東京の離島で、のんびり海を眺めて温泉に浸かろう

新島|大人の島旅におすすめの観光&宿泊スポット

公開日:2018.12.03

東京から高速船でわずか2時間半。ミルキーブルーの海とどこまでも続く白い砂浜はまるで海外にいるかのよう。満天の星を望む露天風呂、独特な色合いの新島ガラス、渋谷駅のモヤイ像の故郷でもあるここ新島の多彩な魅力を島在住のライターがご紹介します。

新島の羽伏浦海岸のメインゲート
羽伏浦海岸のメインゲートは、まるで地中海のような風景。写真提供:新島観光協会

日本離れしたダイナミックな風景がすごい

伊豆諸島北部にある新島は、東京から南へ約150kmの太平洋上に浮かぶ島。面積は約23キロ平方メートルで南北に細長く、ひょろりとしたひょうたんのような形をしています。気候は東京より少し暖かく、強い西風が吹く真冬をのぞけば1年を通じて過ごしやすい陽気が続きます。

 

新島港のそばにある黒根海岸は、夏には海水浴客でにぎわう人気ビーチ
写真提供:新島観光協会

 

新島といえば、なんといっても美しい海。どこまでも透き通ったバツグンの透明度はもちろん、「新島ブルー」と呼ばれる独特のミルキーブルーの海と真っ白な砂浜が広がり、「これが本当に東京の海!?」と驚く人は少なくありません。

きれいな海だけでなく、壮大なスケールの景観美が新島の魅力。たとえば島の東側にある「羽伏浦(はぶしうら)」は約7kmにわたって白砂の海岸が続き、青と白の鮮やかなコントラストは思わず写真を撮らずにはいられない絶景です。また絶好のサーフスポットとしても知られていて、世界中のサーファーが羽伏の波を目指して集まってきます。

 

新東京百景に選ばれた羽伏浦。サーフィンのメッカとしても有名
写真提供:新島観光協会

 

羽伏浦の南端には「白ママ」と呼ばれる巨大な断崖があります。海底火山の噴出物が冷えて固まったもので、海風による侵食でむきだしの断崖が真っ白な砂となって崩れ落ちる景色は言葉を失うほどの大迫力。新島の砂が白いのは、この白ママの砂が海に流れこんでいるからなんだとか。

 

白ママは崩れやすく危険なため、見学には注意が必要 
写真提供:新島観光協会

 

この真っ白な断崖を生み出しているのが、地元で石山と呼ばれる「向山(むかいやま)」。ゴツゴツした白い石が積み重なるワイルドな景観に圧倒されたり、大海原を眺めながらトレッキングを楽しんだりと、非日常感を堪能することができます。こうしたダイナミックな景観から、最近ではCMや雑誌の撮影も多数。海外で撮影したのかと思ったら新島だった、なんて作品も意外とたくさんあるようですよ。

70年代には空前の大ブームが起き、ビーチはどこも芋洗い状態、通りではすれ違うことすらできないほど若者であふれていた新島。「新島といえばナンパ」というイメージを持つ人もいるかと思いますが、今ではゆったりした時間が流れる静かな島です。夏のピーク時をはずせば、美しいビーチをひとりじめするのも夢ではありません。

 

向山展望台からは大海原のパノラマビューを楽しめます 
写真提供:秋枝ソーデー由美

 

絶景温泉で心もカラダもゆったりと

新島の魅力は、海と景色だけではありません。島内には2カ所の入浴施設があり、どちらもオーシャンビューを楽しみながら、開放感あふれる温泉に入ることができます。

1つは、新島港から南側へ少し歩いた海岸沿いにある「湯の浜露天温泉」。岩場の上に古代ギリシャの神殿を思わせる建物が立っているので、すぐにわかります。泉質はアルカリ性強食塩泉で、海底から汲み上げたしょっぱい温泉。芯まで温まり、湯上がりもずっとぽかぽか。

大小6つの野天岩風呂が点在していて、水着着用の混浴ですが、なんと24時間無料で入浴できるという嬉しいスポット。毎日通ってくる地元民も多いので、お風呂に入りながら島の人と楽しくおしゃべり……なんていうチャンスもありそうです。

 

