ハルメク編集部が選ぶ大人の女性におすすめの書籍情報

【書評】『あなたの牛を追いなさい』他2冊

公開日:2023.04.22

雑誌「ハルメク」の編集部員がおすすめする新刊情報を毎月お届けします。今月は、還暦を迎えた俳優の松重豊(まつしげ・ゆたか)さんが、禅の僧枡野俊明(ますの・しゅんみょう)さんと「十牛図(じゅうぎゅうず)」に沿っての対談本など3冊をご紹介します。

枡野俊明・松重豊著『あなたの牛を追いなさい』

枡野俊明・松重豊著『あなたの牛を追いなさい』
毎日新聞出版刊 1650円(税込)​​​​​

還暦を迎えた俳優の松重豊(まつしげ・ゆたか)さんが、禅の僧枡野俊明(ますの・しゅんみょう)さんと「十牛図(じゅうぎゅうず)」に沿って対談しながら、自分自身との向き合い方を考えていきます。

「十牛図」とは、悟りに至る10段階を描いた10枚の絵。中国の宋の時代に作られたといわれる「禅の入門書」のようなものです。

タイトルの「牛」とは、見失ってしまった「本当の自分」のこと。枡野さんは、「一点の曇りもない美しい心を持って生まれる本当の自分が誰にもあるのに、煩悩とか執着に次第に包まれ、見失ってしまう」といいます。

108つではきかないほど自分は煩悩にまみれているという松重さんに共感し、わかりやすい枡野さんの例えに納得。今私は10段階のどこにいるのでしょうか。

石井哲代著『102歳、一人暮らし。哲代おばあちゃんの心も体もさびない生き方』

石井哲代著『102歳、一人暮らし。哲代おばあちゃんの心も体もさびない生き方』
文藝春秋刊 1540円(税込)

著者の石井哲代(いしい・てつよ)さんは1920(大正9)年4月生まれ。100歳を超えて初めてカードでお金を下ろすドキドキ、予防接種や全自動洗濯機へのとまどいなど、広島県尾道市の山あいでの一人暮らしが日記形式で語られます。

「できないことは増えるし、心がふさぐ日もあるけど自分を励ます名人になって心をご機嫌に」という哲代さん。

腹が立つことがあったらつばを3回飲み込む、「お金がナイチンゲール」のように「ない」がつく否定の言葉には「チンゲール」をつけて笑いに変える、「手の甲はしわしわでも手のひらはつるつる」と物事には必ず表と裏があるから、いい方に考える、などなど、前向きに生きるヒントが満載です。

上田淳子著『今さら、再びの夫/婦二人暮らし』

上田淳子著『今さら、再びの夫/婦二人暮らし』
オレンジページ刊 1650円(税込)

双子を育てながら料理研究家として歩んできた上田淳子(うえだ・じゅんこ)さん。夫はずっと深夜帰宅、家事も育児も上田さんが担ってきましたが、息子二人が同時に独立することに。

「退職した夫と家で二人、これからどうする?」。途方に暮れつつ「お互いがお互いのいい相棒になる」という方向性を定め、家事シェアを進めながら、それぞれが好きなことに打ち込める基地づくりに取り掛かります。

思わず笑ってしまうのは、上田さんの語りに夫の本音がそっと添えられているところ。「あなたは言い出したら聞かない人ですから」なんて一文を見て「夫婦ってお互い様、相棒を大事にしなきゃ」と、私自身の身を振り返るいい機会になりました。

※この記事は2023年5月号「ハルメク」に掲載された内容を再編集しています。


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ハルメク365編集部

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