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- 介護保険制度とは?仕組みや保険料について知ろう
40歳から毎月払っている介護保険料。実際には自分がどのように使えるのでしょうか。介護保険制度の仕組みや保険料の決め方、費用負担割合、利用できるサービス内容や申請方法など、毎月払ってきた介護保険料を有効活用する方法をわかりやすくご紹介します。
介護保険とは?どんな保険で、どんな仕組みなの?
人生100年時代といわれる現代。高齢者が増えるとともに、病気や体力の低下によって介護が必要な人も増えています。私たちも、将来高齢者になったとき、あるいは家族や自分の身に突然、介護が必要になるかもしれません。いざというときのために、介護保険の知識と情報を身に付けておきましょう。
介護保険制度は、「介護が必要な人に、介護に関する費用の一部を給付して、社会全体で支え合おう」という制度です。すべての介護サービスに保険が適用できるわけではありませんが、介護対象者の金銭的負担を軽減する助けとなるものと考えていいでしょう。
介護保険制度の仕組みは?
介護保険制度を運営する者(保険者)は、全国の自治体(市町村と東京23区)です。その地域に住んでいる40歳以上の国民は加入者(被保険者)となって、介護保険料を納めるよう義務づけられています。その介護保険料と税金を基に、介護保険制度は運営されています。
介護保険制度によって、介護サービスを利用する場合の自己負担割合は、原則1割で済みます(前年度の所得によっては、自己負担割合が2~3割になる場合もあります)。ただし、利用できる上限金額があるので、それについては、のちほど説明します。
介護保険料の金額はどうやって決まる?
介護保険料を納めることは、40歳以上の国民に義務付けられていますが、介護保険料の金額はどのように決まるのでしょうか?
まず被保険者は、年齢によって2つに大別されます。それぞれに介護保険料の決め方・納め方が違います。
- 第1号被保険者=65歳以上
- 第2号被保険者=40~64歳
第1号被保険者(65歳以上)は、自治体ごとに金額が決められ(低所得の人の負担が大きくならないように配慮されます)、あらかじめ年金から天引きされます。年金生活になると負担額が気になるところですが、厚生労働省が公表している資料によると、第1号被保険者の保険料全国平均(2018~2020年、月額・加重平均)は、5869円でした。
第2号被保険者(40~64歳)は、加入している医療保険によって異なります。会社の健康保険に加入している場合は、各保険ごとに定められた保険料率を給与に掛けて計算します。算出額を会社と折半して負担し、給与から天引きされる形で納めます。
ちなみに2020年4月からは、所得に応じて保険料が算出される「総報酬割」制度が導入されたため、大企業を主として会社員の介護保険料が大幅に増額しています。
国民健康保険に加入している場合は、各自治体の国民健康保険と同じように世帯ごとに計算し、算出額を国と折半して負担し、世帯主が納めます。
介護保険でサービスが利用できる人の要件は?
ここからは、実際に介護保険制度を利用して介護サービスを受けるときのことを想定し、説明していきます。まず、介護保険サービスを受けられる被保険者について。基本は65歳以上の高齢者ですが、要件によっては40歳から受けることもできます。
介護保険でサービスが利用できる要件
- 1号被保険者(65歳以上)の、要介護・要支援認定を受けた人
- 第2号被保険者(40~64歳)の、指定の特定疾病(※後述の16種類)で、要介護・要支援認定を受けた人
指定の特定疾病は16種類
- 末期がん
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
認定を受けられる要介護度とは?
介護度と支援度に応じて「要介護1~5」「要支援1~2」に認定された人が介護保険でサービスが利用できます。
- 要介護1~5…介護保険サービスが利用できます。
- 要支援1~2…介護予防サービスが利用できます。
介護保険で利用できるサービス・支援にはどんなものがある?
では、介護保険制度を利用して受けられる、介護サービスや支援の種類と内容にはどのようなものがあるでしょうか。大きく分けると、「ケアプランの作成」から、「自宅で受けられるサービス」「施設などに通う日帰りサービス」「施設で短期間宿泊して受けるサービス」「訪問・通い・宿泊を組み合わせて受けるサービス」「福祉用具の利用にかかるサービス」の6つです。
サービス・支援その1:ケアアプランの作成
介護保険サービスを利用するにあたって、最初に「ケアプラン」を作成して市区町村に提出しなければりません。ケアプランとは、介護サービスの計画書です。要介護1~5に認定された人はケアマネージャーが、要支援1~2に認定された人は地域包括支援センター職員が、本人や家族と相談しながら、最適と思われる利用サービスの種類や頻度などを計画してくれます。ケアアマネージャーが必須なわけではありませんが、介護サービスを利用する際、さまざまなサポートをしてくれる心強い存在です。
サービス・支援その2:居宅サービス(訪問介護)
自宅で暮らす要介護者のもとを、ホームヘルパーなどの資格保有者や介護福祉士が訪れて、入浴や食事、排せつ、掃除、洗濯、調理などの支援をするサービスです。浴槽付きの入浴車で自宅を訪問し、入浴の介助を行う「訪問入浴介護」や、看護師や理学理療法士などが訪問する「訪問介護」「訪問リハビリテーション」などもあります。
サービス・支援その3:通所サービス
要介護者が、デイケア(施設や病院など)に通い、日常生活の支援を行うのが通所サービスです。食事や入浴の介護、機能訓練などを日帰りで行います。
サービス・支援その4:短期入所サービス
介護老人福祉施設や病院、診療所などに短期間宿泊して、食事や入浴の支援、リハビリテーションで身体機能の向上などを行うサービスです。施設への入居準備のために利用する場合や、家族の介護負担を軽減する目的で利用されることもあります。
サービス・支援その5:福祉用具レンタル・自宅改修
歩行器や車いす、介護ベッドなどをレンタルできたり、入浴補助などの福祉用具の購入に給付金が出たりします。また、自宅をバリアフリー化したり、手すりをつけたりする場合も、工事費用に給付金が支給されます。
介護保険サービスを利用するための手続き(申請・認定)は?
