2023年10月22日

仲は良いけど15年ない。女として見られたい

57歳キクコ!セックスレスに悩み既婚者合コンへ

更年期症状が重くて体調がすぐれない女性たちがいる一方、特になにごともなく更年期を経て元気な女性もまた少なくない。50代は体調や気力において、個人差が大きい。老後のことを考え始める人も多いし、もっと「女として」生きたいと願う人もいる。

夫とは仲がいいけれど15年のセックスレス

「夫とは仲良しなんだけど、それでも離婚を考えることはありますよ」

そう言うのはキクコさん(57歳)だ。5歳年下の夫とは、結婚25年を迎えた。長男は大学を卒業して昨年就職し、一人で暮らしている。長女は遠方の大学に進学、そのまま大学院へ進む予定らしい。いずれにしろ、子どもたちは巣立っていった。今は二人きりで第二の新婚生活を送っている。

「夫は優しくて本当にいい人。もしかしたら私が浮気をしても気付かないかもしれないと思うくらい、おっとりしています。その分、私たち、もう15年もセックスレス状態で性生活がないんです。以前は私も子育てに仕事にと忙しかったので、それほど気にしていなかったけれど、この年になると、このまま老いていくだけなのかと考え込んでしまうんですよ」

このまま女として枯れていくのは耐えられない

ここ数年特に、このまま女として枯れて死んでいくのは耐えられないと思うようになっている。ただ、そんなふうにセックスしたいと思う自分に罪悪感を覚えることもある。

「夫はずっと協力してくれてきたし、家事も分担してくれていた。私より家事はずっと上手です。でも年収は私の方が多い。これは本人のせいではなくて勤め先の問題ですからね、私はまったく気にしていないんですが、夫は若干、コンプレックスを覚えていたようです。それもあって家事をより多くやってくれていたのかもしれません」

キクコさんは夫のコンプレックスについては見て見ぬフリをしてきた。気にしないでと言えば、逆に自分が優位に立って気にしていると思われるからだ。

「なんとなくお互いにそういうことをごまかしながら、表面的には思いやりをもって接してきたのかなと最近思うんです。腹を割って話し合う関係ではなく、お互いに嫌な思いをしないよう気を付けながらソツなく仲良くしてきたというか……」

もちろん、それがいけなかったと彼女は思っていない。むしろ、多忙な日常をそうやって過ごしてきてくれた夫に感謝しているくらいだ。

セックスも心のつながりもない「ベテラン夫婦」

子どもたちがいた頃は、夫婦だけで向き合うこともしないですんだから日常生活はスムーズに進んでいた。

「今だって基本的にはスムーズなんです。ただ、ずっと心と心の深いところで会話することを避けてきたせいでしょうか、今も世間話しかできないんですよね、夫とは。それでもいいのかもしれないけど、性生活もない上に魂の深い部分で交流していない感じがして、25年も連れ添っているのに、ときどきひどく寂しいなあと思うんです」

自分が女であることを再認識したい

夫でなくてもいい、誰かから女として扱われたい。自分が女であることを再認識したい。キクコさんはそんな思いで悶々としていた。

自分から男性を求めたことは過去になかった。独身時代はいつも恋人がいたし、結婚してからも仕事で知り合った人に好意を持たれたりもしてきたのだ。

「私の中に、『女は男に求められてなんぼだ』という古い価値観があったんですね。だけど、こんなに悶々としているなら自分から土俵に上がってみてもいいんじゃないかと思い直したわけです。恋愛するかどうかはまた別の話。今までしたことのないチャレンジをしてみたかったのかもしれません」

勇気を振り絞って「既婚者合コン」に参加

「だけどねえ、ずっと悶々としていても事態は変わらないでしょう? だから清水の舞台から飛び降りる気持ちで、ネットニュースで見かけて気になっていた『既婚者合コン』に参加してみたんです。マッチングアプリは誰に見られるかわからなくて怖いけど、リアルな対面パーティーなら、仮に知り合いがいたら逃げて帰ればいいかなと思って」

ネットで検索したところ「既婚者合コン業者」があまりにも多いことに驚きつつ、自分と同じような気持ちの人が多いことに安心し、50代以上をターゲットにしたパーティーに申し込んだ。

久しぶりに男性に誘われて…自己肯定感が上がった

参加した既婚者合コンはシニアに年齢を限定していることもあり、「セックスの相手や不倫相手を探すギラギラしたもの」というよりは、「少しドキドキするような異性の友人が欲しい」というレベル感の参加者が多いおとなしいタイプのものだった。

実際、50~60代の男女が席を移動しつつ食事をしながら会話をするだけで、特にカップルになることを煽るような催しはなかった。

「心臓が飛び出そうに緊張しましたが、実際は一人で参加している人が多く、場の空気に慣れたら会話を楽しめました。あと、ちょっといいなと思う男性がいてホッとしたんです。自分が男性を見ても、もう何もときめなかないのではないかと不安だったから。

その人とは連絡先を交換、今度、食事でもしましょうということになっています。男性に食事に誘われるなんていうこと自体ずっとなかったので、女性として見られて、自己肯定感が上がり自信がつきました」

このまま老いていくだけでは嫌だ

恋愛など始まらなくてもいいのかもしれない。彼女が不安なのは、自分が女性として通用するかどうかということなのではないだろうか。そして自分の人生に、少し波を立ててみたいのではないか。

「このまま老いていきたくない」

その気持ちは多くの50代後半女性たちが共感するように思う。

亀山早苗
亀山早苗

東京生まれ。明治大学卒業後、フリーランスのライターとして雑誌記事、書籍の執筆を手がける。おもな著書に『不倫の恋で苦しむ男たち』『復活不倫』『人はなぜ不倫をするのか』など。最新刊は小説『人生の秋に恋に落ちたら』。歌舞伎や落語が大好き、くまモンの熱烈ファンでもある。

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