疲れた心が満たされる山あいの秘湯宿

おすすめの温泉宿|越後長野温泉・嵐渓荘(新潟県)

公開日:2018.11.02

宿のまわりには何もありません。でも、豊かな自然はあります。心づくしのおいしい料理があります。ここだけの極上の温泉があります。文庫本を一冊、カバンに放り込んで、ふらりと山深い、静かなお宿に出かけませんか? 

レトロな建物と塩気の湯で人気の一軒宿

貸切露天風呂「山の湯」。お風呂からの眺めも抜群

雪国、新潟の中でも雪深い三条市の山間部。上越新幹線燕三条駅からバスで45分ほどのところにある「嵐渓荘」は、清流守門川の川沿いに広がる3,000坪の敷地に建つ一軒宿です。まわりには山また山。人家はなく宿に降り立つと聞こえてくるのは川のせせらぎと風に揺れる樹々の音、そして野鳥のさえずりだけ。

冬には深い雪に抱かれ、しんしんと降り積む雪景色の中に、3つの建物が、身を寄せ合うように建っています。昭和初期の料亭を移築した、国登録有形文化財の「緑風館」、木造平屋建てでこぢんまりとした部屋がある旧館の「りんどう」、そして嵐渓という宿の名にふさわしい、窓を開ければ渓谷を望む「渓流館」。個性の異なる3つの建物は、どれも懐かしさを感じる、趣ある空間です。

深さが130cmもある「深湯」。体が少し浮くような感覚

「嵐渓荘」は、常連のお客さまが多いそうです。その理由は、レトロな建物の魅力とともに、そのお湯の素晴らしさにあると言われます。その泉質は、ナトリウム塩化物冷鉱泉。切り傷、やけど、冷え症、婦人病、神経痛、肩こりなどによく効くお湯で、口に含むとかなり塩辛いことに驚きます。温泉1リットルあたり、13グラムもの塩が含まれているのです。ナトリウム以外にもマグネシウムやカルシウムも豊富で、切り傷などにもよく効きます。包丁で切った傷をこの宿のお湯で治すと化膿しにくいと言われ、あせもでぐずる赤ちゃんも帰る時にはにこにこ笑っている、などという声が届くそうです。

渓流守門川を臨む無料貸切風呂「山の湯」

湧いてくる源泉の温度は16.5度と低いのですが、加温をして、長い間入っていられる、熱すぎない温度まで上げています。肌にまとわりつくような、入浴後も湯冷めしにくい無色透明のお湯は、溶け込んでいる溶存物質がとても高く「療養泉」に分類されます。

昆布茶のようなうまみと塩味がある温泉

このお湯でお茶などを淹れて飲むこともできます。ラウンジでは焙じ茶を楽しめます。しょっぱいだけでなく、まろやかでうまみも感じます。

四季折々の山のごちそうでおもてなし

夕食の「山里会席」コース。川の幸、山の幸が堪能できる

 

お料理も、ありきたりのものは出てきません。深い山の中ですから、地元の自然が育んだ食材を取り入れた、まさに「山のごちそう」です。

鮎や岩魚など季節ごとに獲れる川魚の塩焼き。炭火で香ばしく焼き上げてくれる

鮎や岩魚など、季節ごとに獲れる川魚の塩焼きは、炭火で香ばしく焼き上げています。清流で育った臭みのまったくない鯉の洗い、山から掘ってきた天然の自然薯、ゼンマイの一本煮、春には山菜の天ぷらなど、派手さはありませんが、山に来たからこそ味わえるものばかり。お米はもちろんコメどころ新潟ならではの、炊き立てのコシヒカリ。真木の清水と呼ばれる天然の湧水で炊いたごはんをかみしめると、口の中に甘みと香りが広がります。

 

この宿でしか食べられない、塩分の強い源泉で炊いた朝食の温泉粥

  そして何よりこの宿に泊まってよかったと感じるのが、朝食です。小さな器に盛られた料理まで、ひとつひとつ丁寧に作られています。ごはんはもちろん炊きたてのコシヒカリ。ヨーグルトまで自家製です。そんな中で誰もが美味しさに驚くのが、宿の源泉を使って炊く温泉粥です。程よい塩分とうまみの温泉をたっぷり使ったお粥は、ゆっくり眠ってリフレッシュした体を、さらに元気にしてくれるような優しい味わいです。

豊かな山の自然をゆっくり楽しめる宿

雪深い冬には、かまくらで温かいお汁粉や甘酒が楽しめる

嵐渓荘の周辺には温泉街もなければ、人がどっと押し寄せる観光施設もありません。秘境とも言える山の中にぽつんとある一軒宿の秘湯です。マグロの解体ショーや食べ放題のバイキングもありません。


けれど、春には桜が咲き、山菜が採れます。夏には青々とした山の樹々があり、小川には蛍が飛びます。秋には見事な紅葉に囲まれ、きのこや新米が待っています。冬は降り積もる真っ白な雪があります。自然を満喫するために外を歩くもよし、落ち着いたレトロティークな空間で心と体を伸び伸びとするもよし。心からのんびり、ゆったりしたい方には、この上ない空間といえます。この宿は、何もないところにある、なんでもある宿なのです。

嵐渓荘への行き方(交通アクセス)

威風堂々とした本館「緑風館」

嵐渓荘

住所: 〒955-0132 新潟県三条市長野1450
電話: 0256-47-2211 
交通:JR上越新幹線燕三条駅またはJR東三条駅下車 無料送迎バス(要予約1日1便)
部屋数:17室(無料無線LANあり)

坂井 淳一

「今日なにを呑む?」から始まる食事の新しいスタイルを提案する酒ごはん研究所主任研究員。ワイン、日本酒、本格焼酎やスピリッツ、カクテルとあらゆるお酒を研究している。料理はもちろん、旅行、アウトドアやIT、ガジェットなど幅広くカバーする。

マイページに保存

\ この記事をみんなに伝えよう /

注目企画