50代からの女性のための人生相談・116

人生相談:老後におすすめの投資方法と金額を知りたい

畠中雅子
回答者
ファイナンシャル・プランナー、CFP(R)
畠中雅子

公開日:2023.02.18

更新日:2023.11.21

老後資金のお悩み相談Q&A。今回は61歳の女性「貯金は300万。70歳まで手取り16万円で働けます。投資を始めようか検討中」。制度が拡充するNISAがおすすめかと思いきや、まさかの始めるべきではない! FPの畠中雅子さんの回答の理由とは?

回答者プロフィール:畠中雅子さん

畠中先生

はたなか・まさこ 1963(昭和38)年生まれ。ファイナンシャル・プランナー、CFP(R)。『お金のプロに相談してみた!息子、娘が中高年ひきこもりでもどうにかなるって本当ですか?』(時事通信社)他、著書は70冊以上。また「ミニチュアワールドと観光列車」に造詣が深くブログを開設している。

61歳女性の「投資方法と金額の目安」についての相談

終活を機会に、家と車、今までの仕事などを清算して一人で地方に移住しました。

手元に残った貯金は300万円。他に終身保険の保険料を一括で支払っているので、こちらを解約した場合の解約返戻金が現時点で800万円ほどあります。子どもたちも独立しているので、お金を残す必要がないと考えているので、終身保険は有事の際に解約する予定です。

現在は、組合職員として正規雇用で働いています。給与は手取り16万円程度と安価ですが、社会保険完備、70歳定年が魅力です。

分譲マンション住まいのため、管理費などで月3万円程度。それに加え、水道光熱費と携帯・Wi-Fiの料金などを入れて、月の固定費は2万円強です。

毎月の支払いで必要金額以外のお金で、積立NISAなど、投資を始めようか思案中です。おすすめの投資方法や、投資に回す金額の目安などを、教えてほしいです。

61歳女性・すうさん

畠中さんの回答:これからの運用はおすすめできません

畠中さんの回答:これからの運用はおすすめできません

今回のご相談に対しては、結論から述べさせていただきますね。

すうさんの現状を拝見したところ、これから運用を始めるべきではないと考えます。

運用を始めるべきではない理由として、家電の買い替えや冠婚葬祭費、介護費用などの特別支出によって、この先、貯蓄が減る可能性があること。つまり、現在お持ちの貯蓄だけでは、老後資金が不足する可能性があるということです。

運用は余裕資金で行うべきもので、若い世代の方であれば、多少のリスクを取ってもいいと思いますが、60代に入られているすうさんに、今からリスクを取ることはおすすめできません。

そして、もう一つ。将来、すうさんが認知症と診断されてしまうと、仮に後見人を付けたとしても、運用商品については死ぬまで換金できなくなります。

後見人さえ付ければ、運用商品も換金できると思い込んでいる人が少なくないのですが、運用商品を保有している状態で認知症と診断されると、そのお金は相続財産としてお子さんたちに継承はできるものの、自分のためには使えなくなります。

ちなみに、認知症と診断される前であれば、家族信託のような仕組みを利用して、認知症を発症した後も株の売却ができるようにする方法はあります。

ただし、信託する金額が数百万円だと、家族信託はおすすめしづらいのが現実です。手数料が割高になってしまうからです。

まずは「ねんきん定期便」で年間の赤字額を算出

まずは「ねんきん定期便」で年間の赤字額を算出

今のすうさんにやっていただきたいのは、年間の赤字を見積もることです。

ねんきん定期便で自分がもらえる年金額を確認して、月々の赤字と年間の特別支出を見積もってみてください。

仮にすうさんが95歳まで生きられるとして、年間の赤字額に34年(95歳から現在の年齢61歳を引いた年数)をかけてみると、おおまかにこれから必要な老後資金が見積もれます。

現在は働かれていますし、70歳まで働けるとのことなので、働かれている時代と、年金だけで暮らす時代の2つに分けて赤字額を計算すると、より現実的な数字を算出できるでしょう。

95歳までの赤字額を見積もってみると、現在お持ちの貯蓄では足りなくて、終身保険に手を付けてしまう可能性はありませんか?

貯蓄に余裕がないような状況で運用をはじめたとして、うまく増えればいいですが、減ってしまったら生活への不安は大きくなるはずです。

運用商品が凍結しても老後の生活設計は大丈夫?

運用商品が凍結しても老後の生活設計は大丈夫?

また前述の通り、認知症になってしまったら、そのお金は凍結されてしまうわけですから、高齢期の運用には価格変動以外にもリスクがあることを認識すべきではないでしょうか。

2024年にNISAの制度が拡充することもあり、新たに運用を始めたいと考えている方も増えていますが、運用はあくまでも余裕資金で行う必要があります。

高齢期に入られてから運用をしようと思う場合は、万が一、運用資産が凍結しても、老後の生活設計に問題がないかを見積もってから、始めるか、やめるかを判断すべきだと考えます。

構成=石丸繭子(ハルメク365)

※この記事は2023年2月の記事を再編集して掲載しています。


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