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- 2020年シニア女性の心に刺さったトレンドとは?
雑誌「ハルメク」のシンクタンク・生きかた上手研究所の所長・梅津順江が、ミドル~シニア世代の女性のトレンドを読み解きます。新型コロナウイルス一色だった2020年のトレンドを5つの切り口から考えます。
2020年、50代からの女性たちにヒットしたものとは?
今年を振り返ると「コロナ一色」だったように思います。日経MJヒット商品番付の横綱は東が「鬼滅の刃」、西が「オンラインツール」でした。流行語大賞は「3密(密閉、密集、密接)」、今年の漢字は「密」でした。
50代以上の女性“ハルメク世代”もコロナの影響を大きく受けました。ハルメクで話題になった特集やヒットした商品を振り返りながら、コロナ禍の50~70代の女性のココロを捉えたモノやコトを紹介します。
ミドル~シニア世代のデジタルシフト
雑誌「ハルメク」2020年8月号(7月10日発行)で、「スマホをもっと便利に楽しく使うコツ」を特集しました。事前調査では、わからないけど諦めていたことや基本的な使い方の復習に対する期待感が大きいことがわかりました。
そして、新規購読者の数は予測をはるかに超えました。読後も「スマホで困っていることを解決できた」「もっと勉強してスマートフォンを使えるようになったら楽しいことが増えそう」と好意的な感想が目立ちました。
また、ハルメクのオンラインメディアである「ハルメクWEB」もよく読まれました。「2020デジタルメディアランキング(2020.11.25MarkeZine掲載から抜粋)」 によると、Webサイト訪問者数が前年比で伸び率が高いトップ10に「ハルメクWEB」が6位でランクインしました。
ハルメクではこれまで講座・イベントを年に約200回、ニーズ探索や商品開発を一緒に考える座談会・ワークショップを年に約70回実施していました。残念ながら2020年2月以降、新型コロナウイルスの影響で参加者の安全を第一に考え、どちらも当面の間中止もしくは延期という決断をしました。
3月からは、「コロナ禍においても、読者の楽しみや社会貢献の場を提供したい」という一心から、オンライン講座やオンライン座談会をあらたに再開。これまでネットを使いこなす当該世代はひと握りで、「スマホは持ったけど電話やLINE、写真くらいしか使わない」「ネットは怖いので通販利用も電話やFAX」という方が多く、積極的な活用は進みませんでした。
しかし、「人と会うことが難しくなった」という外部要因が、この層を動かしました。オンライン座談会の参加を募ると「Zoomを使うのは初めてだけど楽しそう」「外出できないからこういったことも覚えていかないと……」と定員の数十倍もの応募、11月に実施した有料オンラインイベントでは100名超えの申し込みがありました。「感染リスクが低い」という確固たる動機づけは、デジタル世界に距離があった人にも影響を与えています。
一歩、踏み出しさえすれば、ネットの利便性が体験できます。実感を伴わないコトへの不安も消えます。ハルメク世代の生活に、デジタル活用は根づいていくことでしょう。
コロナ禍(2月~12月)でハルメク世代の行動はどう変わった?
