法医解剖医が警鐘!今、女性の死が男性化している!?
2020.02.032020年02月17日
見分け方、選び方を解説します
法医解剖医が教える、新鮮な肉と魚と卵の見分け方
これまで、3000人以上の死因がわからない死体を解剖してきた法医解剖医・西尾元(にしお・はじめ)さん。法医学の知識は、時に生活実用にも役立つそう。新鮮な肉と魚、卵の見分け方を聞きました。
新鮮な魚は、ピンと反っている
「新鮮さと、主観的な味覚『おいしさ』はイコールではありませんが、素材が新鮮であることに越したことはありませんからね。ここでは、素材の新鮮さについてお話ししましょう。法医学の知識は日常生活でも生かせることがあるんです。特に、生鮮食品を選ぶときに役立ちますね」と、意外な展開を語る西尾さん。さっそく、魚の選び方を教えてもらいました。
「日頃、私たちが食べているものは、魚や肉の筋肉です。死亡すると、どんな生き物でも筋肉は”死後硬直”が起き、通常、死後半日程度で死後硬直の反応が強くなります(冷やしていると、化学反応の進みが遅くなるので死後硬直もゆっくりになります)。その後、1日ほどたってから次第に軟らかくなって、死後3~4日ほどで元に戻ります。だから、死後硬直して、背がピンとなった魚を選ぶと新鮮といえるでしょう」
切り身の場合は、弾力を確認してみましょう。硬いものは死後硬直の状態だから新鮮といえます。
「死後硬直して硬くなった筋肉は、筋肉の細胞の中に備わっているタンパク質を分解する酵素によって、どんどん軟らかくなりおいしくなる、という面もあるため、食べ時は見極める必要はありますね」(西尾さん)
目玉が白い魚は死後12時間以上たっている
筋肉の硬さだけでなく、魚の目玉の濁り具合を見ることでも新鮮さを見分けられるそう。
「目の玉の透明度をチェックしましょう。角膜は12時間たつと白く濁っていきます。人間の場合も角膜がどんどん濁っていき、24時間もたつと、*マークのように、シワが出ています」
新鮮な鶏肉を見分けるなら、皮を見る
西尾さんに、購入してきた鶏肉のぶつ切りと牛肉の切り落としのパックを見てもらいました。
「鶏肉を見分ける場合、注目すべきは”皮”部分。鶏肉は新鮮だと、皮にある鳥肌がブツブツとしています。これは、立毛筋という筋肉で、死後硬直を起こしているとここがブツブツと目立つんです」
皮を見れば新鮮さがわかるというのは鶏肉だけで、皮がついていない牛肉や豚肉の場合は”色”を見ればいいそう。
「皮がなく肉片になってしまっている豚肉と牛肉の場合は、変色していないか確認します。最初は、赤い色をした状態だった肉は、時間がたつと茶色になります。茶色に変色した場合でも腐敗しているわけではないので食べられます。しかし、人間も死後時間がたつほどアミノ酸の分解が進み緑色になるように、肉も緑色になったら危険。食べられません」
ちなみに、肉を冷凍する場合は、なるべく凍るまでの時間をかけない方がいいそう。「水は凍るときに膨張します。細胞にある水分がゆっくり凍ると、細胞が破裂してしまい味が流れ出てしまうことになります。冷凍と解凍を繰り返すとまずくなるのも、これが理由です」
古い卵は茹で卵にすると皮がむきやすい
他にも、卵の見分け方も教えてもらいました。卵を割ったときに、黄身も白身もこんもりと盛り上がっていれば、新鮮な証拠。古くなると黄身を包む白身部分の弾力が弱まり、水っぽくなるそう。
「あと、タンパク質は時間がたつほど収縮しやすいため、古い卵ほど茹で卵にしたときに皮がむきやすいよ。茹で卵は、家事に慣れない私にも作れる料理です」
あなたも法医学的な目線で、食材選びをしてみてはいかが?
西尾元(にしお・はじめ)さん
1962(昭和37)年、大阪府生まれ。兵庫医科大学法医学講座主任教授。法医解剖医。香川医科大学(現、香川大学医学部)卒業後、同大学院、大阪医科大学法医学教室を経て、2009年より現職。兵庫県内の阪神間の6市1町の法医解剖を担当している。これまでに行った解剖約3000体。年間の解剖数約200体。2017年、『死体格差 解剖台の上の「声なき声」より』(双葉社)を出版。近著に『女性の死に方~解剖台から見えてくる「あなたの未来」~』(双葉社刊)。
取材・文=竹上久恵(ハルメクWEB編集部)