50代からの女性のための人生相談・117

人生相談:母性愛が強い娘…子育てに全力なのが心配

名取芳彦
回答者
元結不動・密蔵院住職
名取芳彦

公開日:2023.02.22

読者のお悩みに専門家が答えるQ&A連載。今回は60歳女性の「母性愛が強い娘の子育ての方法が自分を追い込んでいるように見えて心配…」という悩みに、仏教の教えをわかりやすく説いて「穏やかな心」へ導く、住職・名取芳彦さんが回答します。

60歳女性の「娘の子育ての仕方が心配…」というお悩み

私には33歳になる娘がいます。最近第二子を出産しました。

娘は母性愛が強く、子どもたちをすごく愛しています。例えば、上の子が赤ちゃん返りをしていると、その子のすべてに応えようとします。自分の体調が悪い時でさえも……下の子はまだ赤ちゃんなので、下の子のお世話や家事にも追われ休む暇がないはずなのに……。

私の目には娘が休めていないように見え、娘自身が自分で自分を追い込んでいるように感じます。

母親として、子育てをがんばっている娘に、なんと声をかけてあげればいいのでしょうか?

私が直接育児を手伝うことは嫌なようなのですが、先輩ママとして、何かしてあげられることはあるのでしょうか?

(60歳女性・竹ちゃんさん)

名取さんの回答:いざというときに寄り添える準備を

名取さんの回答:いざというときに寄り添う準備を

家事や育児に精いっぱい取りくんでいるお嬢さんはがんばり屋ですね。お嬢さんが責任感のある人になったのは、竹ちゃんさんの影響が大きいのでしょう。

いつでも、どんなことがあっても心穏やかな境地を目指す仏教では、“こだわり”からなるべく離れた方がいいと説き続けてきました。お嬢さんの「家事と育児をしっかりやる」というがんばりも、一つの“こだわり”と言えるかもしれません。

“こだわり”を持っている人は「~あるべき」「~すべき」と強く思っています。そのため、そうしない人に出会うと「なぜ、私のようにしないのだ」と心が乱れます。

例えば、お嬢さんのご主人が家事や育児に協力しなければ「あなたは父親なのに、どうして協力してくれないの!」と心が乱れます。

最悪なのは、こうあるべき、こうすべきと思っている自分に、それができなくなってしまった時です。そうなると、自分を許せなくなってしまうのです。竹ちゃんさんが「娘が自分を追い込んでいるように感じる」のは、それに薄々気が付いていらっしゃるからでしょう。

「100点ではなく80点でよしとする」「こうすべきではなく、この方がいい」くらいの心の余裕を持っていた方がいいと言われるのは、クタクタにならないようにするための注意喚起です。

「こだわれば心が乱れる」という覚悟

「こだわれば心が乱れる」という覚悟

ところが、初めて経験することは、どこまでが100点で、どこまでが80点なのか、誰にもわかりません。お嬢さんにとっては、最初のお子さんが生まれたとき“初めて母親”になりました。だからがんばったのです。

そして二番目のお子さんが生まれた今は、初めて“二人の子どもの母親”になったのです。

初めてのことですから意気込みは強くなります。それが「~あるべき」「~すべき」という“こだわり”です。がんばってやろうとしていることに、こだわりを持たずに取り組むのは無理でしょう。

しかし、とことんやってみないとわからないことがあるのです。こだわったために心身のバランスを壊してしまう人もいますが、それも、やってみて初めてわかることなのです。

私は、お嬢さんくらいの年齢の方には「こだわれば、そうしない人を許せないし、思ったようにできない自分も許せないから、心は穏やかではいられません。ですから、『こだわれば心は乱れる』と覚悟してこだわってください。心が乱れるのを覚悟してこだわるのと、覚悟しないでこだわるのとでは、心身のストレスに大きな違いがでます」とお伝えしています。

母として、祖母として、どっしりと待機して

母として、祖母として、どっしり待機して

ご相談の内容から、今のお嬢さんは「この子たちの母親だから、自分で全部やる、やりたい」と思っているのでしょう。小さな子どもに親が手を貸そうとすると「自分でやる!」と親の手を払いのけるのと似ています。

そんなときは、竹ちゃんさんも経験されたように、親は子どもにやらせてみて、ダメだったら手を貸そう、なぐさめよう、勇気を与えようと待機します。

竹ちゃんさんが今できることも、同じでしょう。お嬢さんがイライラしていたり、モヤモヤしたりしているときに、寄り添う準備をしておけばいいと思います。

先輩ママとして、いざというときに寄り添い、手を差しのべ、助ける力はすでにお持ちだと思います。母親として、おばあちゃんとして、どうぞ、どっしりとしていてください。

回答者プロフィール:名取芳彦さん

回答者:名取芳彦さん

なとり・ほうげん 1958(昭和33)年、東京都生まれ。元結不動・密蔵院住職。真言宗豊山派布教研究所研究員。豊山流大師講(ご詠歌)詠匠。写仏、ご詠歌、法話・読経、講演などを通し幅広い布教活動を行う。日常を仏教で“加減乗除”する切り口は好評。『感性をみがく練習』(幻冬舎刊)『心が晴れる智恵』(清流出版)など、著書多数。


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