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- エッセー作品「お山巡り」相良章子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。今月のテーマは「誕生日」です。相良章子さんの作品「お山巡り」と山本さんの講評です。
お山巡り
朱色の鳥居がずらりと並び、山の方まで続いている。
ここ、伏見稲荷の光景はいつ見ても圧巻だ。
幼い頃は、お稲荷さんが怖くて、朱色の鳥居を見るたびに足がすくんだ。
きっと、狐の嫁入りや狐つきの人間の物語を聞かされてゾクッとした感情がそうさせたのだと思う。
大人になっても、その感情は心のどこかに残っていて、誰かに誘われなければ、自らすすんで行くことはなかった。
それなのに、今年になって、何故だろう、とつぜん伏見稲荷へ行き、お山巡りをしてみたくなった。
勝手な言い方になるけれど、伏見に呼ばれている気がした。
標高233メートルは決して高くはない。
しかも、お山巡りをする間は、清々しい神様のエネルギーを浴びることが出来ると、ネットに出ていた。
これっていいかも!と、元気にお山巡りをした。梅雨の短い晴れ間で、緑は生き生きとし、朱色の鳥居は美しく輝いていた。
ただ、無心に歩き続け、あと少しで頂上という時、ピキピキと右足の太股が悲鳴をあげたのだ。
少しショック。
毎日、100回のスクワットと30分の早歩きで鍛えたつもりだったのに。
足りなかったのかな……。
やっぱり年には勝てないなぁと思いつつ、又体力をつけて再チャレンジしたい。
体力増進の目標を兼ねたお山巡りなんて、お稲荷さんには申し訳ないけれど、それくらいの事は、神様も許してくれるに違いないと思っている。
年を取ると角が取れて丸くなるという。
だけど、本当は高齢者にも言いたいことは沢山あるのに言わないだけだろう。余計なことを言わず、笑顔でいる事で自分を保っているのだ。
心のリセットも必要だ。その場所こそ、私には伏見稲荷だったのだろう。
山本ふみこさんからひとこと
静かな旅をするような気持ちで読みました。ほんとうに豊かな時間でした。
伏見稲荷へ行き、お山巡りをしてみたくなった、という「相良章子」の、このたびのお山巡りに焦点を合わせるため、親御さまの介護のはなし、ご自身の人生観を割愛することを(青ペンで少し)おすすめしました。
何もかも書こうとしない。これも、書き手に求められる「覚悟」です。
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
募集については、2024年1月頃、雑誌「ハルメク」誌上とハルメク365イベント予約サイトのページでご案内予定です。
■エッセー作品一覧■
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