「人に親切をするとき、見返りを求めていませんか」

2024年03月02日

岸田ひろ実さん「いつか美しくなる、今」

人に親切をするとき、見返りを求めていませんか?

夫の突然死、知的障害のある長男の出産、下半身麻痺で車いすユーザーに……。それでも心折れることなく、しなやかに生きてきた岸田ひろ実さんの強さの秘訣と、軽やかに生きるヒントを伝えます。今回は、親切をしたときに求めがちな“見返り”について。

親切とお節介の境目って?

人に親切であること、を信条にしています。

困っている人を見て見ぬふりする「無関心」は最も避けたいことですが、一方で、ついついお節介になり過ぎてしまう「過剰」も親切とはいえません。

私が考える親切のポイントは2つあります。それは「困っている人がいたら助けるというシンプルな行動」と「見返りを求めないこと」です。特に、見返りというのは人がついつい無意識に期待してしまいがちなのですが、そうするとどうしても恩着せがましくなることがあります。また見返りがないことで、自分が損をした気分になる人もいるかもしれません。

病気になった友人が気付かせてくれたこと

病気になった友人が気付かせてくれたこと

私には、数年前に病気で亡くなってしまった友人がいました。その友人は、私が下半身麻痺となり歩けなくなったときに、いつも寄り添い、励ましの言葉をかけ続けてくれました。私が入院しているときは、仕事で忙しい中、何度もお見舞いに来てくれました。

楽しくなる計画をたくさん立てて、私をいろいろな場所へ連れ出してくれました。気持ちが沈んだときも、メールを送れば、すぐに励ましの返事をくれました。最初は、私のために気を使わせてしまった、と申し訳ない気持ちがありました。

私に友人と同じことができるか、友人が困ったときに同じくらい元気づけることができるか、と心配でした。しかし、友人の笑顔と優しさに勇気をもらうたびに、申し訳ない気持ちは薄れていき、感謝の気持ちの方が大きくなりました。友人が私に対し、見返りを求めない素直な気持ちで接してくれていることに気付いたからです。

友人に何かを返さなければと焦っていた私こそが、親切には見返りがつきものだ、と思いこんでいたのかもしれません。親切というのは、押し付けるのではなく、目の前の人の気持ちに寄り添うことが大切なのです。

そして、親切にしてもらったら、自分のうれしい、助かった、という気持ちには素直に従いましょう。今すぐ何かを返さなければならないと焦るのではなく、まずは、感謝をするだけでよいのだと思います。

人に親切にするときの心構え

人に親切にするときの心構え

最後に、人に親切にするときの心構えについて考えてみましょう。

親切にしようと思ったときに 陥りやすいのが、自分のことを犠牲にしてしまうことです。人のためを思って行動したことが、自分の納得いかないことであったり、自分が不幸せになってしまうことであれば、それは意味がありません。自分がそうしてあげたいからした、結果的に自分の心も幸せになった、という親切こそが、大切です。

誰かに、親切にしてあげたいと思ったら、まずは自分がうれしいと思う行動と感謝の気持ちを、持ち続けてみてください。親切の意味をそう捉えてみると、人に親切にすることのハードルが下がるのではないでしょうか。

しかし、「親切」の現状はというと、困っている人を見かけたとき、見て見ぬふりをしてしまう「無関心」や、ついついやりすぎてしまう「過剰」という二極化している傾向にあります。これでは親切とはいえません。まずは、自分とは違う誰かの目線に立って考えてみること、そしてそこから行動に移すことが大切です。

とはいえ、国籍、年齢、障害の有無など、自分とは状況が違う人が何に困っているのかを察するのは、難しいと感じますよね。人に親切をするには、まず、その人が何に困っているのかを知る必要があります。

「何かお手伝いできることはありますか?」

困っている人を見かけたらこの言葉で、まずは声を掛けてください。


 

 

岸田ひろ実(きしだ・ひろみ)さんのプロフィール

1968(昭和43)年大阪市生まれ。日本ユニバーサルマナー協会理事。株式会社ミライロで講師を務める。27歳、知的障害のある長男の出産、37歳夫の突然死、40歳、病気の後遺症で車いすの生活に。自身の経験から、人生の困難や障害との向き合い方を伝える。

撮影=山下コウ太

■もっと知りたい■


※岸田ひろ実さんの半生を知りたい方は、こちら「第1回「死んでもいいよ」から新しい人生が始まった」をお読みください。
 

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岸田 ひろ実
岸田 ひろ実

きしだ・ひろみ 1968(昭和43)年大阪市生まれ。日本ユニバーサルマナー協会理事。株式会社ミライロで講師を務める。27歳、知的障害のある長男の出産、37歳夫の突然死、40歳、病気の後遺症で車いすの生活に。自身の経験から、人生の困難や障害との向き合い方を伝える。

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