公開日:2018/09/15
大の鉄道好きマンガ家・文筆家のYASCORN(やすこーん)さんが、食べて食べて、また食べる「鉄道ひとり旅」の楽しさをご紹介します。今回は、東京から寝台特急に乗り込んで、香川県・愛媛県を食べながら大移動。鉄道旅ならではの食と絶景をご堪能あれ。
私が鉄道好きになったきっかけは寝台列車(ブルートレイン)でした。
11年前に東京〜熊本間で乗車した「寝台特急はやぶさ」の個室が、まるで動くホテルのようですごく楽しかったのです。それ以降、寝台列車・夜行列車に乗る旅が増えましたが、ここ10年でほとんどが廃止されてしまい、現在定期運行している寝台列車は「寝台特急サンライズ」のみとなっています。
夜、ベッドに寝転がりながら月や星を眺め、お酒を飲んだり考えごとをしたりする楽しさは、何にも勝ります。
今回の旅はその寝台特急サンライズからの出発です。
東京駅を22時ちょうどに出発する寝台特急サンライズは、東京—高松を結ぶ「サンライズ瀬戸」と東京—出雲市を結ぶ「サンライズ出雲」が連結して14両編成で走ります。
途中の岡山駅で7両ずつに切り離され、それぞれの目的地に向かうのです。
サンライズでは車内販売はありません。ソフトドリンクの自動販売機はありますが、食べ物やお酒は買ってから乗車しないと大変なことになります。初めて乗車した時は、心配で買い込みすぎていた私でしたが、最近はちゃんと食べ物・お酒ともに、食べきれずその後も旅先で持ち歩く……ということはなくなりました。
寝台特急サンライズは、基本2階建てで個室が中心。様々なタイプのお部屋があり、最も部屋数が多いのが、1階と2階にそれぞれ設定された「ソロ・シングル」です。
いつもその2階の個室を取っていましたが、サンライズへの乗車が10回を過ぎた頃から、1番のお気に入りになったのが「シングルツイン」。こちらが今日の私の部屋です。
シングルツインは1人での利用でも、2人で利用しても可。(料金は変わります)
上下2段ベッド仕様になっていますが、なんと1階部分の布団やシーツ、真ん中のマットを取ると、このようなソファセットに早変わり!
シングルツインを1人で利用する際は、ソロ・シングルよりちょっとだけ割高ですが、差額は2000円足らず。1階でパソコンを広げつつ仕事したり、お弁当を広げてお酒を飲んだりできる上、眠くなったらそのまま2階に上がって寝られるという、面倒くさがりな私にはぴったり。
さて、明日は岡山で下車しないとならないので、今日は早めに寝ます。
実はこの日、サンライズ瀬戸は満席でした。しかしサンライズ出雲の方は、あと数席残っていたので、岡山駅までサンライズ出雲に乗車。快速マリンライナーに乗り換えて瀬戸大橋を渡り、四国に入ることにしたのです。
香川県に来たら、まずは讃岐うどんです。
昔から大好物で、鉄道好きになる前から讃岐うどん巡りの旅に来ていました。坂出駅で普通列車に乗り換え、まずは讃岐府中駅で下車します。ここから15分ほど歩いて創業約60年の「山下うどん店」へ。
少しわかりにくい場所にある上に、初めてだと入るのに躊躇するかもしれません。
最初に「冷やの小」と注文すると、茹でてから器に入れたうどんを渡してくれます。
こちらは後会計で、出汁は自分でかけるセルフサービス。ネギやしょうがもセルフです。しっかりと、いりこの効いた出汁に、弾力のある麺が胃にちゅるんっと滑り込みます。打ちたての朝イチのうどんは格別です。
さて、更に10分ほど歩いて、今度は「讃岐うどん がもう」へ。
お店に入って麺を注文、こちらも同じく出汁は自分でかけるセルフサービス。ちなみに私は冬でも冷冷(麺も出汁も冷たい)、もしくは冷温(麺が冷たくて出汁が温かい)でいただきます。ここも大人気で行列ができることも多いです。
鴨川駅から松山方面を目指し、まずは普通列車に乗車。丸亀駅で一度降りました。
