50代からの女性のための人生相談・158

人生相談:共有スペースに物が散乱…スッキリさせたい

阿部絢子さん
回答者
生活研究家・薬剤師
阿部絢子

公開日:2023.10.28

「50代からの女性のための人生相談」は、読者のお悩みに専門家が答えるQ&A連載。今回は、76歳女性の「共有スペースに私物を置く夫と娘。片付けたいのに協力してくれない…」という相談に消費生活アドバイザーの阿部絢子さんが回答します。

76歳女性の「共用スペースを片付けたい」という相談

夫79歳、私76歳、娘49歳の三人で暮らしています。現在の家は夫の退職時に建てた家で、それぞれに個人の部屋を作りました。しかし基本的に夫と娘は各自の部屋にいることはなく、掘りごたつのある居間で生活しています。

各自で必要な物も居間の自分の定位置近くの畳の上に置くので、居間はいつも物であふれています。「片付けて」とお願いをしても、居間の隣の和室に移動させるだけで、どんどん共用スペースに物が増えていきます。

最近では二人の衣類や電化製品、娘の趣味の道具や本などが、居間と和室に散在していて、ダイニングテーブルの上も下も手提げバッグやこまごました物でいっぱいです。

それぞれの部屋に物を持っていき、共用スペースはすっきりとした状態に保ちたいのですが、どのようにお願いをしたらいいのかがわかりません。各自の部屋に物を置いてくれるようになるアイディアなどがあれば教えていただきたいです。

76歳女性・Mさん

阿部さんの回答:居間に集まるのは古い習慣!まずは話し合いを

阿部さんの回答:居間に集まるのは古い習慣!まずは話し合いを

昔、私たちの暮らしは家長を中心として家族それぞれが役割分担をして仕事をしながら暮らしを運び、熟し、助け合いながら暮らしを営んでいました。そんな時代の住まい構造は家長が中心であり、家族それぞれの自室などは持てませんでした(例外はありましたが)。

また、一日の仕事が終わっても、夕食後には家族共用の居場所“居間”に集まり、世代の違う家族がそれぞれの手仕事を持ち寄り過ごしていたのです。長い間、私たちの暮らしは家族全員で協力し日々を成り立たせていました。

こうした家長中心の暮らしは、かなり長く続きました。ところが第二次世界大戦の敗戦でアメリカ占領下に置かれた後、高度経済成長期を経て、次第に家長中心の暮らしから個人主体の暮らしへと変化してきました。

それは住まいの構造にも変化として確実に現れていきます。個人部屋の無かった住まいから、家族それぞれが個室を持ち、家でのプライバシーと自由を大切にするという暮らしスタイルが築き上げられ、暮らし自体が大きく変革していったのです。

しかし私たち自身は、この暮らしの形やスタイルの変化をハッキリ意識して日々を送っていたわけでもなかったのです。ようやく最近になり、こうした情報が取り上げられ、一部の人たちが「シンプル暮らし」「快適暮らし」「整理した暮らし」などを目指すようになり、それが心地よいことだと気が付き始めました。

阿部さんの回答:居間に集まるのは古い習慣!まずは話し合いを

でも一緒に暮らす家族の一人が心地よさを目指したいと考えても、他の家族が関心を持たなければ、暮らし全体は心地よさとは遠く、近付けるための努力が必要となるのです。

これまで気付かずに私たちは長く家長中心の暮らしに対する考え方をしてきましたから、暮らしについて家族間で相談や話し合いなどを実行してこなかったのが実情ではないでしょうか。

暮らしについて意識したり関心を持ったり、さらに年齢とともに変革が必要なことなのだとの考えや思いもなく、意識もせずに今までの生活を継続し、日々を送ってきたというわけです。

ですから“暮らしについてどうするか?”などの家族の話し合いはなく、ましてや“家族間でも意識が食い違っていることさえ夢にも思っていない!”というのが一般的ではないでしょうか。

と、ここまで長く暮らしの話をしましたが、私は“暮らしと向き合う姿勢”が欠如していたと言いたいのです。

片付けたい思いを整理してから家族に伝えて

片付けたい思いを整理してから家族に伝えて

そこで、Mさんの相談です。

家は夫の退職時に建てたとのことですが、その際に堀りごたつのある共用スペース“居間”をどのように利用するか、家族で話をしたのでしょうか? もしかしたら、お互いの思いが違っているのかもしれません。

例えば、Mさん以外の家族が“居間を中心とした昔の暮らし”をイメージしているのではありませんか? 居間に集まり、団らんや趣味をして過ごすという……。居間とはその目的を持ったスペースでもあるのですから、個室で一人、趣味を楽しむなどとは考えてもいないのではないでしょうか?

また家を建てた際にそれぞれに個室を作ったとのことですが、Mさんの部屋もあるのでしょうか。

さらにMさんが「片付けて」とお願いしても「どんどん物が共用スペースに溜まっていきダイニングまで進出している」とのことですから、ここで突然、共用スペースの話し合いを持ち出しても、家族が納得して片付けが実行されるのはとても難しいことかと私には思われます。

まずはMさんご自身の「共用スペースを片付けたい!」との思いを整理してみることをおすすめします。片付けたいとの思いの根底に何が潜んでいるのか?です。

例えば、

  • 友人を呼びたいから
  • 来客用の座敷がなく、座敷のような場所にしておきたいから
  • Mんの個室がなく、自分の居場所であるから

などと整理します。その上で、再度正式に家族に共用スペースを整理するMさんの要望を話してみてはいかがでしょうか?

気持ちを整理した上で、家族に納得してもらえるよう要望を伝えるのは、一緒に暮らす家族にとっても、とても大切なことだと私は思います。

ただし、これまでの経緯からしても「期待しないこと」が肝心です。

回答者プロフィール:阿部絢子さん

回答者プロフィール:阿部絢子さん

あべ・あやこ 1945年、新潟県生まれ。生活研究家(消費生活アドバイザー)・薬剤師。家事全般や食品の安全性の専門家として活躍。薬剤師の資格を持ち、今も現役で働いている。


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