山本ふみこさんのエッセー講座 第9期#1
2024.10.312023年07月25日
青木奈緖さんが選んだエッセー作品の紹介とQ&A動画
青木奈緖さんのエッセー講座6期第3回参加者の作品
「家族」をテーマにしたエッセーの書き方を、エッセイストの青木奈緖さんに教わるハルメクの通信制エッセー講座。大切な思い出を形に残すべく取り組む参加者たちの作品から、青木さんが選んだ3つのエッセーをご紹介します。
青木奈緖さんが選んだ3つのエッセー
「青木奈緖さんのエッセー講座」参加者による家族のエッセーです。クリックすると、作品と青木さんの講評をお読みいただけます。
「息子と『炭坑節』」上道弘美さん
2月19日付の『中国新聞』のコラム「天風録」の中に……
「祖母の寡黙とこらえじょう」吉川洋子さん
私には明治28年生まれのおばあちゃんが……
「可愛くしてやって下さい」中田富子さん
夫の生家の兄嫁から、夫に孫息子が結婚するので……
エッセーに関する質問・お悩みに動画で回答
エッセイストの青木奈緒さんを講師に、半年間でエッセーの書き方を学ぶ通信制エッセー講座。
このエッセー講座のテーマは「家族」。日本各地からご参加いただいた30名の皆さんが毎月1本、家族との大切な思い出をエッセーの形に残すべく取り組んでいます。
参加者ひとり一人がエッセーを書くうちに直面する悩みや疑問は、実は、書く人にとって共通する学びの宝庫です。ハルメクでは、月1回青木さんが参加者の質問に回答する動画を制作。現在の参加者が生き生きと学べるように、また、どなたでもご覧になって学びを生かせるように公開していきます。
第6期3回目となる今回の動画では、「エッセーで書ける脚色の範囲」についてお話を伺いました。
書き方の自由度が高いエッセー。その分、無駄をそぎ落とすことが重要
青木さん:今回は、エッセーにおいて「事実とは異なる作り込んだ話」をどの程度まで書いていいのか?
要するに、どこまで盛った話をしていいの? ということをお話ししたいと思います。
まず初めに、エッセーとは何か、改めておさらいをしてみましょう。
『エッセー』とは…
自由な形式で書かれた詩作、意見、見聞、感想などを述べた文章。散文。
私の持つ複数の辞書から引いたところ、大凡このようなことが書かれています。
重要なポイントは、次の2つです。
1 意見、見聞、感想などを自由な形式で述べていること
2 散文
「②散文」から言うと、散文の反対は「韻文(いんぶん)」、即ちポエムです。
ということは、韻を踏んだ文章ではないので、普通の文章を書くということになるでしょう。
次に「①意見、感想などを述べた…」の部分です。
ここで重要になるのが「実体験に基づいた文章だ」とは書かれていない、という点です。
必ずしも実体験を元にしなくてもいい。だから、例えば読んだ新聞の感想を書いてもいいわけです。
また、書きものには「フィクション」と「ノンフィクション」という分け方がありますよね。エッセーは明らかにノンフィクションに近いです。小説はフィクション、創作の世界です。
だからといって、「エッセー=ノンフィクション」ではないし、「エッセーがノンフィクションでなければならない」ということではありません。
つまり、エッセーは「実体験を元にある程度の脚色はして良い」のです。最初に話した「盛る」ということが、エッセーでは許されています。そのため、エッセーは書ける範囲、幅がかなり広いです。
100%見たまま感じたままを書く方もいるでしょうし、80%くらい創作でも、自身があとの20%から再構築していれば構わないと考える方もいるでしょう。読み手側にも、「エッセーは実体験を書いている」と考える人もいれば「少しくらいの脚色はOK」と思う人もいるでしょう。
だから、エッセーはとにかく自由度が高い、なんでも入ってしまう大きな袋のようなものです。
自由な分、書きやすいとも言えるので、書き手には良い点であると言えるでしょう。
では、今度は読み手側から考えてみてどの程度その作品に創作が混ざっているか、「創作の部分を見抜くことができるか」という点がポイントになってくると思います。
どこの部分が創作か明らかに見抜けてしまうものは、良い作品とはあまり言えないと私は思います。
極端な話ですが、「たくさんの宇宙人が出てきて、その宇宙人と私は話をする」という話だとしたら、それはエッセーではなくSFです。かと言って、事実は小説より奇なりで、小説でもこんなに色んなことは重ならないよ、というくらい重なってしまうことが現実で起こりえるのも事実なので、難しいですよね。
脚色が許される範囲は書き手にも読み手にも委ねられているので、作品の完成度を基準に考えてみるのもいいでしょう。
例えば、実際には登場人物が3人だったとしても、登場人物を細かく書いていると本筋まで長くなり過ぎてしまっていたら、潔くカットすることも必要です。
「必要に応じてカットする」ということは、エッセーにおいて作品の完成度にもかかわる大切な「脚色」です。
エッセーは、「とにかく何でも入ってしまう袋」とでも言いましょうか。
必ずしもエッセーは「ノンフィクション」でなければならない、とは限らないので、筆が乗り始めたら一度俯瞰して、無駄な描写がないか判断しましょう。
青木奈緒さんの今月の朗読作品
動画では、さらに詳しいお話や、青木さんの朗読もお楽しみいただけます。朗読するのは、細やかな心配りと構成で読者を作品の世界に惹きこむ「息子と『炭坑節』」(上道弘美さん作)です。
エッセイスト・青木奈緖さんのプロフィール
1963(昭和38)年、東京生まれ。文豪・幸田露伴を曽祖父に、作家・幸田文を祖母に、随筆家・青木玉を母に持ち、自身もエッセイストとして活躍。著書に『幸田家のきもの』(講談社刊)、『幸田家のことば』(小学館刊)他。
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回家族の思い出をエッセーに書き、講師で随筆家の青木奈緖さんから添削やアドバイスを受けます。講座の受講期間は半年間。
2023年3月からは、第6期がスタートしました(受講募集期間は終了しています)。5月からは、青木先生が選んだ作品と解説動画をハルメク365でお楽しみいただけます(毎月25日更新予定)。
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