【映画レビュー】個性が光る「ダウントン・アビー」
2020.01.182020年03月14日
アカデミー賞に輝いた悲劇の歌姫の最期を熱演
【映画レビュー】波乱の人生「ジュディ 虹の彼方に」
女性におすすめの最新映画情報を映画ジャーナリスト・立田敦子さんが解説。今回は、才能を買われ歌手として華々しい道を歩んだジュディ・ガーランド。その裏ではギャンブルや病に苦しみ、波乱に富んだエンターテイナーとしての人生を描いた作品です。
「ジュディ 虹の彼方に」
「オズの魔法使」(1939年)で子役として大ブレイク、大ヒット作「スタア誕生」(54年)ではアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた往年のミュージカルスター、ジュディ・ガーランド。本作は、彼女の晩年にフォーカスを当てた舞台「エンド・オブ・ザ・レインボウ」の映画化である。
ミネソタのボードビル芸人だった両親の下、2歳半で舞台に立つが、13歳のとき、歌手としての天賦の才能を買われ、ハリウッドのスタジオMGMのオーディションに合格。天才子役として脚光を浴びた。だが、ハードな撮影スケジュールをこなすために与えられた睡眠薬の影響により神経を病み、情緒不安定となり、度々仕事に穴を開ける問題児となった。
映画「ジュディ 虹の彼方に」は、そんな波乱に富んだ歌姫の最期の日々を描く。ドラッグとアルコールに苦しめられ、借金で首が回らなくなったジュディは、2人の子どもを離婚した夫に預け、ロンドンのキャバレーでの5週間にわたる公演を引き受ける。異国の地、孤独と不安に耐えながら、必死に人生を立て直そうとするが、ここでも次から次へとトラブルを引き起こす……。ある意味、ショービジネス界の影の部分の象徴ともいえるジュディの人生だが、一方で彼女の天才エンターテイナーとしての真髄をこの映画は描き切る。
演じたのは、ジュディの大ファンだったというレネー・ゼルウィガー。ミュージカル映画「シカゴ」でもその歌とダンスの素晴らしさは実証済みだが、レネーはリハーサルの1年前から歌のトレーニングを開始した。さらにジュディの独特の訛り、声色、歌い方もマスターしたという。華奢で危ういジュディから、ステージでのオーラに包まれた歌姫への変貌、ラストステージのパフォーマンスは圧巻。まさにオスカー主演女優賞にふさわしい熱演だ。
監督/ルパート・グールド
出演/レネー・ゼルウィガー、ジェシー・バックリー、フィン・ウィットロック他
製作/2019年、イギリス
配給/ギャガ 3月6日(金)より、全国公開
今月のもう1本「ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方」
保護した愛犬の鳴き声が原因で大都会LAのアパートを追い出されたジョンとモリーの夫妻は、一念発起。郊外の荒れた農場を購入し移住する。いい食材にこだわる料理家の妻モリーの夢でもあった安全な食材を一から作り出すため、伝統農法での農場づくりに挑戦する8年間を追ったドキュメンタリー。自然との共生とは何か、理想の生活とは何か。暮らし方、環境問題など、この夫婦の奮闘の記録に学ぶことは多い。
監督/ジョン・チェスター
出演/ジョン・チェスター、
モリー・チェスター、愛犬トッド、動物たち
製作/2018年、アメリカ
配給/シンカ
3月14日(土)より、シネスイッチ銀座他、全国順次公開
文・立田敦子
たつた・あつこ 映画ジャーナリスト。雑誌や新聞、webサイトなどで執筆やインタビューを行う他、カンヌ、ヴェネチアなど国際映画祭の取材活動もフィールドワークとしている。共著『おしゃれも人生も映画から』(中央公論新社刊)が発売中。
※この記事は2020年4月号「ハルメク」の連載「トキメクシネマ」の掲載内容を再編集しています。
※雑誌「ハルメク」は定期購読誌です。書店ではお買い求めいただけません。詳しくは雑誌ハルメクのサイトをご確認ください。
■こちらの記事もおすすめ