50代からの女性のための人生相談・96

人生相談:家と職場の往復…無趣味で人生がつまらない

名取芳彦
回答者
元結不動・密蔵院住職
名取芳彦

公開日:2022.10.16

更新日:2024.02.18

読者のお悩みに専門家が答えるQ&A連載。58歳女性の「コロナ禍で今まで以上に家と職場の往復に……趣味もなく、人生がつまらない!」というお悩みに、仏教の教えをわかりやすく説いて「穏やかな心」へ導く、住職・名取芳彦さんが回答します。

58歳女性の「何もない毎日」についてのお悩み

贅沢な悩みかもしれませんが、コロナ禍で仕事場と家の往復で、何もない毎日を送っています。趣味も特になく、最近始めたウォーキングと1日3回のストレッチをするくらいで、1日が過ぎていきます。

息子夫婦と孫がいますが、今年の1月頃からお互いにギクシャクしてしまい、会っていません。今さら、会いたいとも思わないので連絡もしていません。

近所に友達でも……と思うのですが、人付き合いが苦手でこれもなかなか難しいです。

毎日を楽しく生きられるようにするには、どうしたらいいでしょうか?

(58歳女性・子猫さん)

名取さんの回答:外と内を探して心に張りを取り戻して

01_外と内を探して心に張りを取り戻して

何もない毎日が「贅沢かもしれません」と気付いているのは、素晴らしいことだと思います。

貧困や病気、争い事などを経験した人は、不安のない、何もない1日を送れることを幸せと感じます。「暮らしの中に不安要素がないだけでありがたい」と思っている人は、少なくありません。

しかし、旅行やキャンプやイベントなどの楽しいことをしてきた人(あるいはそんな人が周りにいる人)にとって、心踊る、ウキウキした体験が少なくなると心の張りがなくなったような気持ちになるかもしれません。

心の張りがなくなっていくのを自覚できたら、その張りを取り戻す努力をした方がいいでしょう。

その方法の一つは外を探す、もう一つは内を探すということです。

外を探す:できそうなことから一つずつ

子猫さんは、心の中では「趣味があるといい」「息子夫婦や孫と仲良くできるといい」「近所に友達がいるといい」と思っていらっしゃるようです。たしかに、このうち一つでもあれば楽しさと潤いのある暮らしができるでしょう。

誰でも簡単に「趣味」を見つける方法

02_誰でも簡単に「趣味」を見つける方法

趣味の手軽な見つけ方を一つお伝えします。

大型書店の趣味コーナーの本棚へ行って、世の中にどんな趣味があるかを片端からチェックしてはどうでしょう。

“石の上にも三年”といわれるように、どんなことでも、それができるようになるには三年くらいかかるのを覚悟すれば、還暦を迎える頃には「これが私の趣味です」と堂々と言えるようになります。

本棚にある趣味は選(よ)り取り見取り。子猫さんに取り組めないものはありません。

グッと飲み込み…息子さん夫婦とは手を取る努力を

03_グッと飲み込み…息子さん夫婦とは手を取る努力を

次に、息子さん夫婦とのギクシャクについてです。

どのような事情かはわかりませんが、察するに、お互いがジャンケンでグーを出している状態でしょう。

グー同士では握手はできません。互いが手を開いてパーを出せれば、がっちり握手ができますが、握手しなくてもどちらかが手を開けば、相手のグーを握ることはできます。手を開くのは、さまざまな経験を通して心が広くなった年長者の役割だと思います。

江戸時代に博打打ちの大親分として名を馳せた大前田英五郎(おおまえだ・えいごろう)は「ケンカというのは、どちらに理屈があろうと、馬鹿を看板にしているようなものだ」と言ったそうです。私の好きな名言です。

友達づくりの前に、心を開くための準備を

04_友達作りの前に、心を開くための準備を

近所に友達がいれば……という願いは、人付き合いが苦手なので叶えられていないのですね。そこまで分析できているのなら、やることは「友達をつくる」ことではなく、人付き合いの苦手意識を解消することでしょう。

人付き合いは面倒なものですが、面倒でも楽しむことはできます。面倒なのを覚悟した上で、子猫さんが相手に心を開けるか、開いても大丈夫な心を持っているかが鍵です。

開いても問題ない心を養う時間は、十分あります。

内を探す:心のアンテナの感度を上げて

内を探す:心のアンテナの感度を上げて

開いても大丈夫な心を養うのは、自分の生活の中に心の張りを探す練習をすることです。これが“内を探す”ということです。

子猫さんのように、「今日は何も楽しいことがなかった」とおっしゃる方は多いものです。しかし、楽しいことは毎日“佃煮にできるくらい”たくさんあります。それに気付くアンテナの感度が鈍っているだけなのです。

通勤のバスや電車に乗り合わせた人を観察するだけでも、十分楽しめます。

毎日食べる食事の食材一つ一つの味、生産地、作り方に驚き、感謝することもできます。各地の天気予報を見て、そこに住んでいる知り合いに思いを馳せて、連絡を取ることもできます。公園や庭先、街路樹の木の幹や草の葉にそっと触れて、季節の変化を体感することもできます。

子猫さんが毎日やっているウォーキングは、そんな楽しみがつまった宝庫のようなものだと思います。

こうしたことを拙著の中でご紹介しているのですが、読者の中には「あなた自身はそれを感じ取っているのか?」と疑問に思う人がいる気がしました。

そこで、2007年7月9日からほぼ毎日、密蔵院のホームページでその日に私が感じたことをブログで書くことにしました。日々起こる些細なこと、一瞬の出来事が、どれほど日々の暮らしに張りを与え、楽しみを与えてくれるか、参考になるかもしれません。

06_内を探す:心のアンテナの感度を上げて

できることをいくらやってもそれは“遊び”です。できないことをするのを“練習”といいます。心に張りのある日を過ごすために、楽しみを自分の外と内の両方に見つけられれば、鬼に金棒。

それを見つける練習を少しずつ始めてみませんか。

回答者プロフィール:名取芳彦さん

回答者:名取芳彦さん

なとり・ほうげん 1958(昭和33)年、東京都生まれ。元結不動・密蔵院住職。真言宗豊山派布教研究所研究員。豊山流大師講(ご詠歌)詠匠。写仏、ご詠歌、法話・読経、講演などを通し幅広い布教活動を行う。日常を仏教で“加減乗除”する切り口は好評。『感性をみがく練習』(幻冬舎刊)『心が晴れる智恵』(清流出版)など、著書多数。

構成=石丸繭子(ハルメクWEB)

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