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2019年02月10日
忘れられない結婚式の記憶
専業主婦が憧れていたブライダル司会者へ道を切り開く。20年間、現役のブライダル司会者として仕事をし続けてきた過去や、これからのことを語ります。今回は忘れられない結婚式についてです。
お父様を小さい頃亡くされ、母、娘の2人で助け合って生きてきた親子のお話です。たしか旦那様になる方は、お嫁さんより15歳くらい年上だったと記憶しています。
「フィアンセの大切なお母さんが、病気で入院している。娘の花嫁姿をなんとかひと目見せてあげたい」
こんな切ない願いのお客様でした。
新郎となる旦那様からお話を伺ううちに、お母様のご容態はかなり大変な状態だとわかってきました。とにかく準備を早く進めなくてはなりません。病院に確認すると、好きなようにして良い。と快い返事もいただきました。ただ、今までの経験から、病院はたくさんの決まりがあるところがほとんどでしたから、少しびっくりしました。病院のお部屋をお借りして、お嫁さんのお仕度をして、お母様の病室で人前式をすることにしました。
病院に行ってみてわかりました。うまく言えないのですが、私が知っている病院とはだいぶ違う、異次元の空間のようでした。今でこそ「ホスピス」という言葉は定着していますが、その時はまだ耳慣れない言葉でした。そこは死をきちんと受け入れ、残った時間を大切にする病院でした。だから、好きにしてよい、というお返事をいただいたのだと納得もできました。
みなさん、やせ細れ、辛そうでした。
死を受け入れる、とはどんなことでしょう。
私には到底理解はできません。ここまで来るまでの気持ちの葛藤は、想像を絶するものがあったことでしょう。しかし乗り越えたみなさんは、すでに心が天使に生まれ変わっていたのでしょうか? やさしいオ-ラがかもしだされていたのを、今でも覚えています。
お母様は、お嬢さんの花嫁姿がわかったようでした。寝たきりで、まったく体も動かせない状態でしたが、お嬢さんから目を離すことなく、しっかりと見つめていたように見えました。なぜなら大粒の涙が流れたからです。
看護師さん、患者さんが見守る中、結婚指輪の交換をしました。司式者の私が「お二人が夫婦となったことを、お認めいただけますか?」と、みなさんに投げかけると、あたたかい拍手につつまれました。
お母様は優しい娘婿の新郎に、娘を託したのだと思います。そして娘のきれいな花嫁姿を見て、安心したのだと思います。静かに目をとじ眠るように天国へ旅立たれました。
「おかあさん、死んじゃいやだよ~」
花嫁姿で子どものように、お母様に抱きついて泣く彼女に、新郎は静かに寄り添っていました。結婚式の日と、お母様の命日が同じ日という、あまりにも切ない結婚式でした。
「花嫁姿を見てもらってよかったね」と、彼女に話かける年の離れた優しい新郎の言葉が、今でも心に残っています。そしてこの言葉が25年間、この仕事を続けさせていただく際の心の糧となっていたのかもしれません。みなさまの大切な想いを形にすることの重みを教えていただいた、切ない、切ない、結婚式でした。
次回からは、仕事上で活躍しているキティちゃんグッズについて語ります。