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- 人生相談:離婚と転職…うまくいかない毎日にうんざり
読者のお悩みに専門家が答えるQ&A連載。今回は53歳女性の「離婚して実家へ出戻り。実家での生活も新しい職場もなかなかうまくいきません…」という相談に、仏教の教えをわかりやすく説いて「穏やかな心」へ導く、住職・名取芳彦さんが回答します。
53歳女性の「離婚後、毎日がうまくいかない…」という相談
現在、私は53歳で1年半前に離婚し実家に戻り、母と息子と3人で暮らしています。
実家では、母が率先して家事をやっているので任せているのですが、私はやることがなくなってしまい、無気力状態になってしまっています。実家に住まわせてもらっているので「ありがたい」と思うようにしているのですが、自分が廃人のようになっている気がします……。
家事をやろうとしたこともあるのですが、母は自分が思ったようにやらないと怒るので何も手を出せなくなってしまいました。仕事も実家に戻ったのを機に転職したのですが、なかなかうまくいきません。このまま生きていても未来に何の希望も持てないです。
私はこのまま廃人のように生きていくしかないのでしょうか?
(53歳女性・KTさん)
名取さんの回答:焦らず「3年後」の幸せを誓って!
精神科医の夏目誠先生が行ったストレス調査によると、最も高いストレスは「配偶者の死」で83ポイント。続いて「会社が倒産した」が74ポイント。KTさんが経験した「離婚をした」は72ポイントという高ストレスです。同じく経験をした「転職をした」は61ポイントで「500万円以上借金をした」ストレスと同じです。
KTさんは、このうち「離婚」と「転職」という高ポイント・ストレスを、ほぼ同時に経験したことになります。それほどのストレスから立ち直るには、3~4年は覚悟したほうがいいと思います。
「このまま無気力状態が続けば廃人のような生き方をすることになるのではないか?」と焦る気持ちはわかりますが、離婚してまだ1年半です。新しい生活を軌道にのせるには、あと2~3年かけるくらいのつもりでいればいいと思います。
私なら「56歳になる頃には何とかするぞ。3年後には笑ってこの状況を人に話せるようになってやろう」と心密かに誓うでしょう。
「心機一転」とは、過去の経験則を御破算にすること
離婚して旦那さんとのしがらみをほどいて自由になり、転職して心機一転、新しい生活に期待に胸を膨らませていらっしゃったのはわかります。
しかし、旦那さんから開放されたからといって、自由の翼を羽ばたかせて力を存分に発揮できるとはかぎりません。ストレスで翼が弱っているのですから。
家では大きな心でお母様のやり方を認めて
離婚後は、生き生きとした人生が待っていると思っていたのに、離婚するまでに負ったストレスのために思うようにならない……その現実の中で、KTさんが家事を担ってお母様の役に立てるのを確認するのは、自己肯定感を得るのにとても良い方法だと思います。
しかし、お母さまには何十年も続けてきた“失敗しない自分のやり方”があります。KTさんのやり方がそれと異なれば、文句の一つも言いたくなるのは当然です。
ここは一つ、KTさんが何でも包める大きな風呂敷のような心で、お母様の信条を逆撫でしないやり方で凌いではいかがでしょうか。
同じ屋根の下でいざこざなく暮らすために、家事に関してだけ、KTさんが自分のやり方を曲げるくらい、たいした問題ではありません。
娘の離婚を恥ずかしいと思う世代のお母様も、内心は娘と孫との生活を喜んでいらっしゃると思います。
新しい職場では経験則を一度手放して
新しい職場でも、KTさんがこれまで培ってきた力がそのまま発揮できるわけではありません。“なかなかうまくいかない”のは仕方がないのです。
これまでの経験から、仕事の面でも「こうすれば、こうなる」と予想はできるようになっていらっしゃるでしょうが、仕事がうまくいくようになるには時間がかかるのも事実です。過去に培った経験が、新しい職場では、かえって邪魔になる場合もあります。
「心機一転」とは、過去の経験則を一度、御破算にする覚悟のことでしょう。
御破算にする覚悟をしても大丈夫です。KTさんの底力はそのくらいで無くなるものではありません。
「ここ数年」を乗り切って幸せを手に入れる!
今は、将来に何の希望も持てないほど無気力なのでしょう。しかし、KTさんは、今日も、親からもらった命の第一線を生きていらっしゃいます。ご自分の人生の最前線を歩いていらっしゃるのです。
離婚後に思い描いていた人生はどんなものなのでしょうか……。“生き生き”ですか。“親子三代仲良く”ですか。“ごく普通のおだやかな暮らし”ですか。
いくつかあるでしょうが、そのうち最も手が届きそうなものだけにフォーカスして、ここ数年を乗り切られてはいかがでしょう。
56歳になったKTさんが「ガハハ」と笑って暮らしている姿をイメージしつつ、そうなれるよう、陰ながら応援しています。
回答者プロフィール:名取芳彦さん
なとり・ほうげん 1958(昭和33)年、東京都生まれ。元結不動・密蔵院住職。真言宗豊山派布教研究所所長。豊山流大師講(ご詠歌)詠匠。写仏、ご詠歌、法話・読経、講演などを通し幅広い布教活動を行う。日常を仏教で“加減乗除”する切り口は好評。『感性をみがく練習』(幻冬舎刊)『心が晴れる智恵』(清流出版)『気にしない練習』(三笠書房)、『心がすっきりかるくなる般若心経』(永岡書店)など、著書多数。
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