湯の浜露天温泉。階段をのぼった神殿風建物の下にも湯船があります
写真提供:新島観光協会

 

湯の浜露天温泉のまわりは街の灯がないため、夜は満天の星やくっきりした月を眺めながら温泉を満喫できます。サンセットタイムには陽が海に沈んでいくさまを、湯船からゆったり眺めることもできます。

 

湯の浜露天温泉からは海に沈む夕陽を見られます
写真提供:秋枝ソーデー由美

 

「水着だと、くつろいで入浴できない」という方は、もうひとつの温泉施設「まました温泉」へ。湯の浜露天温泉から少し坂をのぼった丘の上にあり、露天風呂から海の絶景を楽しむことができます。

 

海風を感じながらゆったり入れる露天風呂 
写真提供:新島観光協会

 

まました温泉では男女別の内風呂と露天風呂、サウナを完備していますが、別料金で砂むし風呂もトライできます。アツアツの砂に全身をすっぽり包まれていると、玉のような汗をたっぷりかいて気分もスッキリ。

 

まました温泉の砂むし風呂。びっくりするほど汗が吹き出ます
写真提供:新島観光協会

島の観光スポットとおすすめの宿

今でこそ船や飛行機で気軽に行き来できる新島ですが、黒潮に囲まれ自然の厳しい新島は、かつてはなかなかたどり着くことのできない遠い島でした。そのため新島では独自の文化が育まれ、離島ならではの歴史や文化に触れることのできる観光スポットも数多く残されています。

その代表が、本村地区の長栄寺にある「流人墓地(るにんぼち)」。新島は江戸時代初期から約200年もの間、流刑地として1,300人以上の流人を受け入れてきました。土方歳三の遺志を継いで新選組最後の隊長となった相馬主計や、山岳信仰の聖地・出羽三山を復興させた高僧・天宥法印など歴史に名を残す人もいましたが、多くはごく普通の庶民たち。わずかな罪や、時には無実の罪で故郷から遠く離れた島に流された人もいたといいます。

島で命を落とした流人のためにつくられた流人墓地は、今も島の人々が交代で墓守をするのがならわし。色とりどりの花々と真っ白な砂が日差しに照らされて、明るく清らかな空気に包まれています。

 

流人墓地は共同墓地から1段下がったところにあります
写真提供:新島観光協会

 

新島といえば、新島ガラスもはずせません。向山から採掘される新島特産の天然石「コーガ石」を原料にしてつくられる新島ガラスは、やわらかなオリーブグリーン色が特徴。繊細な風合いながら日常使いできる丈夫な新島ガラスは、世界中に愛好家がいるほどの人気。新島ガラスの魅力は島内にある「新島ガラスアートミュージアム」でじっくり味わいたいところです。

 

淡いグリーンがさわやかな新島ガラス 
写真提供:新島観光協会

 

隣接した「新島ガラスアートセンター」では、吹きガラスのコップをつくることもできます。自分好みのコップをつくって、旅の思い出を持ち帰るのも楽しいですね。(要予約)

 

吹きガラス体験は誰でもチャレンジできます(要予約)
写真提供:新島ガラスアートセンター

 

新島を歩いていると、あちこちでこうしたミステリアスな巨石像に出会うことができます。どこかで見覚えありませんか? そう、東京・渋谷駅西口の待ち合わせスポットとして有名なモヤイ像です。

モヤイ像は島内のあちこちで旅人を迎えてくれます 
写真提供:新島観光協会

 

モヤイ像はコーガ石を彫って作られる新島生まれの石像で、新しい観光の目玉にしようと80年代に盛んに制作されたもの。「モヤイ」は助け合う、力を合わせるという意味の言葉で、島に欠かせないモヤイの精神に、イースター島のモアイ像をかけ合わせて誕生したんだとか。新島内には100体以上のモヤイ像が点在していて、1つ1つが大きさもテイストも異なるので、モヤイ像をめぐって散策するのも楽しそうです。

 

渋谷のモヤイ像とそっくりさんもいらっしゃいますよ
写真提供:秋枝ソーデー由美          

 

