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- プラゴミ大国・日本「脱プラ」で海洋汚染にストップを
レジ袋や食品包装、ストロー……。普段使っている使い捨てプラスチック製品が、海を汚染し生態系を脅かす存在になっています。2019年3月、国連環境総会では世界160か国が2030年までに大幅削減を進めることで合意。私たちに何ができるでしょうか。
魚のお腹の中にプラスチックが……
私たちの身の回りには、プラスチック製品があふれています。レジ袋、飲料用ペットボトルにはじまり、食品の包装材や歯ブラシなど、プラスチックを使わない日はほとんどないといっても過言ではありません。しかし、このプラスチックが今、地球環境の持続可能性の観点から大きな問題になっています。
私たちが使った生活上のプラスチックは、ごみとして集められ、基本的にはリサイクルされます。しかし、すべてがきれいにリサイクルされているわけではありません。リサイクルされなかったプラスチックは、年月をかけて自然の中に5㎜以下の微細なプラスチックとなって残ります。これが近年、環境汚染物質として注目されている「マイクロプラスチック」です。
このマイクロプラスチックは海に溜まりやすいものです。海の中でそれを魚が食べ、お腹の中に溜まっていることが、近年のさまざまな研究で明らかになっています。2015年には東京湾のカタクチイワシの8割の消化管から、マイクロプラスチックが見つかっています。
食物連鎖により海洋全体に汚染拡大の懸念も……
東京大学海洋アライアンス上席主幹研究員の保坂直紀さんによれば、海の中に生息するプランクトンが、マイクロプラスチックを食べ、このプランクトンを魚が食べ、その魚をさらにサメやクジラなどの大きな生き物が食べるという食物連鎖を通じて、海洋生物全体にマイクロプラスチック汚染が広がっていく可能性があるといいます。
栄養のないマイクロプラスチックをプランクトンが食べることで、発育不良になって生態系のバランスが崩れたり、マイクロプラスチックが生きものの体内に入ることで、プラスチックの表面に付着した有害物質が体内に取り込まれたり、プラスチックそのものに有害物質が入っていることもあります。実際に、魚や貝、水鳥など体内から、プラスチックや、そこから溶け出したとみられる有害物質が見つかっています。(参考:保坂直紀上席研究員・東京大学海洋アライアンス「海のマイクロプラスチック汚染」)
マイクロプラスチックの表面に付着し、生き物の体内に取り込まれる有害物質の中には、公害病であるカネミ油症事件の原因となったPCB(ポリ塩化ビフェニル)もあるそうです。現在PCBの使用は禁止されていますが、環境中には微量であるものの残っており、それがマイクロプラスチックに付着して高濃度に濃縮されて、生きものの体内に取り込まれることが指摘されています。(参考:川端裕人・NATIONAL GEOGRAPHIC「研究者・高田秀重研究室に行ってみた―第1回忍び寄るマイクロプラスチック汚染の真実」)
2016年1月に開催されたダボス会議(世界経済フォーラム)では、2050年までに海洋中に存在するプラスチックの量が、地球の魚の量を超過するとの試算が報告されており、事態はあまりにも深刻です。
日本は、プラスチックごみの量が世界ワースト2位
海のプラスチック汚染の発生源となっているのが、人間のプラスチックの“使い捨て”文化です。私たちが、何気なく使っているプラスチックがいかに過剰かを改めて考えてもらうために、インターネットメディア・バズフィードのステファン記者のレポートをぜひ、ご覧になってほしいと思います。(参考:2018年6月12日Buzz Feed Stephen LaConte記者「人間が過剰包装で無駄なごみを出しすぎなのがわかる19の証拠写真」)
使い捨て文化といえば、まず第一に米国が思いつきます。しかし、実は日本も負けてはいません。国連環境計画(UNEP)の2014年のデータによれば、人口1人あたりの日本のプラスチックごみの量(廃棄量)は、ワースト1位の米国に次いでワースト2位です。産業界全体が脱プラを目指し、私たち消費者ができるだけプラスチックを使わない循環型社会へのシフトが必要です。
日本国内でリサイクルできるような方法は?
