50代からの女性のための人生相談・161

人生相談:一人暮らしの親の終活…一緒に進めるには?

阿部絢子さん
回答者
生活研究家・薬剤師
阿部絢子

公開日:2023.11.23

読者のお悩みに専門家が答えるQ&A連載。今回は64歳女性の「90代で一人暮らしの父。ものを捨てられない性格なので元気なうちに一緒に終活片付けをしたい!」という相談に、消費生活アドバイザーの阿部絢子さんが回答します。

63歳女性の「一人暮らしの父の終活片付け」についての相談

現在、車で1時間ほど離れた実家では90代の父が一人暮らしをしています。

まだ元気なのでいいのですが、父はものを捨てられない性格なので家の中は多くの荷物であふれています。今後、父が施設に入ったり、亡くなってしまったりしたら、家の片付けをどのようにしたらいいか悩みます。

父が元気なうちに少しずつ片付けを始めたいと思うのですが、どのように進めればいいのか、わかりません。

(63歳女性・とこしえさん)

阿部さんの回答:ものの片付けの前に「重要書類」の確認を!

阿部さんの回答:ものの片付けの前に「重要書類」の確認を!

親が元気なうちは気にかけないことですが「急に体調を崩した」「病気で入院した」「怪我をして通院」など思わぬ知らせが届くことがあります。そのとき、親の「かかりつけ病院やクリニックは?」「保険は?」「保険証は?」など、不明なことがあったことに気が付くのではないでしょうか。

親に多少の問題が起きていても、一人で病院に通い、保険証や支払い、その後の保険請求手続きまで管理できるうちは、特に問題はありません。しかし、高齢になった親の一人暮らしではこうした身体に関わる問題が、どのような状態で発生するか予測できないのです。

阿部さんの回答:ものの片付けの前に「重要書類」の確認を!

一人暮らしをしていた私の親戚は、足が悪く買い物に出掛けるのもままならない状態でした。時々、兄妹が様子を見ていたものの、ある日突然室内で倒れてしまいました。意識がない状態で気にかけてくれていた近所の方に発見され、急遽入院となりました。

兄妹が駆けつけ、真っ先に保険証や各種保険、現金などを見つけようとしました。しかし、普段からこうした経済的なことを話していなかったこともあり、兄妹には見つけ出すことができませんでした。

とりあえず立て替えで急場を凌ぎ、その後、本人の状態が回復した頃に代理として保険などの手続きをすることとなり兄妹が出向きました。しかし定期預金の引き出しに限り「本人のみ」が行えるとのことで、全面解決には至りませんでした。

この話を親戚から聞き、私が最初に考えたのが、高齢者一人暮らしでの片付けの重要性の第一選択は、「ものではない」ということでした。整理しておくべきは、重要書類と言える「親の経済面」ではないでしょうか。

親がどのような経済で暮らしをしているか、そして、どのようにそれらを管理しているか、ということです。「親はまだ元気だから大丈夫」「親の頭がしっかりしているから安心」「親が嫌がる内容だから」などと、整理を先延ばしにしているうちに、時は経っていきます。

予測不可能の体調不良に備えて親子で経済的な話を

予測不可能の体調不良に備えて親子で経済的な話を

病気入院なら回復後に解決できそうですが、もし万一、急に悪化し帰らぬ人となってしまったら、経済的問題が発生することは目に見えています。こうした思わぬ問題発生を回避するためにも、経済管理を優先して、片付けをしていくことが大事だと、私は思います。

とこしえさんのお父様は、ものを捨てられない性格であるということですが、経済的管理はしっかりされているのでしょうか。まずは、ものを片付ける前に、お父様の経済管理から話をして、もし管理されていない場合には、一緒に整理して管理されてみてはいかがでしょうか。

年金をはじめとする預金のこと、証券をお持ちならその証券のことなども含めて、通帳や証券などがどのようになっているか、どこに保管すればいいか、各種のカード類もあればそれらのパスワード番号も確かめておくこと。それらをまずは話してみることが必要です。

親子の仲で経済的な話をするのが、終活片付けの第一歩です。例えば保険証や各種保険類、通帳などの書類整理や整理管理を決めることから始めてはいかがでしょうか。

暮らしにものは必要ですが、それ以上に、高齢者一人暮らしでは経済的管理が重要であることは言うまでもありません。

人はいつかは老い、病となり、死を迎えていきます。先ほどの例でも述べましたが、老いの身体的不具合は、予測不可能です。それに、回復に関わる費用なども、暮らしへ占める割合が大きくなっていくのです。

また、老いの加速に伴い、今後はケアや介護などが必要になってくるかもしれません。

何事も元気なうちに、準備しておくことが欠かせないのではないでしょうか。「備えあれば憂いなし」ということです。

回答者プロフィール:阿部絢子さん

回答者プロフィール:阿部絢子さん

あべ・あやこ 1945年、新潟県生まれ。生活研究家(消費生活アドバイザー)・薬剤師。家事全般や食品の安全性の専門家として活躍。薬剤師の資格を持ち、今も現役で働いている。


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