たっぷり観光を楽しむのもいいけれど、大人の島旅はあまりつめこまずに島時間をゆったり味わいたいところ。のんびり浜さんぽを楽しんだり、お酒を飲みながら日が沈むのをぼんやり眺めたり。お宿でお気に入りの本を読みながら、月の光を感じる……なんて時間の使い方は、島ならではかもしれません。

新島で、50代以上のハルメク世代のみなさんにおすすめしたい宿泊先は、村営施設の「温泉ロッジ」。まました温泉からすぐの高台にあり、集落から離れているため静かで落ち着いた雰囲気が魅力。新島では唯一、温泉が楽しめるお宿です。

木のぬくもりを感じられる館内は、全体的にゆったりしたつくり。大浴場で温泉にゆっくりつかるもよし、表に出て夜空を眺めるもよし。時を忘れてのんびりしたくなります。

 

温泉ロッジ

 

もうひとつ、おすすめの宿といえば「お宿 そうめいまる」。本村地区の前浜海岸から少し坂をのぼった場所にあり、さわやかな風が通り抜けるアットホームな民宿です。集落の奥にあるので、とても静かで落ち着いた環境。すぐそばには伊豆諸島最大規模を誇る十三社神社があるので、朝一番に境内へお参りしてさわやかな朝を迎えるのもよさそうです。

せっかく島に来たのなら、島ならではの料理を楽しみたいもの。こちらの「そうめいまる」は、新島近海で獲れた新鮮な魚や島で採れた野菜、魚介類を使った料理に定評があります。

 

お宿 そうめいまる

夕食では近海で獲れた新鮮な魚の刺身や、明日葉など島で採れた野菜を使った料理を。
庭で取れたパッションフルーツの手作りアイスもデザートに人気です

 

壮大なスケールの景観から「パスポートのいらない海外」とも呼ばれた新島。海水浴やマリンスポーツもいいけれど、何もしないでただ目の前の景色を眺めるだけで、じんわり心が満たされるというファンも多いようです。次の週末は、お気に入りの本と音楽とお酒を持って、ふらりと新島へ出かけてみてはいかがでしょう?

新島への行き方(交通アクセス)

東京から新島行きの船と飛行機が毎日運航しています。時刻表は時期によって変わりますので、出発日の運航状況を必ずご確認ください。

●船をご利用の場合
東京・竹芝桟橋より東海汽船の高速船セブンアイランドで約2時間30分、大型船さるびあ丸で約8時間30分
静岡・下田より神新汽船のカーフェリー・あぜりあ丸で約3時間
東海汽船 https://www.tokaikisen.co.jp
神新汽船 http://shinshin-kisen.jp

●飛行機をご利用の場合
東京・調布飛行場より飛行機(19人乗り)で約35分
新中央航空 https://www.central-air.co.jp

記事でご紹介したスポット
■まました温泉
住所:東京都新島村瀬戸山
電話:04992-5-0830
営業:10:00〜21:30受付 砂むし風呂11:00〜20:00受付
料金:大人300円、子供150円、70歳以上200円/砂むし風呂 大人700円、子供400円
定休:毎週水曜日

■新島ガラスアートセンター
住所:東京都新島村間々下海岸通り
電話:04992-5-1540
営業:10:00〜16:30
料金:入館無料 吹きガラスコップ制作体験2,620円(要予約/所要時間約30分)
定休:毎週火曜日

■新島村温泉ロッジ
住所:東京都新島村字瀬戸山116
電話:04992-5-1199
https://www.niijima.com/facility/spa/onsenrodge/index.html

■お宿 そうめいまる 
住所:東京都新島村本村2-6-12
電話:04992-5-1085
http://niijima-info.jp/member/member_stay/598/

■取材協力:新島観光協会 
住所:東京都新島村字黒根 新島港船客待合所1F
電話:04992-5-0001
営業:8:30〜17:00(GWおよび夏期は朝7:30〜)
年中無休
http://niijima-info.jp

秋枝ソーデー由美

編集&ライター。雑誌・ウェブなどで旅行やカルチャー記事を数多く手がけ、国内外を走り回るうちにひょっこり離島の男と出会い、東京から伊豆諸島の新島へ移住。現在は島を拠点に制作活動を続けるかたわら、離島文化を紹介するフリーマガジン『にいじまぐ』編集長として奮闘中。

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