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- 映画レビュー|大切な人の死の先…「CLOSE」ほか
女性におすすめの最新映画情報を映画ジャーナリスト・立田敦子さんが解説。今回は、トランスジェンダーを描いた「GIRL/ガール」で注目を浴びたルーカス・ドンの第二作、誰よりも親しかった友を突然失った少年の心の葛藤の行方を描く人間ドラマ。
「CLOSE/クロース」
ベルギーの郊外。花農家を営む家の次男レオは、親友のレミと始終一緒に過ごしていた。だが、13歳になり中学校に入学したある日、周囲から“カップル”とからかわれたことをきっかけに、レオはレミと距離を置くようになる。
アイスホッケーチームに入り、自分の世界を見出し始めたレオの元に、突然の知らせが届く。学校では先生が子どもたちを集めて、レミへの想いをシェアするグループセラピーを行うが、レオは口を開こうとしない。両親はそんな息子を気遣うが、それでも心を開くことができない。そんなある日、アイスホッケー場にレミの母親が現れる。
バレリーナを目指すトランスジェンダーを描いた「GIRL/ガール」で注目を浴びたベルギーの新星ルーカス・ドンの監督第二作は、誰よりも親しかった友を突然失った少年の心の葛藤の行方を描く人間ドラマだ。
人生経験の浅い少年が背負うにはあまりにも大きい後悔、罪悪感は、彼を殻に閉じ込めてしまう。果たして、彼の閉ざされた心の扉を開くのは誰なのか?
ドン監督が少年時代、友人を遠ざけてしまった経験を投影したというこの物語は、後悔と赦(ゆる)しというテーマについて深く考えさせられる。生きていれば人は過ちを犯すこともある。それについて熟考することも後悔することも重要だろう。けれど、それでも人生は続くのだ。
レオは苦しみの果てに、同じ痛みを抱えるレミの母親に真実を打ち明けることで、その先へ進む糸口を見出す。彼女がレオを精いっぱい抱きしめた瞬間は、なんと美しい光景だろうと涙があふれ出る。不寛容が生む分断によって負のスパイラルが生まれがちな殺伐とした世界の中で、一筋の光が見えた気がする。
「CLOSE/クロース」
13歳のレミとレオはどんなときも一緒に過ごす親友同士だった。が、中学校に入学したある日、そんな二人を“カップル”と女子たちが冷やかす。レオは周囲の視線を気にするようになり、レミと距離を置くが……。
監督/ルーカス・ドン
出演/エデン・ダンブリン、グスタフ・ドゥ・ワエル、エミリー・ドゥケンヌ他
製作/2022年、ベルギー・オランダ・フランス
配給/クロックワークス、STAR CHANNEL MOVIES
2023年7月14日(金)より、全国公開
https://closemovie.jp/
今月のもう1本「658km、陽子の旅」
引きこもり生活を送っていた42歳・独身の陽子の元に疎遠だった父の訃報が届く。従兄の車で東京から青森の実家に向けて旅立つが、あるアクシデントにより、陽子はサービスエリアに一人取り残されてしまう。所持金もない彼女は、ヒッチハイクで北を目指すが、それは封印していた過去と対峙する旅となる。
ハリウッド映画など国際的にも活躍する菊地凛子(きくち・りんこ)が日本映画における初の単独主演で、内省的かつ感動的な演技を披露。
監督/熊切和嘉
出演/菊地凛子、竹原ピストル、オダギリジョー他
製作/「658km、陽子の旅」製作委員会
配給/カルチュア・パブリッシャーズ
2023年7月28日(金)よりユーロスペース他、全国順次公開
https://culture-pub.jp/yokotabi.movie/
文・立田敦子
たつた・あつこ 映画ジャーナリスト。雑誌や新聞などで執筆する他、カンヌ、ヴェネチアなど国際映画祭の取材活動もフィールドワークとしている。エンターテインメント・メディア『ファンズボイス』(fansvoice.jp)を運営。
※この記事は2023年8月号「ハルメク」の連載「トキメクシネマ」の掲載内容を再編集しています。
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