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2019年09月30日
素朴な疑問
電車に乗っている時間が好きです。通勤ラッシュはつらいけど、シートに座って本を読んだり、音楽を聴いたり、車窓の景色をぼんやり眺めながら季節の移り変わりを感じたり。乗っている人がそれぞれに自分の時間を楽しんでいるあの感じが、なんともいえず心地よいですね。
あまりにも心地よすぎて、気づけば本を片手にウトウト……。特に疲れているわけでもないのに、どうして電車に乗っていると眠くなっちゃうのかしら? そういえば若い頃は飲み会の帰りに電車で寝過ごして、電車を何往復もしたことがあったなあ……。「お客さん、終点ですよ!」って起こしてくれた車掌さん、その節はお世話になりました(笑)。
あるウェブサイトが電車についてのアンケート調査を行ったところ、回答者のなんと67%が「電車で乗り過ごした経験がある」と答えたそうです。しかもそのうちの15%が「終点まで行った」というのだから、ワタシだけじゃなかった! 時間に追われる現代人がこんなにも頻繁に電車で寝過ごしてしまうなんて、ひょっとしてこれは由々しき問題なのでは?
そこで、電車に乗ると眠くなる謎について調べてみました。すると、どうやら電車での眠気は揺れ方と関係あることがわかってきたのです。キーワードは「周波数1Hz(ヘルツ)」。揺れと眠りの関係に詳しい東京工業大学の伊能教夫教授が首都圏の電車の揺れ方を調査し、睡眠とどのような関連性があるのか分析したそうです。
結果どんな電車でも必ず眠くなるわけではないことが判明。眠くなりやすい区間の揺れ方が1Hzであることを突き止めたそうです。1Hzの揺れとは、1秒間に1回揺れる状態のこと。ちょうど揺り籠でゆらゆらしているような状態に近い揺れ方なので、自然と眠くなってしまうそうです。
また同じ1Hzでもハッキリした大きな揺れよりも、揺れたかどうかわからない小さな揺れの方が眠りやすいこともわかったんだとか。同じ乗り物でも車やバスと違って電車は不規則な運転や急カーブなどが少なく、刺激が少ないために眠りに落ちやすい環境といえます。とはいえ電車の中でもカーブの多い路線などは走行に変化があるので、眠りづらい路線もありそうですね。
そういえば、「電車で眠るのは日本人だけ」という話を聞いたことがあります。外国の電車で居眠りするとスリに財布やバッグを盗まれるから、とても眠っていられないと聞きましたが、そう考えるとワタシたちが電車で堂々と居眠りできるのは日本が安全な国で、なおかつ快適な走行を実現している高い技術力の証といえるのかも?
ちなみに電車と眠気の関係を突き止めた前出の伊能教授ら研究チームは、不眠症で悩む人やシフト制の職場などのために「眠りやすくなるベッド」を開発しているんだとか。そう考えると、電車で眠れるってすごいことなのかも。電車のウトウトがなんだか尊い時間のように思えてきたわ。今日は本を家に置いて、電車の中でゆっくり眠ろうかしら!
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参照:日本経済新聞
イラスト:飛田冬子