こちらと高松駅のみで売っている駅弁「丸亀名物骨付鳥弁当」を買いにきたのです。骨付鳥とは、「香川県丸亀市発祥の名物料理。鶏の骨付もも肉をニンニクなどが効いたスパイスで味付けし、まるまる1本焼き上げたもの」と駅弁の説明書きにもあります。
次は新居浜駅に移動。路線バスに乗って「マイントピア別子」に向かいます。マイントピア別子は日本三大銅山で「東洋のマチュピチュ」と呼ばれる別子銅山の施設跡などがあるテーマパーク。砂金採り体験などのアミューズメントや食事処も多くあります。
その中に、流しそうめんのコーナーがありました。実は流しそうめん初体験。流れてくるそうめんを必死で受け止めては食べ、受け止めては食べ……美味しくて楽しいのですが、お腹いっぱいになってもまだまだ流れてきます。1人分が多いような……。
係りの人に「もう限界です」と伝えに行くと、「終わったら席を離れてくれれば止めますよ」と言われました。そうだったんですね……延々食べ続けるところでした。
さて、満腹すぎて眠くなりつつ、マイントピア別子から更にツアーバスに乗って「東洋のマチュピチュ」見学に行きます。こちらのコースは約2時間。ガイドさんも同行するので、なんの予備知識がない私でも気軽に参加できました。
別子銅山は愛媛県新居浜市の山麓部にあった銅山で、1690年に発見され、翌年から1973年までに約70万トンの銅を産出しました。
標高750mの山中にある東平(とうなる)は、1916年から1930年の間、別子銅山の採鉱本部が置かれた場所。そこで働く人々のために社宅や小学校、劇場などが建てられて、最盛期は約5000人が暮らしていたそう。1968年に休止するまで町として大変栄えたとか。
ここでそんなに大勢の人が暮らしていたとは、今ではとても想像できません。
山岳鉱山鉄道としては日本初の別子鉄道・上部線。ガラスの板を通して向かい側の山を眺めると、かつて鉱石輸送や旅客輸送を行っていた経路がわかります。
1893年に標高800m以上の地点で、切り立った断崖に沿って線路が敷かれていたとは…考えただけで足がすくみます。
帰りは路線バスの本数が少ないのでタクシーで新居浜駅まで移動。
列車を待つ間にちょっと時間があったので、四国の駅のパン屋さん「ウィリーウィンキー」でおやつタイムです。こちらのほんのり甘くておいしい四国の形の「しこく88パン」は、高知のぼうしパンに次ぐ私のお気に入りのパンです。
ここからしばらくの間、列車旅。特急列車で松山へ向かいます。
今治近くになると海が見えてくるので、車窓を楽しみながら駅弁を食べることにします。「丸亀名物骨付鳥弁当」は紐を引っ張ると加熱され、温められる方式の駅弁。ちゃんと鷄油もついているので、付けながら食べると味も風味も格段に増します。スパイスとジューシーな鶏肉の旨味がやみつきになりますよ。もちろんビールを買うのを忘れずに!
松山から先は普通列車で更に進みます。降りたのは有名な下灘駅。
目の前に広がる海を見渡せる、開放感ある無人駅です。よかった、間に合いました。
見たかったのはこの見事な夕日!
駅越しに地平線に太陽が沈んでいくのを眺めていると、なんともいえない旅情を感じます。初めて見た時に感動し、以来何度来たことか。
そして何度見ても同じ感情が蘇ってくるのです。
今回はけっこうな大移動。
サンライズは遅れることもありますし、うどん屋さんは大行列している時もあります。
下灘駅の夕日は、夏は日の入りが遅いですが、冬になるとどんどん時間が早くなります。
無理せず、臨機応変がきくように計画を立てましょう。
次回、「絶景と温泉・讃岐〜伊予旅[後編]道後温泉入りすぎ」に続きます。
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