50代からの女性のための人生相談・163

人生相談:一人っ子の夫。義父母の介護は妻がするの?

太田差惠子
回答者
介護・暮らしのジャーナリスト
太田差惠子

公開日:2023.11.26

「50代からの女性のための人生相談」は、読者のお悩みに専門家が答えるQ&A連載。今回は、62歳女性の「夫の両親の介護…夫は自分事として考えていないけど、私がしないとダメ?」という相談に、介護・暮らしのジャーナリスト、太田差惠子さんが回答。

62歳女性の「夫の両親の介護について」の相談

現在92歳の夫の両親は、遠方で二人で暮らしています。

まだ介護は必要な状況ではありませんが、近い将来、介護が必要になるのではないか?と思っています。

夫は一人っ子で「両親はいつまでも元気だ!」と思っている節があるので、介護のことは何も考えていないようです。私はまだ仕事をしていますし、できれば介護はしたくないと考えています。

義父母の介護のことや、その先の実家の処分やお墓の問題などを考えると不安が募ります。

一人っ子の夫の両親の世話は、私がしなければならないのでしょうか……?また、夫に「自分事」として考えてもらうためには、どのように話し合ったらいいのでしょうか?

(62歳女性・れんばばさん)

太田さんの回答:手を出し過ぎず、夫を待つのも重要

太田さんの回答:手を出しすぎず、夫を待つのも重要

義父母様は92歳でお二人とも介護は必要ではないのですね。れんばばさんの夫が「両親はいつまでも元気だ!」と考えておられるということは、義父母様は愚痴や悩みを言ってこられるわけでもなく、身体的にはもちろん、精神的にも自立して暮らしておられるのだろうと推察します。ご立派なご両親ですね。

れんばばさんは「できれば介護はしたくない」とお考えなのですね。それでいいと思います。「一人っ子の夫の両親の世話を妻がしなければならない」などという決まりはありません。

義父母様の介護のことや、実家の処分、お墓の問題などは、実子である夫にしかできないことです。なぜなら、いずれも義父母様の「意思」を確認し、さらに「お金」を動かさなければならないからです。

義父母様は何を望み、そのためにどういうふうに金銭を使い、人生を全うしたいと考えておられるか。その気持ちや価値観に寄り添い、確認することは義理の関係のいわゆる「嫁」の立場では難しいと言えるでしょう。

それに子どもには親に対して扶養義務がありますが、「実子」にあるのであって「嫁」にはありません。

夫に任せて自分はサポート役に徹する

大切なのは、手を出し過ぎないこと

今後必要となることを具体的に考えてみましょう。将来のことはわからないので、あくまで仮定です。

  • 義父母様のどちらか(もしくは二人)が倒れる。入院すれば、駆けつける
  • 介護保険の申請をして、ケアマネジャーと二人三脚で二人の生活をサポートする
  • 場合によっては、どちらか(もしくは二人)を高齢者施設に入居させる
  • 在宅、施設、いずれにしろサービスを利用するには契約、支払いが発生するので、その管理を代行する

義父母様のご年齢から考えて、「その時」はそれほど遠い時期ではないかもしれません。大切なのは、「その時」が来たら、れんばばさんが動き過ぎないこと。「私が“主”となって動くことはできない」とはっきりと夫に伝えましょう。

夫が動かない場合も、ぐっとこらえて夫が動くのを待つ。夫は一人っ子とのことなので、多少行動が遅くなってもきょうだいに負担を強いることがないのが幸いです。

入院となれば家族が入院保証人になる必要があるでしょう。介護サービスを利用したり施設に入居したりとなれば、契約を代行することになるでしょう。年齢から考えると、病院や施設からは延命治療の希望有無も問われると思います。

「契約や保証など大切なこと、ましてや延命治療の希望有無の確認など、義理の関係の私ではムリ」と言い、夫に任せましょう。主となるのは夫、れんばばさんは夫の指示を得て夫のしなければならないことをサポートする役と考えるのがいいと思います。

大切なのは、手を出し過ぎないこと

介護が発生した際に、大切なことを夫に任せることで、将来的に実家やお墓のことも夫が担うことが当然となるでしょう。そもそも義実家も墓も夫が相続することになるので、法的にもそれらの管理義務は夫に生じます。

夫に「自分事」と捉えてもらうには、以上のようなことを折りに触れて話すこと。思い切って、この相談記事を「れんばばさん」を知らない他人と偽り、「お義父さんやお義母さんと同年代のケースが載っているよ」と見せてみるのも一案です。

回答者プロフィール:太田差惠子さん

回答者プロフィール:太田差惠子さん(介護・暮らしジャーナリスト)

おおた・さえこ 介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長、AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)。京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」 等の視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。著書に『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと第3版』(翔泳社)、『得する!楽しい!安心!シニアの暮らし便利ブック』(産業編集センター)、『親の介護で自滅しない選択』(日経BP)など多数。


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