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- 古代の女王・名草戸畔(なぐさとべ)三社巡り
古事記や日本書紀に記されている神武東征。初代神武天皇が奈良をめざして進軍しつつ、日本各地を治めていく様子が描かれています。その中に敵として登場するのが女王・名草戸畔。彼女の頭、胴、足、それぞれがおさめられたと伝わる神社を巡ってみました。
女王をめぐる奇妙な伝説
和歌山市から海南市にかけて広がる名草山。西国三十三所第二番札所として知られている紀三井寺が建つ山です。
古代、このあたりは名草戸畔(なぐさとべ)という女王が治めていた集落でした。日本書紀には、
「軍、名草邑(なくさのむら)に到りて、則ち名草戸畔といふ者を誅(つみな)す」
との一文のみがあり、女王・名草戸畔は一帯の民を苦しめていた賊として神武軍に殺されたことになっています。
ところがその後、名草戸畔の体は頭、胴、足に分けられ、ご神体として名草地方の三つの神社に大切にお祀りされることとなりました。
しかも現在に至るまで「頭の神様」「お腹の神様」「足の神様」として篤く信仰されているのです。なんとも奇妙な話です。
一冊の本との出会い
ずっと不思議だと思い続けていた名草戸畔の言い伝え。そんな中、出会ったのがなかひらまいさんの著書『名草戸畔 古代紀国の女王伝説』でした。
なかひらさんは文献だけではなく、名草地方の口伝にも重きを置き、真実の名草戸畔の姿をあぶりだしていきます。そして立ち現れたのは賊ではなく、民に慕われる女性首長の姿でした。
名草戸畔は自分の領地を守るため神武軍と激しく戦い、激戦の最中に戦死した、という説と、戦わずして神武軍に降伏することにより民を守った、という、二つの説があります。
長い年月を経た現在、真偽のほどはわかりませんが、いずれにしても神武軍から認められて自治を守ったことに間違いはなさそうです。
名草戸畔ゆかりの地を訪ねて
亡くなった後、民に慕われていた名草戸畔の体は三つに分けられ、それぞれ守り神としてお祀りされました。今も海南市に残るその三つの神社を訪ねてみました。
三社とも町を見下ろす山の中腹にあり、おおらかに町を見守る神様の視線を感じるような風景でした。
古代はつながっている
想像もつかないほど時間の隔たりのある古代。歴史なのか神話なのかもわからず、私にはまったく実感を持てないものでした。
でも、なかひらまいさんの著書を読み、実際に三社に足を運んでみると、確かにこの地に住んでいたであろう人たちの息吹を感じ、古代から現代までが地続きになっているのだと実感することができました。
歴史の面白さを改めて認識した神社巡りでした。
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