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素朴な疑問高齢者が陥りやすい「低栄養」ってどんな状態?
こんにちは! 好奇心も食欲も旺盛な50代主婦、ハルメク子です。
最近、「高齢になると知らず知らずのうちに低栄養になる可能性がある」という話を聞きました。低栄養って、栄養が足りていないということ? つまり、食が細くなることと同じ意味かしら? うちは両親が離れて暮らしているから、少し心配になってきました。早速、低栄養について調べてみましょう。
シニアが低栄養になる原因
低栄養とは、健康的に暮らすために必要なエネルギーやたんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素が不足している状態を指します。
中でも、シニアによく見られるのは、エネルギーとたんぱく質の不足。エネルギーは、体を動かすために必要であり、たんぱく質は、筋肉、血液、内臓、骨、皮膚などの体をつくる材料となる大切な栄養素です。
体に必要なエネルギーとたんぱく質の摂取が不足すると、筋肉量が減り、体重も減ります。また、筋力が低下し、疲れやすくなり活動量の低下にもつながります。
さらに、血液中のたんぱく質が少なくなると、むくみを起こしやすくなったり、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなったりします。このような低栄養状態がさらに進むと、寝たきりになり、悪くすると命に関わるとのこと。これは気を付けなければなりません。
シニアが低栄養になる原因として、以下のことが挙げられます。
- 加齢による食欲の低下
加齢による食欲低下の要因はさまざまあります。味覚や嗅覚などが衰えたり、噛むことや飲み込むこむ力が弱くなったりすることで食欲が低下します。また、病気や老いの心配・孤独感などによっても食欲は低下しやすくなります。食欲が低下すると、食事の全体量が減り、低栄養になりやすくなります。
- 活動量の低下
足腰が痛くなったり、人付き合いが減ったりすると外出が面倒になり、家の中にこもりがちになってしまいます。そうなると、活動量が低下しお腹がすかず、食事量が減ってしまいます。さらに、日常生活動作(ADL)の低下も招くと、低栄養の状態が進んでしまいます。
- 入れ歯など口の中の問題
入れ歯の調整をしていなかったり、合ってなかったりすると咀嚼(そしゃく)が困難になり、咀嚼しやすい柔らかい食べ物の摂取が増え、食事が偏り栄養素の摂取不足になります。また、加齢に伴って唾液の分泌量も減少するため、食事がとりにくくなり、必要な栄養素を確保できなくなります。
- 経済的な問題
経済的に困難な世帯は、穀物の摂取が多く、肉類や野菜の摂取が少ないというデータがあります。ご飯に漬物だけ、菓子パンだけといった簡素な食事は、特にたんぱく質の不足が懸念されます。
- 認知機能の低下
認知機能が衰えてくると、手順を考えて料理をすることが難しくなり、電子レンジなどの電化製品の使い方がわからなくなり、食事の準備が困難になります。また、買い物に出掛けても同じ品物ばかり購入することも増え、栄養に偏りが生じます。
高齢者の低栄養を防ぐには
低栄養の指標として、わかりやすいのは体重の減少です。定期的に体重計に乗るようにして、痩せ始めに気付きましょう。周囲から「痩せたね」と声を掛けられたり、洋服のサイズやベルトの長さが変わったりすることでも体重の変化を知ることができます。体重の減少に早く気付き食事を工夫をしたり、周囲の助けを借りたりすることも大切です。
シニアに限っては、「もともと太り気味だったから」という理由で、体重減少を気にしない方もいますが、これは要注意です。体重が減るということは、脂肪だけでなく全身の筋肉も減るということ。筋肉が減ってしまうということは、寝たきりの始まりになりかねないのです。
その他の低栄養を防ぐ方法と改善方法は以下のようなものです。
- 病気や体調不良、薬の副作用などの医学的な問題は、かかりつけ医など医療機関に相談し、改善する。
- 年齢に応じた一日に必要な食事量を知り、必要なエネルギーと栄養素を摂取できるよう食事量が減らないようにする。
- 生活リズムを整え、1日3回の食事と必要に応じて間食を取り、栄養を確保する。
- 噛む力や飲み込む力が弱っている場合は、入れ歯を調整したり、食事を食べやすく調理する工夫をしたりする。
- 買い物や散歩、家事など体を動かす機会を増やし、適度な運動をする。
- 酢や香辛料など取り入れ味覚を刺激したり、食事の見た目にも配慮したりし、食欲をそそる食事にする。
- 誰かと食べるようにする(孤食をしないようにする)。一人暮らしの場合は、誰かとこまめに声を掛け合ったりなど、食事を楽しむ工夫をする。
食べるものがあふれている時代に、低栄養になるなんてことは考えたことがありませんでした。離れて暮らす両親がきちんと食事を食べ、エネルギーや栄養素が不足していないか、気を配らなければと思いました。
【監修】
細田 明美(ほそだ・あけみ)さん 東京医療保健大学講師
美作女子大学卒業、大阪市立大学大学院生活科学研究科修了(学術修士)。管理栄養士。
愛媛女子短期大学専任講師などを経て、2006年より東京医療保健大学医療保健学部医療栄養学科に在職。臨床栄養学などの講義・実習を担当。現在は、歯科栄養学に興味があり、子どもから高齢者の口腔機能と食習慣についての研究に従事している。
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イラスト:飛田冬子
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