湿疹・ぶつぶつ・水ぶくれ・皮剥け…つらい症状を予防

手のひらがかゆい原因は病気?ストレス?対処法を解説

髙橋 謙
監修者
たかはし皮膚科クリニック
髙橋 謙

公開日:2023.11.15

手のひら・手の甲・指がかゆいのはなぜ?考えられる皮膚トラブルや原因、全身性の病気について詳しく解説!女性に多く見られる「手湿疹」についてもご紹介します。かゆみは放置すると悪化する可能性もあるため、早めの対処・予防が肝心です。

手のひらがかゆい│考えられる皮膚トラブル・疾患

手のひらがかゆい│考えられる皮膚トラブル・疾患

毎日の動作で常に使用する「手(手のひら・手の甲・指先)」は、乾燥や摩擦、水濡れなどさまざまな外部刺激を受けるため、かゆみなどのトラブルが起こりやすい部位です。

ここからは、「手のひらがかゆい」というときに考えられる皮膚トラブルや疾患について詳しく解説します。

手湿疹

手湿疹は、水仕事や洗剤などの薬剤に頻繁に触れることで、手の皮膚のバリア機能が低下して手のひらや手の甲、指に湿疹やひび割れが起こる病気のこと。手湿疹は、主婦など女性に多く見られることも特徴の一つです。

手湿疹については、後の項目で詳しく解説します。

汗疱(かんぽう)・異汗性湿疹(いかんせいしっしん)

汗疱(かんぽう)とは手のひらや手指、足底に水疱のみが出現するもので、異汗性湿疹(いかんせいしっしん)とは、これにかゆみ・湿疹反応を伴うものをいいます。

軽い場合は時間の経過によって水疱が破れて皮が剥け、2~3週間ほどで自然に治ります。

汗疱の原因は明らかではありませんが、汗をよくかく人にみられることが多く、汗・洗剤・化粧品・金属などの刺激がきっかけになって発症すると考えられています。

接触皮膚炎(かぶれ)

接触皮膚炎は、原因となるなんらかの物質が皮膚に触れたことが刺激となり、かゆみを伴う湿疹や紅斑が起こる病気です。アレルギー反応の一環として同様に出てくるものもあります。

「かぶれ」とも呼ばれ、ひどい場合は腫れ上がったり、水疱ができたりすることもあります。

  • 化粧品や香水
  • 洗剤
  • 医薬品
  • 植物
  • 動物
  • 金属(アクセサリーなど)
  • 衣類

接触皮膚炎は上記のように、身の回りの多くのものが原因となりえます。放っておくと重症化する可能性もあるため、早めに皮膚科を受診しましょう。

寒冷蕁麻疹(かんれいじんましん)

寒い季節や冷たい水などに触ったときに手がかゆくなる場合は、寒冷蕁麻疹(かんれいじんましん)の可能性があります。

寒冷蕁麻疹は物理性蕁麻疹の一種で、寒さや冷たさの刺激に反応してかゆみが起こることが特徴です。手の甲や頬に出やすいといわれ、皮膚に境界線のはっきりしたボコボコ、ブツブツした膨疹(皮膚の盛り上がり)ができます。

寒冷蕁麻疹は現れ方にによって、冷たい水や氷を触ったときに、触れた一部分だけに症状が出る「局所性寒冷蕁麻疹」と、体が冷えることで全身に症状が出る「全身性寒冷蕁麻疹」の2種類に分けられます。

アトピー性皮膚炎

手や指のかゆみは、アトピー性皮膚炎が原因になっている可能性もあります。

アトピー性皮膚炎とは、皮膚のバリア機能低下により、かゆみを伴う湿疹が起こる病気です。良くなったり悪くなったりを繰り返すという特徴があります。

皮膚のバリア機能が弱い人や、もともとアレルギーを起こしやすい体質の人(アトピー素因)の人に多く見られます。

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は、手のひらの手首に近い部分や足の裏に水疱・膿疱(膿のたまった水疱)・鱗屑(皮が剥けてカサカサした状態)が起こり、かゆみや痛みを生じる病気です。

爪周辺に起こると、爪が変形したり、脱落したりすることも。原因ははっきりわかっていませんが、扁桃肥大や歯科金属、鼻や耳への細菌感染、喫煙などが影響していることもあります。

手白癬(てはくせん)

手白癬(てはくせん)とは、手に起こる水虫のことです。かゆみは強くなく、手のひらの皮が厚くなり、カサカサした皮剥けが起こり、粉を吹くこともあります。

水仕事の多い人によく見られ、手白癬の人は足にも白癬があることが多いです。

皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)

発疹や湿疹など目に見える症状がないのに手のひらがかゆい場合、皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)の可能性が考えられるでしょう。