ハルメク世代の消費行動や生活様式・マインドは、コロナによってどう変化したのでしょう。激動の2020年を時期別に区分すると、その都度、何に影響を受けたのか、どんな価値が高まったのか、新たに加わった価値はどんなことか、が見えてきます。さらには、一時的な現象で終わったモノやコト、続いていくであろう価値観や習慣を分析できるのではないでしょうか。
【コロナ禍における世の中の動きまとめ】
- 2月~3月(楽観期)
年配客を乗せたクルーズ船や海外旅行など、若者より中高年が叩かれた時期。なお、店頭から日用品や保存食品などが消えた時期でもある - 4月~5月(巣ごもり期)
世界中が外出自粛を控え、経済がストップした時期。マスクは手に入らなかった - 6月~7月(慎重期)
緊急事態宣言解除後、若者は巣ごもり疲れの反動で外出が目立ったが、中高年は巣ごもりの延長が続いた - 8月~10月(ゆる自粛期)
夏に第2波が到来するも、GoToトラベルキャンペーンがスタートし、経済復興にシフトし始める時期。中高年も自衛しながらではあるが、行動再開がみられた時期 - 11月~12月(引き締め直し期)
冬が来て第3波に突入し、「感染者数、過去最多」を更新し続けている。中高年は外出欲求を抑えながら長期戦に覚悟を決める
2月~3月:免疫力アップ消費
2~3月(楽観期)
「免疫力をつけたい」。これは、コロナ騒動前から読者が口にする顕在化している不変欲求。60歳を過ぎると、食事や運動などによって風邪や病気にならないようこれまで以上に予防・未病意識が高まるようです。
これから感染拡大が広がるであろうという頃、中高年の消費行動にはさほどの大きな変化はありませんでしたが、「自己防衛のため、免疫力をつけたい」という意識は健在でした。
この2月、ハルメク通販で爆発的に売れた商品があります。それは、「マヌカハニー」です。例年、インフルエンザや風邪が流行するこの時期、「喉をいたわる」「免疫力を高めたい」という理由で購入する人は多いですが、今年の勢いはケタ外れでした。
生きかた上手研究所では50~85歳女性520人に「新型コロナウイルスに関する調査(2020年3月17~20日)」を実施しました。「この状況下で心がけていることは何か?」の上位回答に「免疫力を上げる」「体力をつける」が挙がり、自己防衛意識の高まりが分かる結果となりました。
なお、店頭から食品や生活用品が消えた時期でしたが、当該世代は「できるだけ備蓄をする」は上位にきませんでした。目先の「備蓄」や「直接的な感染予防グッズ」より、いざという時に耐えられる「免疫力・体力(健康)を高める意識」が高いということなのでしょう。
体の基盤づくりに力点を置いた商品やサービス、自分の身を守るための情報は、今後も注目されるとみています。
4月~5月:「創意工夫」や「原点返り」に時間を費やす
4~5月(巣ごもり期)
新型コロナウイルスに伴う巣ごもりで、「外」に使っていた時間を「内(家)」に使わざるを得なくなりました。一人や同居の家族と過ごす時間が見直され、働く、楽しむ、どちらの時間帯でも、どう生産性や満足感を最大化するかということが課題になりました。
ハルメク世代の巣ごもり消費は、「テレビ・DVD鑑賞」などの暇つぶしだけではありません。「掃除・片付け」「家での筋トレ・ストレッチ」など“時間の有効活用”、「手芸」「食事(自炊)」など“おうちでできる創作活動”が目立ちました。
雑誌「ハルメク」5月号(4月10日発行)では「がんばらない疲れない捨て方&片づけのコツ」「病気も疲れも遠ざける、深睡眠ストレッチ」、同6月号(5月10日発行)では「家でできる!ぽっこりお腹&顔たるみすっきり新習慣」「小林カツ代さんのレシピと知恵」などを展開。
「コロナ禍ですがハルメクを読んで励まされたり元気になったりできます」「不要物の役立つ手放し方が参考になりました」「料理や体操を実践できてよかった」「折り紙をもう一度折ってみました」などの感想が寄せられました。
ホームステイ中の時間の費やし方を見直し、おうち生活を豊かにするために、創意工夫や原点返りをするハルメク世代の暮らしぶりが垣間みられました。
ハルメクWEB(オンラインメディア)では、「マスク関連記事」のアクセス数が急増しました。同時期に通信販売で展開した「ミシン」も好調でした。この世代の女性は手先の器用な方が多く、創作意欲が旺盛です。身近なモノやコトに手をかけられる時間が増えたことをきっかけに、どうせなら原点に返って楽しめることをしようというプラスの発想が生じたのではないでしょうか。
6月~7月:「おうち時間」を快適にする“買い足し”消費
6~7月(慎重期)
