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- エッセー作品「風」宮本昌子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。今月のテーマは「なぜ」です。宮本昌子さんの作品「風」と山本さんの講評です。
風
わたしは小さなころから歌や踊りの好きな子供であったそうだが、長い間気にかかっている歌がある。
「だれが風をみたでしょう」ではじまる子供の歌である。(タイトルも同じ)<註>
発表されたのは大正10年というからおそらく姉たちが歌っているのを聞き覚えたものと思う。
その歌を今でも大切にしているのである。不思議だ。
不思議なことなら他にもある。
優しい詩だからおそらく女の人の作だろうと思っていたら西條八十作詞とのこと……氏は当時は、女の子達のために少女小説という分野の読み物を世に送り出していてわたしも熱心な読者であったから、なるほどと納得した。
後になってこの歌はイギリスの詩人クリスティーナ・ロセッティの詩を西條八十が訳したものであることも知れた。
ちっちゃいけど、知りたい気もちが詰まっていそうだ。
詩人である西條八十がこんな繊細な詩にかかわることもロセッティに傾倒していたことも、不思議ではなかった。
中学生になりこの歌が子供の歌の本に入っていたり大人の歌集にも抒情歌というたぐいとして入れられることがあることも知った。
その頃もわたしにとっては大切な歌で、心の中の少し別のところにしまってあることにかわりはなかった。
詩については子供の頃は「そうねえ、だれも風をみたことないね。
そのとおり」とあたりまえのことを自然に歌ってるのがうれしかった。
大人になって、その風が木の葉をふるわせたり、木立の木と深くかかわる様子を頭の中で思い描けるようになった。
その風に色や柔らかさも加わり、風が生きて木の葉っぱやその内面に触れる様子が、感じられるようになったのだ。
風の姿が見えるようというのは少し変ですが天女の羽衣のようにしなやかに対話する様子が感じられる。
以前はこの歌は自分だけのものと思って人様に聞かせたことは一度もなかったのですが、これからは、その様子を心にえがきながら、感じながら不思議な気持ちそのままで自由に歌えるといいかなと思っているところです。
<註>だれが風をみたでしょう 西條八十訳詞
山本ふみこさんからひとこと
ひとつの歌をずっと大切にしておられることに、打たれました。
子どものころの思いと、大人になってからの思いが、少しずつ変化してゆくことも、自然に描かれています。
この随筆を子どもが読んだとしたら、どう感じるでしょう。
「大人になるって、素敵だな」そう感じるのではないでしょうか。
(これこそ、大人が後輩たちに示したい有りようではないでしょうか)
「註」として、「玉木裕子」は歌の題名と作詞者とともに、歌詞もつけてくださっています。
歌詞については「註」からはずしました。歌詞をつけますと、「一般社団法人 日本音楽著作権協会(JASRAC)」に著作権の手続きが発生するからです。
ご興味のある方は、それぞれの手段を選んで歌詞を、さがしてみてくださいましね。
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
募集の詳細は、雑誌「ハルメク」2023年8月号とハルメク365イベント予約サイトをご覧ください。
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