皮膚疾患は多くの場合、赤みや発疹など目に見える症状が起こりますが、皮膚掻痒症は発疹がなく、かゆみだけがある病気です。

陰部など体の一部にかゆみが起こる場合と、全身にかゆみが起こる場合があります。

皮膚の乾燥が原因となっていることもありますが、食品や薬剤性、心因性、内臓疾患の影響などの場合もあるため、一度病院を受診して診てもらいましょう。

手のひらがかゆい│考えられる全身性の病気

手のひらがかゆい│考えられる全身性の病気

なんらかの病気が、手のひらのかゆみにつながっていることもあります。

手足口病

手足口病は、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスが原因で発症するウイルス性の感染症で、手のひら、足の裏、口の中に発疹が起こります。皮膚に起こった発疹は、かゆみや痛みを伴うこともあります。

子どもによく見られますが、大人もかかることがあり、子どもよりも症状が重くなりやすいです。

全身の倦怠感、関節痛、筋肉痛、悪寒などが起こり、発疹の痛みも大人の方が強く出る傾向にあります。

多汗症

多汗症は、ストレスや緊張などが引き金となり、異常な量の汗をかく病気です。手のひらや足の裏、脇の汗が増加するケースが多く見られ、汗が皮膚への刺激となってかゆみにつながることがあります。

肝臓の機能低下(肝炎・肝硬変・肝がんなど)

肝炎・肝硬変・肝がんなど病気によって肝臓の機能低下が起こると、ビリルビンの処理ができなくなり、体内にビリルビンが過剰にたまった状態になります。

ビリルビンは皮膚の末梢神経を刺激するため、手のひらなどにかゆみを生じます。

かゆみの他にも黄疸(皮膚や目の粘膜が黄色になる)、倦怠感、むくみ、吐き気、発熱などが見られる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

職業病や女性に多い「手湿疹」について

職業病や女性に多い「手湿疹」について

手湿疹は、手の皮膚トラブルとして多く見られる疾患です。ここからは、手湿疹について詳しく解説します。

手湿疹(主婦湿疹)とは

手湿疹とは、手のひら・手の甲・手の指にかゆみやひび割れ、水ぶくれ、赤みのある腫れなどが起こる病気です。

ブツブツと発疹が出ることもあれば、広範囲に広がることもあり、症状の現れ方はさまざま。悪化すると、皮膚がただれたり、割れたりして痛みや出血が起こることもあります。

日本皮膚科学会が公表する「手湿疹診療ガイドライン」によれば、職業性皮膚疾患として手湿疹が起こる頻度は高く、美容師や理容師・看護師・調理師といった仕事についている人に多く見られるといいます。

また、女性は家事などで水仕事をする機会が多く、男性より女性の方が罹患率が高いことも特徴です。このことから、手湿疹は「主婦湿疹」とも呼ばれています。

手湿疹は症状の現れ方によって、以下の5つの分類があります。

  • 角化型手湿疹
    手のひらの皮膚角質が分厚くなり、ひび割れやボロボロ剥がれたりする
  • 進行性指掌角皮症
    皮膚が硬くなり、手のひらの乾燥、ひび割れ、指紋消失などが起こる
  • 貨幣状型手湿疹
    貨幣ほどの大きさの円形に湿疹が現れる。強いかゆみが特徴
  • 汗疱型手湿疹
    手のひらや足の裏に直径2~5mmほどのの小さな水疱が起こり、それが刺激によって手の甲や指へ広がってかゆみを伴う湿疹になった状態
  • 乾燥・亀裂型手湿疹
    手のひらや指全体に乾燥や亀裂が起こる手湿疹で、皮膚のバリア機能低下が主な原因。水疱はできず、冬場に悪化することが多い

手湿疹の種類と原因

手湿疹は、大きく以下の4種類に分けられます。

  • 刺激性接触皮膚炎
    手湿疹の7割を占める。皮膚のバリア機能が弱い人・皮膚が乾燥しやすい職業や環境の人・アトピー性皮膚炎の人に起こりやすい。洗剤や薬品、食品などが刺激になって起こる事が多い
  • アレルギー性接触皮膚炎
    なんらかの物質に対してアレルギー反応が起こりやすい状態のとき、同じ物質に触れることで発症する。ゴム製品、金属、植物(ウルシ、サクラソウなど)、染髪料の成分などが代表的なアレルギーの原因
  • たんぱく質抗原に対する接触皮膚炎
    食品や動物のフケや尿、花粉、ラテックスといったアレルゲンが皮膚に触れることでアレルギー反応が起こり発症
  • アトピー型手湿疹
    アトピー性皮膚炎の症状の一つとして起こる手湿疹のこと

