増えている既婚者の恋愛の形

50代の恋!不倫とは違う恋愛の形セカンドパートナー

公開日:2023.10.22

50代後半になって、静かに恋におちた

そろそろ老後を見据えていかなければいけない50代後半になって、心惹かれる人が現れたら、どうしたらいいのだろう。今さら、新たな生活は送れない。かといって心惹かれる人を拒絶する理由もない。「何も進めない、静かに恋をするだけ」。メンタル重視のセカンドパートナーと出会い、そう言い切る女性がいる。

思えば、私の結婚生活は失敗だった

「結婚は失敗……と言ったら、子どもたちに申し訳ないですね(笑)。でも夫婦関係という意味ではやはり失敗だったと思います」

首都圏に住むジュンコさん(57歳)はそう言う。結婚して28年。長女は自宅を出て、パートナーと一緒に暮らしている。まだ結婚する予定はないようだ。25歳になった次男は、会社の関西支店に勤務、社員寮で暮らす。1歳年上の夫と二人きりの生活になって3年近くがたった。

「夫はもともと無口な人なんですよ。休日は黙って家で本を読んでいる。それは子どもがいなくなってからも変わりません。家庭のことは妻がやるのが当たり前だと思っている」

子どもが巣立っても「夫に尽くす妻」を求められて

「私はずっとパートを続けてきましたが、ここ数年はパートを増やしました。子どもたちが小さい頃から仲良くしているママ友たちとランチをしたり、時には日帰り旅行をしたりと楽しんでいますが、いつでも夫の食事のことがあるので夜は出られないんです」

もう子どももいないのだから、友人と一泊旅行くらいしたいと思っても、夫は「働いて帰ってきても夕飯すらないのか」と不機嫌になるから、旅行はあまりできない。

「昔ながらの夫に尽くす妻が理想なんです、夫には。だけど私はそんなことはどうでもいい、大人なんだから自分のことくらい自分でできるようになってほしいと思ってる。そのすれ違いが、子どもたちがいなくなってから顕著になってきましたね」

思えば育児にも、夫はほとんど関わっていない。黙って仕事をしてきただけ。夫は家庭を持ったこと、子どもたちのことをどう思っているのかすら、よくわからないとジュンコさんは言う。

趣味の集まりで出会ってしまった「かけがえのない彼」

一方、ジュンコさんはさまざまな楽しみを見つけてきた。

「自宅近くのスポーツジムでヨガを始めたり、地域のサークルで古典文学を勉強したり。仲間も増えて楽しいです。古典文学を学ぶサークルでは、素敵な男性と知り合いました」

彼は1歳年下の自営業者。たまたま席が隣になり、言葉を交わすようになった。無趣味で仕事ばかりしてきたけど、昔から古典文学には興味があったので、と彼は照れたように笑った。その笑顔に、ジュンコさんはキュンと心を動かされたと言う。

「とっても純粋な笑顔だったんです。この人はまっすぐ生きて来たんだろうなと思わせるような。次第にときどき帰りに喫茶店に寄って、いろいろおしゃべりするようになりました」

彼にどんどん心惹かれていくのを感じていた。もう想いが止められない。

大人だからこそ「何もしない恋」もある

彼と知り合って1年半がたった。まれに食事をすることもある関係だが、いまだに男女の仲にはなっていない。

「危ういときはありました。最初に彼と夕食を共にしたとき。夫の夕飯を作ってからバタバタと出掛けたんですが、やはり彼との初ディナーはドキドキしましたね。食事の後バーに寄って、すごくいいムードになって。バーを出たところで私がよろけて、彼が抱き留めてくれたんです。このままキスをして彼に抱かれたいと本気で思いました。でも私はパッと離れたし、彼も離した。これが私たちの限界なんだと察知しました」

その後も彼からは、肉体関係を求めるように具体的にはくどかれていない。ジュンコさんも彼に思いは告げていない。だがもし、ジュンコさんがひと言でも「今日は夫がいない」とか「帰りたくない」とか言ったら、その瞬間、二人の行き先は決まるだろうと確信している。

「でもそれは、いつかは終わる関係に足を踏み入れることを意味しますよね。私、彼とは一生ずっと長く付き合っていきたいんです。だからこそ誰に見られても何か聞かれても躊躇することなく、『私たちは友達だけど何か問題ある?』と言えるようでありたい」

体ではなく心が満たされる。セカンドパートナーという関係

男女の関係にならないからこそ、彼女の恋心は永遠に続く。ずっと会い続けられる。決して不倫でもない。ただし、かけがえのない心から大切な人。彼女はそう考えている。

「セカンドパートナーとっても不倫と変わらない関係の人もいると思います。でも、友だち以上の肉体関係が始まったら、同時に終わりも見えてくる。それが恋ですよね。だから私はあえて恋という枠に入れず、プラトニックなセカンドパートナーでいたいんです」

不倫という関係に何のメリットもないと彼女は言う。心は恋で満たされているが、それを肉体関係に持っていく必要もない。なぜなら、一生一緒にいたいから。

終わりのない関係、決して肉体的には交わらないが心の奥深くで慕い続ける仲。この方が恋としては、よほど深いのかもしれない。

亀山早苗

東京生まれ。明治大学卒業後、フリーランスのライターとして雑誌記事、書籍の執筆を手がける。おもな著書に『不倫の恋で苦しむ男たち』『復活不倫』『人はなぜ不倫をするのか』など。最新刊は小説『人生の秋に恋に落ちたら』。歌舞伎や落語が大好き、くまモンの熱烈ファンでもある。

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