「どうせ燃やされたり、リサイクルされるんだから、そんなに脱プラを叫ばなくてもいいんじゃない?」という声もありそうです。確かに、私たちがごみとして捨てたプラスチックは、各自治体のルールに従ってリサイクルにまわされ、熱エネルギーや、再びプラスチックとして再利用されています。しかし、残飯などの汚れを取り除いたり、分別したりする作業が大変なことから、これまで日本は、中国にプラスチックごみを輸出し、リサイクル処理をしてもらっていました。
ところが、輸出先の中国でも、日本をはじめ先進国から輸入したプラスチックごみの処理に手間がかかりすぎ、またリサイクルしきれないプラスチックから有害物質が発生するという問題が起きてしまいました。さらに中国国内での使い捨て文化も進んでしまい、中国は日本をはじめ先進国からのプラスチックごみの輸入をやめることにしたのです。(参考:2018年5月9日NHKクローズアップ現代「ペットボトルごみがついに限界!?~世界に広がる“中国ショック”~」)
中国の輸入禁止を受け、同じにように先進国のプラスチックごみを受け入れてきたマレーシアなども輸入禁止を決定。つまり、どの国も自国内でプラスチックを減らし、リサイクルをしていかなければならない必要性に迫られている、というわけなのです。
欧州ではストロー、マドラー、プラスチック綿棒などの使用が禁止
こうした事態を受け、世界各国が脱プラスチックに向けての動きを加速させつつあります。EU議会はすでに、プラスチック製品の使用を禁止する法案を可決。ストローやプラスチック綿棒、食器、マドラー、風船につける柄など、日常的に使われるプラスチックが禁止されることになっています。(参考:2018年10月25日・BBCニュースジャパン「欧州議会、使い捨てプラスチック禁止法案を可決」)
日本政府も、ようやく最近、脱プラスチックに向き合うようになってきました。環境省の諮問機関「中央環境審議会」は2019年3月26日、有料レジ袋の義務化などによって2030年までにプラスチックを25%削減する「プラスチック資源循環戦略案」を提示しました。政府はこの案をもとに、プラスチック資源循環戦略を策定し、2019年6月に大阪で開催されるG20に示す予定です。
サステイナブルに「ごみを減らす暮らし」を楽しむ
私たち一人ひとりができることは何でしょうか。近年、この問題を受けて主に東南アジアを中心に盛り上がりをみせているのは、「プラごみを減らす生活」です。2017年10月に、国連から「Sustainable development award」を授与されたクレア・サンスロットさんは、今マレーシアで「THE HIVE(ハイブ)」というプラスチックを使わないオーガニック雑貨店を経営しながら、「ごみを減らす生活」の普及に取り組んでいます。(参考:Hub of Asian THE KL「豊かなライフスタイルに必要な『zero waste』の考え」)
インドネシアでは、食べられる包装の開発などが進みます。「Evoware(エボウェア)」は、海藻を原料とする「食べられる包装」を開発し、話題を呼んでいます。インドの企業「EnviGreen(エンヴィグリーン)」は、1日で常温の水に溶けてなくなる100%オーガニックのレジ袋を開発し、「ごみを減らす生活」を目指す人々に活用されています。(参考:The Asahi shimbun Globe+ 濱川明日香「プラスチックゴミ問題を解決する技術とアイデア アジアから続々発信中」)
今すぐできる「脱プラ」の工夫とは?
日本に住む私たちも、「ごみを減らす生活」を実践しなければなりません。何度も言われてきたことではありますが、スーパーやコンビニの買い物に使うレジ袋は、無料であってもなるべくもらわず、エコバッグを使うことを心がけたいものです。
「生ゴミを使うときにレジ袋を使っている」という場合は、紙製の水切り生ゴミ袋を用意するといいかもしれません。市販品を買わなくても、新聞紙を活用すれば、三角コーナーが不要になります。
コンビニ弁当の空き箱は、きれいに洗って残飯を取り除いてプラスチックのリサイクルにまわすことで、リサイクル率を高めることができます。プラスチック製のフォークやスプーン、ストローなどは、本当に必要かを考えた上でもらうことにしましょう。
また残り物や作り置きおかずの保存は、プラスチック製の容器ではなく、ガラスやステンレス製の容器で代替することもできそうです。
インターネット上を探せば、「脱プラ」のための話題が、いろいろ紹介されています。新しい情報を入手しながら、楽しみながら長い目で「ごみを減らす暮らし」を実践していってほしいと思います。
■関連リンク
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■参考資料
保坂直紀上席研究員・東京大学海洋アライアンス「海のマイクロプラスチック汚染」
川端裕人・NATIONAL GEOGRAPHIC「研究者・高田秀重研究室に行ってみた―第1回忍び寄るマイクロプラスチック汚染の真実」
Stephen LaConte記者「人間が過剰包装で無駄なごみを出しすぎなのがわかる19の証拠写真」
2018年5月9日NHKクローズアップ現代「ペットボトルごみがついに限界!?~世界に広がる“中国ショック”~」
2018年10月25日・BBCニュースジャパン「欧州議会、使い捨てプラスチック禁止法案を可決」
Hub of Asian THE KL「豊かなライフスタイルに必要な『zero waste』の考え」
The Asahi shimbun Globe+ 濱川明日香「プラスチックゴミ問題を解決する技術とアイデア アジアから続々発信中」
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