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- 直島、豊島、犬島|アートな島巡りの旅
いま世界中から注目を集めているアートな島が、直島(なおしま)、豊島(てしま)、犬島(いぬじま)です。国内外の現代アーティストたちの作品が、美術館に、屋外に、そして古民家にと、いたるところに展示され、島が丸ごとアートとなっています。
のどかな島と現代アートの出会い
直島、豊島、犬島の3島では、教育や出版の事業を中心に展開する企業グループ、ベネッセホールディングスと福武財団により、アートと建築を介した地域での活動が繰り広げられています。
もともとは瀬戸内海らしいのんびりとした暮らしが営まれてきた島々です。そこにむしろ真逆とも言える刺激的な現代アートが持ち込まれたわけですが、その風土、歴史にも溶け込む試みが積極的になされたことで、独特の世界感が広がるようになりました。2010年からは3年に1度、島々を舞台に「瀬戸内国際芸術祭」が開催されるようになり、春と夏の両会期を合わせ約100万人が国内外から訪れます。
直島と豊島は香川県に属していて、本州側からも四国側からも、また同じ香川県の小豆島などからも船が出ていますが、岡山の宇野港をベースにすると便数が多いので便利でしょう。宇野港から直島の宮浦港へは20分ほどです。もちろん、宇野港から島々を経由して小豆島や高松へ抜けるルート、あるいはその逆も可能です。岡山県に属する犬島だけは、岡山市郊外の宝伝港が起点ですが、アクセスもよく気軽に島を巡る旅が楽しめます。
直島はアート以外の楽しみも充実
このプロジェクトは直島で始まりました。まず1989年に現代日本を代表する建築家、安藤忠雄が監修したキャンプ場がオープン。1992年には同氏の設計で、現在の直島の中心施設である美術館ホテル「ベネッセハウス」が完成しました。自然と建築とアートが共存することをコンセプトとしていて、ホテルであってミュージアムでもあり、館内のあらゆる空間が作品となっています。客室にも現代アートが展示されています。あまりの人気で予約は至難の業ですが、屋外の作品のいくつかは宿泊客以外も見ることができますし、小さなブティックホテルから民宿まで島内に他にも宿泊施設はあります。
このほか多くのアートスポットが島中にありますが、代表的なものをあげてみましょう。歩くには少々広いので、路線バスや施設の専用バス、レンタサイクルなどを利用します。
まずは「地中美術館」。建築が風景をこわさないようにと、その名のとおり建物のほとんどが地中にあります。しかし通路や中庭には自然光がふんだんに差し込むようになっており、これは設計した安藤忠雄が得意とする手法です。館内には睡蓮の絵で有名なクロード・モネなどの作品が展示されています。2018年8月からはオンラインでの予約制になりましたので注意しましょう。
そして「水玉模様のカボチャ」のオブジェ。赤と黄の2つがあり、世界的なブームが続いている草間彌生による作品です。赤かぼちゃは宮浦港のすぐそばにあって、中に入ることもできるようになっています。「南瓜」は島の南部の桟橋にあり、瀬戸内海を借景にその色彩は強烈なインパクトを放ちます。島の路線バスにもラッピングされ、まさに直島のシンボル。島内の各ショップではハンカチや文房具などの草間彌生グッズも手に入っちゃいます。
島の本村という地区では、古い家屋を改修して展開されるアートプロジェクトが行われています。かつて歯科医院だった建物を夢の記憶がテーマの空間にした「はいしゃ」、溶けない氷のような光学ガラスで作られた階段がある島の氏神様「護王神社」、安藤忠雄による建築の内部に広がる暗闇に入ると、やがて目が慣れて作品が見えてくる「南寺」などの7軒での作品のほか、町並みの中にも壁や玄関先などにさりげなくたくさんのアートが展示されています。民家を利用したおしゃれなカフェやレストランもあり、ランチと一緒に直島の地ビールを試してみるのもおすすめ。たっぷりとアート散歩を楽しめるエリアです。
休憩でぜひ最後に訪れたいのが直島銭湯「I❤(ハートマーク)湯」。なんと島の人も利用する実際に入浴できる銭湯なのですが、これもまたアート作品。ポップな外観のみならず、内部中央には大きな象のオブジェが置かれ、浴槽や壁絵にいたるまで、アーティスト・大竹伸朗が手がけたユニークな世界が広がっています。番台で買えるカラフルなオリジナルタオルは、あまりにかわいくて、ついいくつも欲しくなってしまいます。