緊急事態宣言解除で外出自粛が緩和されても、ハルメク世代は慎重でした。しかし、もともとあった外出意識や買い物欲求がこれまでと違うカタチで現れます。
この時期に実施したオンライン座談会で頻繁に聴いた発言があります。それは「家にいることが嫌いでないことに気付いた」と「お金を使いたい。どうせ買うなら高価なモノ」というもの。
おうち時間を有効に活用したり、快適に過ごしたりするために時間とお金を惜しみなく費やします。
旅行もショッピングも外食もできないので、地域を応援するために名産をお取り寄せしたり、家庭菜園を始めたりする人もいました。そして、テレビショッピングや通信販売に消費欲求の矛先が向かいました。
「コロナ後、購入したモノ・コト」を聞きた際には、ワンランク高い食材やガーデニンググッズ、調理家電(ホームベーカリーなど)の“買い足し”消費が挙がりました。当該世代は、おうち時間に“充実”や“効率化”より“快適”や“豊かさ”を求める傾向が見られました。
ハルメク通販でこの時期、「日本製ガバッと見やすい牛革ショルダーバッグ」「久留米織のチュニックベストやスリッパ、久留米絣のプルオーバー」など国産の良質な素材を使ったバッグやホームウエア、「群言堂のブラウス(家&外の両用着)」など高額な洋服が売れました。
また、室内でできる運動動画「毎日のきくち体操DVD」や室内用運動器具「らくティブステップ」「骨盤ねじねじツイスター」「ル・プリエスクワット」なども好評でした。
8月~10月: “買い替え”と“気分転換”消費
8~10月(ゆる自粛期)
今年は梅雨明けが遅く、8月からが夏本番でした。しかし暑くなっても感染者数が衰えることはありませんでした。時間の価値を昇華させ、さらに空間を含めたおうちを快適にしたいという欲求が現れます。お金の使いみちも、大物家電(冷蔵庫やクーラーなど)の“買い替え”消費が対象になってきます。
ハルメク通販では、『なんでもない日常を特別に』というフレーズで打ち出した「洗える手引き真綿の肌掛け布団」「肩腰にやさしい私の抱き枕」「腰にいい敷きパッド」などの寝具が絶好調でした。
この時期、読者から「運動不足だから眠れない」「入眠剤の量が増えた」「生活のリズムが作りづらくなった」など、睡眠にまつわる悩みをよく聞きました。寝具の買い替えが進んだ背景には、「睡眠の質を高めたい」「脳やカラダの疲れを根本から取って心身をバテさせたくない」という要求に合致したことも関係したとみています。
一時的に感染者数が落ち着いた時期に、GoToトラベルキャンペーンがあり旅行への思いが喚起されました。ハルメク通販では新しい旅の提案として、「わくわく増える旅の新常識」「自分専用の私物を持とう」という企画をうち、「自分専用楽ちんパジャマ」「抗菌手袋」「抗菌トラベルカーディガン」「配色ロングカーディガン」を発売。完売しました。
一方、外出自粛の長期化に伴い、心身ともにコロナ疲れが出てきます。「料理の負担が増えた」「外出していないからストレスがたまっている」という不満や「通販でおやつを買う頻度が増えた」というプチ贅沢な消費行動が聞かれました。メリハリや切り替えを求め、“気分転換”消費が出てきたのです。
11月~12月: “新たな自分探し・自分磨き”消費
11月~(引き締め直し期)
冬が来て第3波に突入し、「感染者数、過去最多」の更新ニュースが流れています。GoToトラベルも全国一律停止になり、日本経済が危ぶまれています。外出や旅行を諦め、長期戦に向けて、冬の巣ごもりを検討しなければならないのでしょうか。
ハルメク世代はじっとはしていないようです。この頃、読者から「新たな趣味を始めた」という話を聞きます。具体的には、「短歌の通信教育をはじめた」「前からやりたかったバイオリンをネットで買った」「折りたたみ自転車を買った」など、“新たな自分探しや自分磨き”消費にお金を投じていました。
社会や経済に惑わされることなく、自分は前を向いて行こう、新たな気持ちで新年を迎えようという気概を感じます。そんなマインドに合う商品やサービスを来年も読者と一緒に見つけていけたらと思います。
まとめ
当分の間、コロナは収まりそうにありませんが、2021年(令和3年)は、どんな年になるのでしょうか。
生きかた上手研究所では、年間100本近くのアンケート調査を実施し、コンテンツや商品に役立てています。また、年間1000人ほどの読者にインタビューして、リアルな意識を把握したり、表面化していない欲求を探ったりしています。これからも読者に寄り添いながら、役に立つ情報や商品づくりのヒントを見出していきます。
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