さて、実際に介護保険サービスを利用しようと考えたときの手続きを説明します。大きな流れとしては、「要介護認定を受けるための申請を出して」「要介護認定を受ける」ことで、介護保険制度の介護サービスを利用できます。
通常、申請してから要介護認定の通知まで1か月ほどの時間がかかり、地域によってはそれ以上かかる場合もあります。
前提として、第1号被保険者は、65歳の誕生月に自治体から「介護保険被保険者証」が郵送交付されます。申請には、この被保険者証が必要です。40~64歳の第2号被保険者は、事前に被保険者証は交付されていません。前述した16の特定疾病による要介護認定を受けて初めて、被保険者証が発行されます。
申請ステップ1:自治体(市区町村)の窓口へ必要書類を提出
要介護認定の申請は、住んでいる自治体(市区町村)の介護保険担当窓口で行います。自治体によっては郵送も可能。申請書、介護保険被保険者証(第2号被保険者は健康保険被保険者証)、マイナンバーカード(または通知カード)、本人確認資料などが必要となりますので、各市区町村の窓口に問い合わせしましょう。本人が申請できない場合は、家族が代行することも可能ですし、居宅介護支援事業者や介護保険施設が代行することも可能です。入院している場合は、病院のソーシャルワーカーが行うこともできます。
申請ステップ2:訪問調査
市区町村の職員や委託された認定調査員が、実際に自宅を訪問します。本人の体や心の状態を確認する他、家族構成や日常生活の様子、住まいの環境など、全国共通の調査票に基づいて聞き取り調査が行われます。
並行して、市区町村から主治医に、心身の状況などをまとめた意見書の提出を依頼します。かかりつけ医を持っていない人は、市区町村と相談して指定の医師の診断を受け、その医師が意見書を作成します。
申請ステップ3:一次判定
訪問調査で得られた情報と主治医意見書をもとに、厚生労働省のソフトを使った全国共通のコンピューター分析が行われ、介護度や支援度が判定されます。
申請ステップ4:二次判定
一次判定の結果と主治医意見書、その他の資料をもとに、医療や福祉などの専門家で構成される「介護認定審査会」が、要介護度を審査・判定します。
申請ステップ5:要介護認定の通知
最終的な要介護度の認定通知が、市区町村から本人宛に郵送されます。「要介護1~5」「要支援1~2」の場合は介護保険(介護予防)サービスが利用できます。「非該当」の場合は自立可能と判断され、介護保険サービスが利用できません(別途、地域支援事業を利用することができます)。
要介護・要支援認定には有効期限があります。認定を受け、介護保険サービスが利用できることになったら、「要介護申請日」から6か月以内に、介護サービスを受ける手続きを済ませましょう。
注意!介護保険には1か月の利用上限金額がある
介護保険サービスの利用金額は、1か月に利用できる金額には上限が定められています。この金額は、介護度によって異なります(区分支給限度基準額といいます)。
要支援1の方の支給限度基準額は5万320円、要介護5の方は36万2170円というように、介護度が高いほど限度額も高く設定されています。また、収入や資産が少ない人には「負担限度額認定制度」があり、これに認定されると限度額以上の支払いが免除されます。「負担限度額認定証」を受けるためには、市区町村に申請する必要があります。
介護保険制度の今後はどうなる?2021年の改正は?
2000年に施行された介護保険制度ですが、厚生労働省が発表した「平成30年度 公的介護保険制度の現状と今後の役割」によれば、平成30年4月現在の要介護(要支援)認定者は644万人で、この18年間で約3倍に増えたそうです。増加傾向は続いているとも報告されています。サービス利用者も18年間で約3.2倍の474万人になっており、加えて少子高齢化もあって、財源確保の問題は無視できなくなっています。
現在、介護保険制度は3年に一度見直されており、2021年に施行される第7期改正ではさらなる負担が求められる見通しです。というのは、2022年になると団塊の世代が後期高齢者に突入するため、支え手不足により介護保険制度の財源がより圧迫される懸念があるからです。
例えば、月額の自己負担額が上限額を超えた場合、超過分の払い戻しが受けられる「高額介護サービス費」について、これまで「本人または世帯全員が住民税課税者」の自己負担額は一律4万4400円だったものが、年収に応じて上限額が引き上げられる方針です。
また、補足給付(低所得の施設入所者に対する食費・光熱費・居住費などの負担への補助)について、補助の対象の区分の変更があり、これまでよりも給付額が減って負担が増えることになる人が出てきそうです。
実は、2021年の改正は、その次の2024年改正のための布石の位置付けです。介護保険制度の持続可能性を確保するため、この年は介護報酬改定に加えて、診療報酬の改定も同時に行われることが決まっています。今よりも負担が増える方向性は変わらないため、今後の改定動向はしっかり注目しておきましょう。
■監修:ファイナンシャルプランナー(CFP)竹下さくらさん
なごみFP事務所。生損保勤務を経て1998年よりFPとして独立、現在に至る。個人のライフプラン設計を主軸に、講演、執筆等を行っている。『「介護が必要かな」と思ったときにまず読む本』(日本経済新聞出版社刊)、『認知症マネーまるわかりガイド』(アールズ出版刊)など著書多数。近著に『幸せな「ひとり老後」を送るためのお金の本』(秀和システム刊)。
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