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- 「オバケのQ太郎とふなっしー」大井洋子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。第8期2回目のテーマは「似ている」。大井洋子さんの作品「オバケのQ太郎とふなっしー」と山本さんの講評です。
オバケのQ太郎とふなっしー
白色のシーツで形を縫製。大きな目とくちびるを描き、外が見えるように少し切り抜く。頭部には、特大プラスチックザルを入れ縫いつけた。
これ、何だと思いますか?
オバケのQ太郎です。着ぐるみを母が着たのだった。
作るのを、中学生だったわたしも手伝った。
郷里では毎年晩秋に敬老会が行われ、地域のお年寄りに喜んでもらえるように、各村の婦人会が出し物を披露してもてなす。
人数の少ない我が村では、普通の盆踊りなどではない、特別な工夫が必要だった。
あの年は、大人気テレビマンガ「オバケのQ太郎」にあやかり、Qちゃんの着ぐるみを着て踊るという奇抜な案が湧いて出たのである。
「オバQ音頭」の曲がかかると客席がざわつき、母達10人のQちゃんが舞台に登場して踊り出すと、大爆笑と手拍子が起きて大いに会場を沸かせたらしい。
母によると、中から外が見えづらいから転ばないように踊るのは大変だったそうだが。
あのころ、在郷の生活を彩るものといえば、地域の行事に参加することくらいだった。敬老会で出し物を披露した母達も、そうして安らぐ機会を得ていたのかもしれない。
愛らしい外見とユーモアあふれるキャラクターで知られる「ふなっしー」。このごろ見かけないが、いつもわたしをほっこりした気持ちにさせてくれた。
母の昔のアルバムを見ていて、ふとQちゃんとふなっしーは似ていると思った。
老人達を楽しませようとした母達の温かさと彼の旺盛なサービス精神が、丸っこい外見と共に重なり合い、見ているだけで笑顔になるところがそっくりだ。
あの日、母達のQちゃんは楽しい驚きと共に、癒しも与えたに違いない。
Qちゃんの着ぐるみを、わたしも一度着てみたかったが母に止められた。
「ザル被ったら、背伸びんようになるから絶対ダメだちゃ」
山本ふみこさんからひとこと
いつも完成度の高い「大井洋子」作品に、わたしはこのたびちょっかいを出しました。
「オバケのQ太郎とふなっしー」の書きだしは、こうでした。
オバケのQ太郎の着ぐるみを着たことがある母。
それを作るのを、中学生だったわたしも手伝った。
そう、書きだしを換える提案をしたのです。
元のままでわるくないのですが、「この手もありますよ」という青ペンを入れてみました。
自らの記憶も踊る、たのしい読書でした。
お母さまの着ぐるみづくりを手伝われる洋子ちゃん、素敵です。
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
次回募集については、2024年8月頃、雑誌「ハルメク」誌上とハルメク365イベント予約サイトのページでご案内予定です。
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