります」
一時的に距離を置く「卒婚」というスタイルを選ぶ夫婦も増えています。文句を言い合うのではなく、ほどよい距離を保ちながら、それぞれの時間や自由を尊重することで、かえって関係が安定するケースもあるそうです。
岡野あつこさんは、セカンドパートナーについても「一概に悪いとは言えない」としたうえで、次のように続けます。
「大切なのは、夫婦関係を壊さない“距離感”をどう保つかです。セカンドパートナーを、夫婦関係の代わりではなく、あくまで心理的な支えとして位置付けられるかどうか。うまく機能すると、心の余裕が生まれ、結果的に夫婦関係が落ち着くケースもあります」
とはいえ、法律的なリスクや、相手や家族の受け止め方を軽く見ることはできません。「誰かに頼りたくなったときこそ、自分自身と夫婦関係をどうしたいのか」を立ち止まって見つめることが、納得のいく選択につながりそうです。
山下環弁護士と岡野あつこさん、2人の専門家のアドバイスには、「自分の心を大切にしながら、相手との関係もできる限り丁寧に扱う」という共通点があります。50代以降も自分らしいパートナーシップを育てていくためのヒントとして、心に留めておきたいですね。
【監修1】山下環弁護士

山下環法律事務所 代表弁護士。2001年に弁護士登録以来、多くの家事事件を担当し、家庭問題に関して豊富な実績を持つ。
東京地方裁判所非常勤裁判官(民事調停官)や法務省ADR認定機関・離婚サポート調停人、(社)離婚相談連盟理事などを務める。離婚・相続・成年後見等に詳しい弁護士として、メディア出演や書籍執筆などでも活躍。
【監修2】岡野あつこ

夫婦問題研究家、公認心理師。NPO法人日本家族問題相談連盟理事長。これまでに延べ4万件以上の相談を受け、修復を含め数多くの夫婦問題を解決に導いてきた。現在は後進の育成にも力を注ぎ、「離婚カウンセラー養成講座」を運営。
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取材・文=鳥居 史(HALMEK up編集部)