個性的なアートが点在する豊島と小さくても迫力の犬島
豊島は直島と小豆島の間に位置し、直島からは高速船で30分、小豆島からはフェリーで40分ほどです。島内移動には自転車がポピュラーですが、多少の起伏があるので電動自転車のレンタルがおすすめ。おもな作品は4時間ほどで巡れます。
必見は「豊島美術館」。瀬戸内海の風景が眼下に広がる小高い丘の中腹にあり、水滴のような白い建物です。柱が1本もないコンクリート・シェル構造で、内部には高さ4.5mほどの空間があります。天井にはぽっかりと空いた開口部、床から水が湧き出て流れ「泉」となる作品、そして敷地は休耕田だった棚田を再生した場所であり、こうした空間全体が「美術館」というわけです。未来か宇宙かといった不思議な雰囲気のカフェとショップも見逃せません。
島の玄関口、家浦港近くにある「豊島横尾館」は、建築家の永山祐子が民家を改修したもの。展示スペースは、世界的美術家・横尾忠則の、どこか不思議で神秘的、アバンギャルドな作品で埋め尽くされています。このほか、島の食材で島のお母さんたちが作る独創的な食事が楽しめる食堂アート「島キッチン」、世界中から集めた人々の心臓音を聞くことができる空間「心臓音のアーカイブ」など、個性的なアートが点在します。
エコとアートの融合が見られる犬島
最も小さな犬島は豊島から高速船で約25分。岡山の宝伝港からはわずか10分ほどで着きます。現在の人口はわずか50人ほどで、島内の交通手段は徒歩。細い坂道に小さな集落がある島独特の風景が広がっていて、2010年からはここの空き家などを利用してギャラリーに生まれ変わらせる犬島「家プロジェクト」がスタートしています。
犬島には明治から大正にかけて銅の精錬所がありました。その巨大な跡地が「犬島精錬所美術館」として利用されています。煉瓦で造られた朽ちた煙突と精錬所の遺構は、それだけでなかなかに壮大なもの。「在るものを活かし、無いものを創る」をコンセプトに、エコロジーを意識したリノベーションが行われ、日本の近代化に警鐘を鳴らした三島由紀夫をモチーフとした作品が展示されています。
直島、豊島、犬島の魅力は、その斬新なアイディアと、それに活かされて際立つ瀬戸内の美しい自然風景にあります。しかし、何よりの素晴らしさは、すべてが島の人々の暮らしに溶け込んで存在していることでしょう。かつてプロジェクトはなかなか受け入れてもらえなかった時期もあったといいます。でも今や島民たちは、旅人たちを温かく迎え入れ、アートとともに共存しています。それでもその暮らしを大きく変えることはありません。それゆえに、どこか懐かしい気持ちになれる光景が残っていることこそ、この島々の真の魅力のように思えます。
※「ベネッセアートサイト直島」は瀬戸内海の直島、豊島、犬島を舞台に株式会社ベネッセホールディングス、公益財団法人 福武財団が展開しているアート活動の総称です。
直島、豊島、犬島への行き方(交通アクセス)
各島へのアクセスは「ベネッセアートサイト直島」の主要都市からのアクセスを参考にしてください。
■地中美術館
予約サイト:地中美術館 オンラインチケット
電話:0879-68-3555
営業:10:00 〜 16:00(最終入館15:30)11月1日 〜 2月末日
10:00 〜 17:00(最終入館16:30)3月1日 〜 10月31日
火曜日から木曜日(12月1日〜2月末日)休館
火曜日(3月1日〜11月30日)休館
※祝日の場合は開館、翌日休館、月曜日が祝日の場合は、火曜日開館、翌水曜日休館
料金:1,540円 ※15歳以下無料
電話:086-947-1112
営業:10:00 〜 16:30(最終入館16:00)
火曜日から木曜日(12月1日〜2月末日)休館
火曜日(3月1日〜11月30日)休館
※祝日の場合は開館、翌日休館、月曜日が祝日の場合は、火曜日開館、翌水曜日休館
料金:2,060円 ※15歳以下無料 犬島「家プロジェクト」、犬島 くらしの植物園と共通
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