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- 三崎千恵子さんのつらさを抱きとめる寛大さと存在感
「ハルメク」でエッセイ講座を担当する随筆家・山本ふみこさんが、心に残った先輩女性を紹介する連載企画。今回は、女優「三崎千恵子」さんです。映画「男はつらいよ」シリーズのおばちゃん役として、何もかもを抱きとめてくれる存在でした。
好きな先輩「三崎千恵子(みさき・ちえこ)」さん
1921-2012年 女優
東京生まれ。松竹新興演芸部を経て、新宿ムーランルージュに入団。戦後は劇団民芸に入り、新藤兼人(しんどう・かねと)監督「どぶ」で映画デビュー。退団後は映画「男はつらいよ」全48作に出演。ドラマ「時間ですよ」、映画「家族」などにも出演。
「おばちゃん」の存在にほっとする
映画「男はつらいよ」を本気で観たのは、50歳をいくつか越したころのこと。何でしょうね、わたしには評判高く、国民的人気の◯◯というのに飛びつき損なう一面があるようなのです。天の邪鬼?まあ、そんなところです。
何年前だったか出版社に勤めていた長女が「独立して仕事をしてみたい」と云(い)いだしたとき、相談を受けた父親が「オマエさんの夢は、寅さんみたいに生きるってことだな」と云ったんだそうです。
呑気なはなしですが、この日から長女は「男はつらいよ」全48作のDVDを2本ずつ借りてきて観るようになりました。
家には居間に1台きりのテレビですから、わたしも娘の肩越しに寅さんの世界を覗くことになったのでした。気がついたときにははまりこんでいました。
そりゃ寅さん(渥美清)がいい、各回ごとのマドンナも妹のさくら(倍賞千恵子)も素敵です。でもね、わたしのなかでは何と云っても「おばちゃん」の存在が大きい……。
物語がごたついてきて息が上がっても、柴又帝釈天参道にある「とらや」(寅さんの実家の団子屋/40作目から「くるまや」に改名)のシーンになるとほっとします。
「おばちゃん」そうさくらが呼ぶと、わたしもこころのなかで呼ぶのです。おばちゃんは、大人になって、簡単にはひとに頼れなくなったつらさを抱きとめてくれる存在なのかもしれません。そうです、女だってつらいよ、ですもの。
26年、店と家を守り抜き「家庭の味」を伝え続けた存在
最近観た第14作「寅次郎子守唄」では、寅さんが押しつけられた赤ん坊に、最初はとまどいながらも、わが子のごとく愛情を注ぐおばちゃんの姿が見られました。じつに適応能力の高い女性なのです。
“おばちゃん=車(くるま)つね”を演じる女優・三崎千恵子は、シリーズ中おいちゃん役が3人あった(森川信/第1-8作、松村達雄/第9-13作、下條正巳/第14-48作)一方、ひとりでおばちゃんを演じきりました。26年間通して「とらや」の店と家を守り抜き、日本の家庭味(かていみ)を醸し伝えつづけたのです。
三崎千恵子さん、おばちゃん、ありがとうありがとう。
90歳で亡くなる前年まで仕事をし、女優としての人生を全うした三崎千恵子は無類の着物通だったそうです。映画のなかの下町のおばちゃんの着物姿、もう一度たしかめてみてはいかがでしょう。
映画「男はつらいよ」 原作・脚本・監督(一部作品を除く)山田洋次
随筆家:山本ふみこ(やまもと・ふみこ)
1958(昭和33)年、北海道生まれ。出版社勤務を経て独立。ハルメク365では、ラジオエッセイのほか、動画「おしゃべりな本棚」、エッセイ講座の講師として活躍。
※この記事は雑誌「ハルメク」2017年11月号を再編集し、掲載しています。
>>「三崎千恵子」さんのエッセイ作成時の裏話を音声で聞くにはコチラから
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※ハルメク365では、雑誌「ハルメク」の電子版アーカイブを12か月分見ることができます。詳しくは電子版ハルメクのサイトをご確認ください。
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