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- 【書評】『昭和歌謡ものがたり』他2冊
雑誌「ハルメク」の編集部員がおすすめする新刊情報を毎月お届けします。今月は、昭和30年代から60年代まで、誰もが知る58曲の誕生にまつわるエピソードが綴られた本など3冊をご紹介します。
松井信幸著『昭和歌謡ものがたり』
昭和30年代から60年代まで、誰もが知る58曲の誕生にまつわるエピソードが綴られた本書。読んでいると、紹介されている曲がラジオやテレビから流れていた頃の記憶が蘇ってきます。
「黒ネコのタンゴ」のレコーディングで、小学校1年生の皆川みながわおさむは疲れ切って声が裏返ってしまいます。しかし「子どもらしい」と、その声が採用されたのだそう。
「銀座の恋の物語」で石原裕次郎(いしはら・ゆうじろう)の相手の牧村旬子(まきむら・じゅんこ)は当時16歳。大人のデュエットの定番なのに驚きです。実はあがり症の石原裕次郎はビールを飲んでレコーディングに臨んでいたというエピソードも。
昭和の大歌姫・美空ひばり(みそら・ひばり)から郷ひろみ(ごう・ひろみ)やキャンディーズまで。久しぶりにレコードに針を落として聴いてみたくなりました。
みつはしちかこ著『愛蔵版小さな恋のものがたりクローバー編、コスモス編』
漫画家デビュー60年を迎えたみつはしちかこさん。代表作『小さな恋のものがたり』全46集の中から、著者自身が選りすぐった「愛蔵版」が2冊同時に刊行されました。花見、海水浴など春夏がテーマの「クローバー編」と、クリスマス、バレンタインなど秋冬の「コスモス編」です。
ほとんどの少女漫画の主人公がお姫様のような美少女だった60年前、「どこにでもいる普通の女の子の話を描きたかった」と言うみつはしさん。初恋の人サリーを追いかける女の子として自分の代わりに登場させたのがチッチなのは有名です。
サリーの口にとまったチョウが自分の方に飛んできて「間接キス?」とドキドキするチッチの話など、少女の心に戻れるエピソードが満載。
山口祐加、星野概念著『自分のために料理を作る自炊からはじまる「ケア」の話』
料理家である山口祐加(やまぐち・ゆか)さんは、料理が苦手な人を対象に、買い物から料理、片付けまでを教える「自炊レッスン」という独自の料理教室を行っています。
本書には、さまざまな背景を持つ6人の生徒さんが登場。レッスンを受けてどんな心境になったか、精神科医である星野ほしの概念がいねんさんを交えた対話で解き明かしていきます。6人の中には、夫を亡くして料理をする気を失った50代の主婦も。
山口さんの伴走によって徐々に気力を取り戻す姿に、希望を感じました。
山口さんは1992年生まれの30代ながら、忙しい両親に代わって7歳から家族の食事作りを担ってきた人物。新鮮な感性で語られる料理論に触れると、自然とキッチンに立ちたくなってきます。
※この記事は2023年1月号「ハルメク」に掲載された内容を再編集しています。
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