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- ~改正入管法~外国人労働者の使い捨ては許されない
外国人労働者の受け入れ拡大を進める「出入国管理法案」の改正案が、可決・成立しました。事実上の移民政策とされる一方、外国人への人権侵害が広がる懸念も指摘されています。今回は、波乱含みの外国人受け入れ拡大の議論をお伝えします。
改正入管法の審議が荒れた理由
可決・成立した改正入管法は、今後5年間で介護、外食、建設、農業、宿泊などの14分野を検討の対象とし、最大34万5000人の受け入れを見込むものです。国会審議では、深夜から未明にかけて与野党間で激しい攻防が繰り広げられました。
法案に賛成したのは、自民・公明などの与党と日本維新の会などでした。一方、反対したのは、立憲民主党や共産党などの野党です。日本人としての同一性を重んじる傾向がある自民党などの与党が外国人労働者の受け入れを急ぎ、ふだんは外国人の社会的包摂や共生・人権を重んじる野党が、なぜ反対するのか。こうした観点から議論に違和感を持った方もいるかもしれません。
しかし、実は与野党は、法案に対する姿勢は違えども、外国人の受け入れは必要だという部分は、ほぼ意見が一致していました。与党は、とにかく新しい在留資格を作り、中身は法成立後に決めようとする姿勢であったのに対し、野党は穴だらけの法案の中身をきちんと詰めてから立法を決定すべきで、現段階で法案を通すのは時期尚早だと主張していたのです。
少子高齢化、東京オリンピックで人手が足りない
政治家たちが外国人労働者受け入れを前提に審議を進める背景には、少子高齢化や東京オリンピックを前にした深刻な人手不足があります。介護、建設、飲食業など、日本人が集まらない業界からは「もっと外国人労働者が働ける環境を整備してほしい」と要望があり、政治家たちはその解決策として、東南アジアの人々の労働力に注目してきました。
改正入管法のもとで新設される在留資格「特定技能」は、熟練の度合いによって「1号」と「2号」の2種に分かれます。「1号」は、就業分野での試験と日本語の日常会話レベルに合格すれば取得できるもので、家族は一緒に来日できませんが、最長5年、日本に滞在できます。熟練して「2号」になれば、家族とともに日本で暮らしながら働いていくこともできます。現段階では2号へのハードルは高いとされますが、希望し努力すれば日本での永住に道を開く内容です。
この法改正について、安倍晋三首相は「移民政策ではない」と主張しています。しかし、在留期間が過ぎても日本に定住する外国人が増える可能性はあり、「移民政策ではない」と断言することは決してできないでしょう。
「時給300円」の“奴隷労働”から、転換なるか
人口減の日本を支えてくれる外国人とともに共生していくことは、正しい方向だと筆者は考えます。しかし心配なのは、現行の外国人労働者をめぐる非人間的な処遇が改善されないまま、新しい在留資格に当てはめてしまうことです。外国人に日本の技術を学んでもらう現行の「技能実習制度」のもとでは、外国人の技能実習生たちが、劣悪な環境のもとで、最低賃金を下回る違法な低賃金や長時間労働を強要されるケースが相次ぎ発覚しています。
NHK取材班の『外国人労働者をどう受け入れるか 「安い労働力」から「戦力」へ』(NHK出版新書)では、外国人労働者が技能実習生という名目の下で、最低賃金を大幅に下回る「時給300円」で洋服の縫製や、大葉を束ねる作業をさせられ苦しむ姿が浮き彫りにされています。こうした過酷な労働のもとで働かされる技能実習生の問題は社会問題として認知されており、国連からも勧告を受けています。しかし、この技能実習生たちの約半数は、新設される「1号」に移行することが分かっており、改正入管法ができても実態はあまり変わらないのではないかとの懸念があがっています。
明るく、いつも笑顔で、一生懸命だった外国人介護福祉士
人手不足が深刻化している分野の1つに、介護があります。今回の改正入管法では、5年間で最大6万人の受け入れを見込んでいます。外国からの介護人材の受け入れは10年以上前から経済連携協定(EPA)を通じて進められており、両親や自身がお世話になる介護施設で外国人のスタッフに会う機会もそう珍しくはなくなってくることでしょう。
筆者は2009年、介護福祉士の国家試験を目指しながら日本の介護施設で働くインドネシア人介護福祉士たちを取材したことがあります。彼/彼女たちは驚くほど勤労で、明るく、笑顔を絶やしませんでした。日本で頑張る理由を聞くと、「自国の両親や、きょうだいを支えたいから」と、答えてくれたことを思い出します。家族思いの優しい若者ばかりでした。
国家試験に合格したインドネシア介護福祉士たちの当時の様子が、動画で残っていますので、少し古い映像ですが、ご覧になってほしいと思います。3年間の訓練の末、介護福祉士に合格したワヒューディンさん(男性)が「高度な技術を持っている日本で、いろんなことを学びたいという理由で来日しました」と、力強く語る姿が印象的です。
2012年3月28日 日本記者クラブ インドネシア人介護福祉士国家試験合格者会見
介護分野に限らず、農業や建設などでも、日本に夢を抱いて来日するアジアの外国人はたくさんいます。今回の改正入管法の議論の様子も、日本国内に限らず、人材を送り出す側の東南アジアや移民問題で揺れる欧米でも関心をもって報じられました。
朝日新聞によれば、ベトナムでは「ベトナム人にとって新たな就労機会になる」(地元紙のトイチェ電子版)など現地人材派遣会社関係者の声が紹介され、またフィリピンでは「雇用機会が中東から北アジア、特に日本へ移動する」(英字紙「フィリピンスター」)という地元専門家の声が掲載されたそうです。(2018年12月8日朝日新聞朝刊「東南アジア・欧米も報道 就労機会に・日本近代史の分岐点」より)
ジャパニーズ・ドリームを夢見る外国人たちと、どのように共生していくかは、私たち市民の姿勢にかかっています。
これ以上、外国人が増えていく日本に嫌気を感じるという声もあります。しかし日本の経済や社会保障制度の現実を考えると、働きに来てくれる外国人と共生していかなければ日本人の活気ある暮らしも消失してしまいます。
法改正をきっかけに、文化の違う外国人を理解し、柔らかに繋がることを考えることも新しい発見があるはずです。英会話にチャレンジしたり、ベトナムやフィリピン、インドネシア料理のレストランに行ってみるのも楽しいでしょう。
来年4月1日の改正入管法の施行に向けて、詳細が決まるのはこれからです。このニュースを外国人との共生の観点から、注意深く見守っていきたいものです。
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