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- 人生相談:疎遠の姉と仲直りできないことが気がかり…
読者のお悩みに専門家が答えるQ&A連載。今回は59歳女性の「両親の死後、性格の合わない姉と疎遠に。このまま終わってしまいそうで悲しい」という悩みに、仏教の教えをわかりやすく説いて「穏やかな心」へ導く、住職・名取芳彦さんが回答します。
59歳女性の「疎遠になった姉」についてのお悩み
両親が亡くなってから、姉と疎遠になっています。
介護も、実家の空き家の管理も押し付けられた上に、なんの協力も相談にものってくれないことに、長年悩んでいました。
姉を当てにすると頭にくるので、いろいろなことを一人でやってきましたが「このまま、わかりあえずに終わるのかな……」と悲しくなります。
今までもがんばって姉に近付いてみましたが、考え方が水と油で、性格が合わず、かなり疲れます。それでも、やはり仲良くするべきなのでしょうか?
解決策が見当たりません……。
(59歳女性・リラさん)
名取さんの回答:仲良くできなくても「共感」できる関係に
姉妹でも親子であっても、一人一人は別の人格です。姉妹であれば同じ親に育てられた、親子なら同じ屋根の下で過ごしたという共通項はありますが、他のさまざまな要因(縁)で一人一人は違う人間になります。
「ジャガイモ・タマネギ・お肉」という材料は共通していても、出来上がる料理は肉ジャガ、カレー、クリームスープ、野菜炒めなど、違うものになるようなものです。
リラさんは、姉妹だから仲良くすべきという、一つの“こだわり”をお持ちのようです。しかし、そのこだわりから離れることをおすすめします。
お二人の関係を「水と油」と表現されているくらいですから、いまさら互いが“油っぽい水”にも、“水っぽい油”にもなれない雰囲気を感じていらっしゃるのでしょう。だとすれば、無理に仲良くする必要はないと思います。
ご両親の介護から看取り、相続手続きなどを経て、お二人の生活がどのように変化したかはわかりませんが、疎遠になるのに十分な理由があったのでしょう。
「理解と同意は違う」と分けて考えて
疎遠になった関係を元に戻すことが難しい状況で解決策をお探しのようですが、それには二つのステップが大切です。
一つ目のステップは、「理解する」と「同意する」を分けて考えることです。
「ああ、それってわかる」「でしょ!」という会話をすることがあります。この場合の「わかる」は、“あなたのやり方や考え方を理解し、同意(賛同)する”という意味です。
しかし、英語では理解(understand)と同意(agree)は別。私はこの分け方をした方がいいと思います。「あなたの言いたいことは理解できるけど、同意はしない。私ならそのやり方はしない」という分け方です。
日本人は、「わかる」と言われれば「わかるなら、同意するはず」と思いがちですが、それは違うのです。
「姉のやり方、考え方には、きっとこんな理由があるのだろう」と推測して理解することはできるでしょう。だからといって、リラさんも同意する必要はありません。「でも、私なら違う考え方、やり方をする」としておけばいいのです。
そして二つ目のステップでは「姉のやり方には姉なりの理由があるのだな」「姉がそう考えるのはこんな理由があるのだろう」という理解が、いつの日か、
「今のように生きていくのは大変だろうな。気の毒だ」「今のような考え方をしていれば、あちこちでイライラがたまるだろう。考えてみればかわいそうだ」という共感や同情に変わっていきます。
そうなるまでは、適度な距離を保ちながらお付き合いし、リラさんご自身の人生を歩めばいいと思います。そう考えることが一つの解決策でしょう。
法的処理はしっかりと済ませて
お寺の住職として気になることが一つあるので、それについても触れておきます。
親の法事を子どもたちが一緒に行えない家があります。原因の多くは相続トラブルですが、もとになっているのは“欲”でしょう。
はたからは、欲という泥沼の中をもがいて、関係者全員が心身ともにクタクタになっているように見えることがあります。
相続のトラブルは、最終的に調停や裁判など法的な方法で決着するしかありません。しかし、法的に決着しても、双方の心情が平穏になるわけではありません。決着後も、「嫌悪」が「憎しみ」へとエスカレートすることもあります。
そんな状況を見るにつけて、親はそんなふうに育てたわけではないだろうと思うと同時に、親がそのように育ててしまったのかもしれないと思うこともあります。
相談の冒頭にある介護やご実家の空き家の管理など、今までリラさんが負担し、現在も負担したりしている事案については法律相談などを利用して、今後お姉さんとトラブルにならないように準備しておくことをおすすめします。
ちなみに私は、3人の子どもたちに「私が死んだ後に相続でトラブルになったら、化けて出るからな」と冗談半分、本気半分で伝えてあります。
お姉さんの生き方に同意する必要はありません。その中で、理解から共感というステップを踏めることを切に願っています。
回答者プロフィール:名取芳彦さん
なとり・ほうげん 1958(昭和33)年、東京都生まれ。元結不動・密蔵院住職。真言宗豊山派布教研究所研究員。豊山流大師講(ご詠歌)詠匠。写仏、ご詠歌、法話・読経、講演などを通し幅広い布教活動を行う。日常を仏教で“加減乗除”する切り口は好評。『感性をみがく練習』(幻冬舎刊)『心が晴れる智恵』(清流出版)など、著書多数。
構成=石丸繭子(ハルメク365)
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