上記の手湿疹には感染性はなくうつらないものの、掻きむしるとそこから細菌が入り込み、感染性のある合併症につながることもあります。

また、原因となる物質に触れる生活をしていると、症状を繰り返しやすいです。つらい症状を繰り返さないためにも、治療や対策が大切です。

手のひらがかゆいときの対処法・予防法

手のひらがかゆいときの対処法・予防法

ここからは、手のひらがかゆいときの対処法・予防法についてご紹介します。

ハンドクリームや手袋で保湿する

手のひらは水仕事やアルコール消毒、摩擦など、度重なる刺激を受ける部分ですが、手のひらは皮脂腺がないため、乾燥が起こりがちです。

乾燥はかゆみや炎症、ひび割れにつながるため、保湿効果の高いハンドクリームやハンドジェルを使って手のひら・手の甲・指先など全体的に保護しましょう。

外出時には手袋をするのもおすすめです。空気が乾燥する冬場はかゆみにつながりやすいため、しっかりとケアしましょう。以下は、症状別のおすすめ成分です。

  • かゆみ、カサカサ、乾燥が気になる場合……ヘパリン類似物質、セラミド、ヒアルロン酸、グリセリン、尿素(傷がある場合はしみるため尿素はNG)など
  • ひび・あかぎれがある場合……グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、dl-カンフルなど

ただし、ハンドクリームでできるのは治療ではなく、予防です。すでに湿疹やかぶれがある場合は、皮膚科を受診し、ステロイドなどが配合された治療薬を使って治療を行いましょう。

水仕事のときはゴム手袋やビニール手袋を着用する

炊事や洗濯など水仕事が多く、洗剤を使用する主婦の人は、日常的に手の皮膚に刺激を受けています。

洗剤の刺激が手のひらのかゆみにつながっている可能性もあるため、食器洗いなど水仕事をするときは、ゴム手袋やビニール手袋を着用するのがおすすめです。

ラテックス(天然ゴム)アレルギーがあり、ゴム手袋でかぶれてしまう場合は、ラテックス製ではない手袋を選んで使用しましょう。

また、水仕事で手が濡れた場合はそのままにせず、そっとタオルを肌に当てて水分を吸収させるように水分を吸い取りましょう。

手を清潔な状態に保つ

手のひらは汚れや汗がたまりやすい部分です。

汚れや汗が刺激となってかゆみにつながることもあるため、手が汚れる作業をしたときや汗が気になるときは、こまめに手を洗うようにしましょう。

手洗いのときは水もしくはぬるめのお湯で洗う

高い温度の温水は、皮膚を乾燥から守っている皮脂まで洗い流してしまうため、手を洗うときは冷た過ぎない水かぬるま湯にしましょう。

手洗い石鹸やハンドソープの洗い残しがあると手荒れの原因になるため、しっかり洗い流すことも大切です。

市販薬を使用してかゆみを抑える

手のひらに強いかゆみがある場合は、かきむしって悪化させないためにも、市販薬を使用してかゆみを抑えるのも有効です。

かゆみや炎症を抑える薬としては、ステロイド外用剤(塗り薬)があります。

ステロイド外用剤を使用する際は、症状に合ったランクのものを使うことが大切です。ランクの弱いものを長期間使い続けると、症状を長引かせてしまうことがあります。薬剤師や登録販売者に症状を伝えて、相談してみるといいでしょう。

市販薬を使って5〜6日ほど立っても改善しない場合は、皮膚科を受診しましょう。

※効果には個人差があります。試してみて異変を感じる場合はおやめください。

手のひらのかゆみで病院を受診する目安は?

手は日常的に刺激を受けるため、かゆみを生じやすい部位です。しかし、なんらかの病気がかゆみの原因になっている可能性もあります。

  • かゆみだけでなく湿疹など表皮に変化がある
  • 皮膚が黄色っぽくなった
  • 発熱などの全身症状がある
  • 市販薬を5〜6日ほど使用しても治らない・悪化する

上記のような場合は、早めに病院を受診して詳しく見てもらいましょう。

手のひらのかゆみは早めに病院を受診して悪化を防止!

手のひらにかゆみが起こる原因や病気は、さまざまなものが考えられます。治療せずに放置すると、掻きむしることで症状が悪化したり、合併症を起こしてしまったりすることも。

また、全身性の病気が原因で手のひらのかゆみにつながっていることもあります。早めに病院を受診して、悪化を防ぎましょう。

監修者プロフィール:髙橋 謙さん

髙橋 謙さん

1999年大阪医科大学(現大阪医科薬科大学)卒業、東京女子医科大学循環器内科へ入局。その後、実家クリニック(元髙橋内科皮膚科クリニック、現在は閉院)の継承、京大病院総合診療科、関西電力病院総合内科、髙橋内科皮膚科クリニック、大阪市立総合医療センター皮膚科を経て、2015年12月にたかはし皮膚科クリニックを開業。これまでの豊富な経験を生かし、現在は1日当たり80~130人の患者さんの診療にあたる。

■もっと知りたい■

ハルメク365編集部

女性誌No.1「ハルメク」の公式サイト。50代からの女性の毎日を応援する「観る・聴く・学ぶ・つながる」体験型コンテンツをお届けします。
会員登録をすれば、会員限定動画を始めさまざまな特典が楽しめます!

マイページに保存

\ この記事をみんなに伝えよう /

みんなのQ&A みんなのQ&A

いまあなたにおすすめ

注目の記事 注目の記事

365会員特典

365会員に登録する
無料会員に登録する
  • facebook
  • twitter
  • instagram
  • line

LINE友だち追加