50代からの女性のための人生相談・176

人生相談:私だけ介護をしていない…このままでいい?

太田差惠子
回答者
介護・暮らしのジャーナリスト
太田差惠子

公開日:2024.02.29

「50代からの女性のための人生相談」は、読者のお悩みに専門家が答えるQ&A連載。今回は、57歳女性の「実の両親は義姉が、義母は夫が介護。私は誰の介護もしていない…」という相談に、介護・暮らしのジャーナリスト、太田差惠子さんが回答。

57歳女性「一度介護拒否された義母の介護」についての相談

現在、私の父(86歳)は高齢者施設に入居していて、先日股関節骨折をして手術予定です。母(83歳)も認知症が進んで施設に入居していましたが、現在は病院で点滴につながれ延命中という状況です。

両親の介護は、兄のお嫁さんがすべてやってくれています。県外に嫁いでしまった私は、何もしてあげられない状況です。

夫の家族の方は、結婚当初、数カ月だけですが一緒に住んでいましたが、折りが合わず、現在は別々に暮らしています。

一緒に住んでいたときに「老後、あなたに面倒を見てもらわなくてもいい!」と義母から言われたことに私は引っかかっていて、そのままにしています。そのため、夫が義母の面倒を見ています。

父と母の面倒を見てくれている義理の姉に相談すると「見てあげた方がいい」と言われます。私は、24年前に言われた「面倒を見てもらわなくてもいい!」という言葉がいまだに許せないので、義母に会うのも嫌です。でも、このままでいいのかと悩みます。

私だけが、誰の介護もしていないままでいいのでしょうか?

(57歳女性・さっちゃんさん)

太田さんの回答:主たる介護者でなくてもできることを

太田さんの回答:主たる介護者でなくてもできることを

遠方で暮らす実父母の介護は義姉が、夫の母親の介護は夫が担っておられるとのこと。「自分だけ介護をしておらず、このままでいいの?」とのお悩みですね。

高齢の親が要介護になると、子が協力し合ってサポートする、というのが理想的なのかもしれません。けれども、現実は同じ労力、同じ時間で分担するのは難しく、誰かが主となって介護を担うケースが多いといえます。

しかし、介護の周辺には行わなければいけないことがいろいろとあります。

例えば、親子間のコミュニケーション。親世代の方から「このオムツ、ゴワゴワして嫌」「入院中は個室に入りたい」などの話は「お嫁さんには言いにくい」と聞いたことがあります。

また、いわゆるお嫁さんの立場の方から「病状についての医師からの説明を聞いたり、今後の治療への希望を話したりするのは、責任を伴うから実子に担ってもらいたい…」と聞くことがあります。“終末期治療”のことなども義理の関係では立ち入りにくいものです。

さっちゃんさんは、今回のお悩みを義姉に相談されたとのこと。つまり、義姉とは良好な関係なのだと推察します。

義姉が困っていることがないか、疲れていないか、などを聞くこともできるでしょう。「いつもありがとうございます。私にできることはありませんか」と伝えることで、負担を分担してもらえることもあります。入院中の親に付き添いが必要なら交代することもできるでしょう。

夫の健康面のサポートなどの「後方支援」も介護のうち

夫の健康面のサポートなどの「後方支援」も介護のうち

義母の介護については、「義母に会うのも嫌」ということなら、無理に会いにいくことはないと思います。

女性が介護を担わなければいけないという決まりはないので、実子である夫が担っても問題はありません。過去にあった出来事により傷ついた気持ちは、簡単に癒やされるものではないでしょう。

できれば、夫にはその気持ちを話し、理解をしておいてもらいたいですね。そして、義母の介護にタッチできなくても、夫が介護でストレスをためていないか、健康面のサポートをできないでしょうか。

さっちゃんさんに対しひどいことを言った義母は、プライドの高い方ではないかと想像します。夫も介護に手こずっていませんか?夫が義母のことを一人で抱え込みストレスをためこまないよう、話を聞いてあげましょう。

もし、サービスを入れていないようなら、介護サービスや施設についても必要に応じて情報提供するといいと思います。もしも介護保険の申請もしていない状況なら、夫の代わりに地域包括支援センターに問い合わせを。相談だけなら、義母に会わなくても行えます。

直接的なお世話をしなくても、後方支援を担えば、主たる介護者の心的負担は軽減します。また、さっちゃんさんの「自分だけが介護をしていない」というお悩みからも解放されるのではないでしょうか。

以上は、すでに実行されていることかもしれません。それなら、「自分は何もしていない」と思い悩むことはありません。義姉も、夫も、さっちゃんさんの存在を頼りにされていると思います。

回答者プロフィール:太田差惠子さん

回答者プロフィール:太田差惠子さん(介護・暮らしジャーナリスト)

おおた・さえこ 介護・暮らしジャーナリスト、AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)。京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」 等の視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。著書に『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと第3版』(翔泳社)、『得する!楽しい!安心!シニアの暮らし便利ブック』(産業編集センター)、『親の介護で自滅しない選択』(日経BP)など多数。


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