現地集合の地元密着ツアーが魅力

新しいバス旅「着地型ツアー」とは

公開日:2018.10.20

「バスツアーは手軽だけど、ありきたり」と敬遠する人も多いのでは。実は、最近、現地の空港や駅で集合するツアーが人気急上昇中です。自分のペースで旅しつつ、地元の人が企画するこだわりツアーでより深い旅行体験。「いいとこどり」旅行をどうぞ。

着地型ツアーを組み合わせてオリジナルな旅を楽しむ

地元の人しか知らない絶景ポイント  写真提供:天草市

従来のバスツアーは、気軽に参加できる半面、旅慣れた人からは「もっと自由に、自分のペースで旅行したい」「有名観光地だけではなく、地元の人しか知らないような場所を訪ねたい」という声も聞かれるようになりました。

こうした声を受けて増えているのが、現地の空港や駅などに集合して、そこから旅が始まるタイプのツアーです。出発地(発地)ではなく目的地(着地)で発着するので「着地型ツアー」と呼ばれています。

旅行者は、航空機や鉄道、高速バスなど公共交通を使って移動し、行程の一部だけ、現地で「着地型ツアー」に参加するのです。ツアーを企画する旅行会社からすると、地元の人、遠来の観光客、なかには海外からの旅行者らが1台のバスに乗り込むので、個性的なツアーをたくさん企画しても席を埋めることができます。それに、地元の旅行会社が企画するからこそ、隠れた観光地や季節に合わせた企画など個性的なツアーを組むことができるのです。

旅行の行程のうち、個人で観光を楽しむ部分と「着地型ツアー」に参加する部分とを、バランスよく組み合わせることがコツです。「地下鉄や路線バスが充実している都市は個人で観光。公共交通が不便な鄙びた地域はツアーに参加」とか「専門家のガイドを聞きたいところだけツアーに参加」というように、自身の旅の目的に合わせて「着地型ツアー」を上手に活用しましょう。

定番の観光地から老舗料亭まで目的地はさまざま

・定期観光バス

着地型ツアーの元祖「はとバス」  写真:成定竜一

東京の「はとバス」をはじめ、全国各地で運行されている定期観光バスは、「着地型ツアー」の元祖といえます。東京のほか、札幌、京都、奈良、広島といった観光都市や、箱根、伊豆などの観光地では多くのコースが設定されています。それだけではありません。北は稚内や利尻島、礼文島から、南は西表島まで全国の都市、地域でも運行されているのです。地元の観光地を効率よく回り、バスガイドが案内してくれるので、「初めての土地を手軽に観光したい」という旅行者にお勧めです。

 

・ボランティアガイドが案内するツアー

「天草ぐるっと周遊観光」にはイルカウォッチも  写真提供:天草市

より深くその地域を知りたい、という方には、地元在住のボランティアガイドが同行するツアーがおすすめです。いわゆるバスガイドではなく、「地元の歴史に精通」「地元の役に立つことが生きがい」といった、主にシニア層のガイドさんが同行してくれます。たとえば、熊本県天草の「天草ぐるっと周遊バス」。「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺跡」が世界文化遺産に選ばれ注目されています。往来が不便な小さな集落だからこそ信仰を守ることができたわけですが、その分、観光客が訪れるには手間も時間も必要です。あえて大型バスではなく小型のバスを使用し、かつて人々が「潜伏」を続けた小さな集落を訪れます。地元のガイドさんならではの詳細な説明を聞きながら、「人々は何を信じて生きていたのだろう?」と思いを馳せる旅ができるのです。

小回りのきくバスで地元の超穴場へ 写真提供:天草市

 

・ディープな東京ツアー

敷居の高い高級料亭でもツアーなら安心

お手軽な定期観光バスの定番コース(「東京半日」など)を多く運行する「はとバス」ですが、その一方で個性的なコースも充実しています。たとえば、「夜のエンターテイメント」。ホストクラブやニューハーフショー、ものまねショーや老舗料亭などを訪ねるコースが、曜日ごとに設定されています。「一度行ってみたいけど、個人で行くのは少し怖い」という人も安心して参加できます。また、昭和の名バスガイドが昭和の名曲を交えながら東京を案内する「懐かしの昭和浪漫紀行」、築地や日本橋を知り尽くした案内人と共に巡る「築地味めぐりと日本橋老舗&歴史探訪」など、少しディープな都内ツアーも人気です。

「着地型ツアー」専門の予約サイトも

流氷見学もバスツアーなら乗り換えなしでOK

上記以外にも、「札幌発着で、オホーツク海の流氷見学を日帰り」とか「那覇発着で、美ら海水族館など沖縄本島の有名観光地を一めぐり」など交通が不便な観光地へ貸切バスで案内してくれるツアーとか、香川県の「うどんタクシー」のように特定のテーマに詳しい運転手がつきっきりで案内してくれる観光タクシーなど、さまざまなタイプの「着地型ツアー」が増えてきています。

それでは、「着地型ツアー」を予約するにはどうすればいいでしょうか?

「はとバス」をはじめ、定期観光バスの多くは大手旅行会社で予約(乗車券を購入)することができます。また、地元のバス会社が運行しているものがほとんどなので、検索サイトで「地名 定期観光バス」と検索すれば運行会社のサイトを見つけることもできます。

一方、ボランティアガイドが案内してくれるような地元密着のツアーは、大手旅行会社で取り扱っていない例がほとんどです。その代わり、「ベルトラ」や「旅プラスワン」のような「着地型ツアー」専門の予約サイトに掲載されているツアーが増えていますから、これらのサイトで目的地やテーマを絞り込んで検索してみましょう。

全国の着地型ツアー情報

「自分で細かく旅程を調べたりするのはめんどうだけど、できあい、お仕着せのツアーは苦手」という方は、個人観光と現地での「着地型ツアー」を組み合わせて自分らしいオリジナルの旅行を楽しんでください。

■全国で運行されている定期観光バスの一例
・「はとバス」の都内観光

国内最北端の定期観光バス(稚内、利尻島、礼文島):宗谷バス

国内最南端の定期観光バス(西表島):西表島交通

 

天草ぐるっと周遊バス:天草宝島観光協会


「はとバス」の「夜のエンターテイメント」コース一覧

「ディープな東京 バスの旅」コース一覧


香川県の「うどんタクシー」:コトバスタクシー

■「着地型ツアー」の予約サイト

「ベルトラ」

「旅プラスワン」
 
 

成定 竜一

交通省「バス事業のあり方検討会」委員などを歴任。新聞、テレビなどでコメント多数。バス業界の規制緩和に尽力。TV出演、講演多数

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