【健康特集】口の力を強くして全身の健康を守る#1

「口の渇き」も危険なサイン!お口の老化をチェック

公開日:2024.05.01

口の渇きが気になる、飲み物でむせることが多い……口の機能が衰えた状態「オーラルフレイル」かも。オーラルフレイルを放置すると徐々に全身の機能が衰え、将来、要介護状態に陥る恐れがあります。まずは、チェックリストでお口の状態を確認してみましょう。

「口の渇き」も危険なサイン!お口の老化をチェック

教えてくれた人:松尾浩一郎(まつお・こういちろう)さん

教えてくれた人:松尾浩一郎(まつお・こういちろう)さん

歯科医師。東京医科歯科大学大学院地域・福祉口腔機能管理学分野教授。1999年、東京医科歯科大学歯学部卒業。米国ジョンズ・ホプキンス大学医学部講師、松本歯科大学准教授、藤田保健衛生大学教授などを経て、2021年から現職。歯学博士。専門は高齢者歯科学、摂食嚥下リハビリテーション。オーラルフレイル予防の「カムカム健康プログラム」活動に携わる。

お口の健康が損なわれると老化へまっしぐら!

お口の健康が損なわれると老化へまっしぐらに!

食べ物を噛む、飲み込む、話をするといった口の機能が低下すると、食事や会話にも影響が出てきます。これが「オーラルフレイル」と呼ばれる状態です。オーラルは「口の」、フレイルは「虚弱」を表しています。

最近、「食事のときに汁物でよくむせる」、「滑舌が悪くなった」という方は要注意です。実は、オーラルフレイルは口だけの問題にとどまらず、全身の「フレイル」に進む“入り口”であることがわかってきました。

「噛む力や舌の力が弱くなったり、歯周病で歯が抜けたりすると、軟らかいものばかり食べるようになって栄養が偏ってしまいます。また滑舌も悪くなり、会話や外出の機会も減ることに。

つまりオーラルフレイルになると栄養と社会活動の両面から心身の衰えが進み、全身のフレイルにつながってしまうのです」と、歯科医師で東京医科歯科大学大学院地域・福祉口腔機能管理学分野教授の松尾浩一郎さんは話します。

フレイルはどんな状態?

フレイルはどんな状態?

フレイルとは、加齢とともに心身の活力や機能が低下して病気にかかりやすくなった状態で、介護が必要になる少し手前の段階とされています。

具体的には体重減少、筋力低下、疲労感、歩行速度の低下、身体活動の低下のうち、3つ以上当てはまるとフレイル、1~2つの場合はフレイル予備軍とみなされます。

千葉県柏市の住民を対象にした大規模調査では、オーラルフレイルの人はそうでない人に比べ、フレイルになるリスクが2.4倍、要介護認定になるリスクも2.4倍、総死亡リスクも2.1倍高かったと報告されています(*)

「たかがお口の不調」と軽く考えていたら大変。心身の老化は、お口から始まるのです。

*Tanaka T, Hirano H, Watanabe Y, Iijima K. et al. Oral Frailty as a Risk Factor for Physical Frailty and Mortality in Community-Dwelling Elderly. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2018

お口の変化チェックリスト

「口の機能は、放っておくと気付かないうちに落ちていきます。ご自身の口の機能が今どんな状態なのか、まずはチェックしてみてください」と松尾さん。

次の8つの質問に答えてみましょう。合計点が4点以上ならオーラルフレイルの危険性が高く、3点だと危険性ありです。

あなたのお口は大丈夫?まずはチェックしてみましょう

あなたのお口は大丈夫?まずはチェックしてみましょう

  • 半年前に比べて、硬いものがたべにくくなった(はい2点、いいえ0点)
  • お茶や汁物でむせることがある(はい2点、いいえ0点)
  • 義歯を入れている(はい2点、いいえ0点)
  • ※歯を失った場合、義歯等を適切に使って硬いものをしっかり食べられるよう治療することが大切です。
  • 口の渇きが気になる(はい1点、いいえ0点)
  • 半年前と比べて、外出が少なくなった(はい1点、いいえ0点)
  • さきイカ、たくあんくらいの硬さの食べ物を噛める(はい0点、いいえ1点)
  • 1日に2回以上、歯を磨くはい0点、いいえ1点)
  • 1年に1回以上、歯医者に行く(はい0点、いいえ1点)


すべての質問事項に答え、該当する回答の点数を合計してください。

合計点の点数で危険性をチェック

0~2点:オーラルフレイルの危険性は低い
3点:オーラルフレイルの危険性あり
4点以上:オーラルフレイルの危険性が高い

チェックリスト出典:東京大学高齢社会総合研究機構 田中友規、飯島勝矢

「危険性が高い人も適切なケアを行えば、健康な状態に戻すことが可能です。もちろん、一番大事なのは予防。口の健康を意識したケアと生活習慣を早速始めてください」と松尾さん。

次回は、オーラルフレイルの対策法を紹介します。

取材・文=佐田節子、イラストレーション=山村真代、構成=大矢詠美(ハルメク編集部)

※この記事は雑誌「ハルメク」2023年8月号を再編集しています

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