平野レミさんの料理をおいしくする秘訣(2)

食材に人格あり。食材の生かし方と豚の角煮風レシピ

公開日:2021/03/30

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テレビでも人気の料理愛好家・平野レミさん。新刊のエッセイ集『家族の味』(ポプラ社刊)では、料理の腕を磨いた経緯や料理の魅力を語っています。その中から料理をおいしくする秘訣を抜粋してお届け。今回は食材の生かし方と豚の角煮風のレシピです。

食材に人格あり。食材の生かし方と豚の角煮風レシピ

恋愛のように食材の人格を尊重してあげよう

恋愛のように食材の人格を尊重してあげよう

食べ物の個性っておもしろいです。人格と言いたいくらいね。とりたてのねぎを生で食べたら「辛ーいっ!」って思うでしょ。それを火にかけて炙ってみると、「甘ーい」って人格が変わっちゃう。せっかく甘くおいしくなったねぎにうま味調味料をかける必要なんかぜんぜんないんだから。

新婚当時、豚の角煮を作ろうと思って豚肉を煮込んでいたのね。醬油、お砂糖、お酒で味つけして。もういいかな、やわらかくなったかなって箸を入れると、中に入ることは入るんだけど、引っかかる感じなのね。思いどおりにやわらかくなってないの。「一所懸命煮込んでるのに、どうしてどんどん固くなっていくんだろう」って、不思議だった。

本に書いてあるかな、って持ってるお料理の本をいろいろ見ても書いてない。しょうがないから自分でいろいろやってみようと思って、とりあえず調味料を何にも入れないで、肉だけをコトコト煮込んでいたら、お箸がすっと入る瞬間がきたのね。お肉が向うから「入っといで、入っといで」って誘ってる感じで。そのあと、醬油とかお砂糖とかお酒とか入れたら、すうっとしみ込んでいくの。さっきの固い肉とは見違えるほど、おいしく味がついたのね。

私そのとき思ったの。恋愛だって、相手と親しくもないうちに、一所懸命男の人が「好きだ、好きだ」って言ったって「なに言ってんのよ」みたいになるじゃない。努力して親しくなって、待って待って、ムードがよくなってから「好きだよ」って言われたら、「あらそうだったの、嬉しいわ」って受け入れられる。気持ちがやわらかくなってるのよね。

食材も同じだと思いました。固いうちに、「ほら、入れっ」ってやってもだめなの。相手の気持ちを尊重すればうまくいく。人間も食材もね。

平野レミ流!豚の角煮のレシピ

豚の角煮風

(1)豚バラ肉のかたまり500グラムを鍋に入れ、肉にかぶるほどの水と、しょうが、八角まるまる1個、ねぎを加えて1時間強、豚肉がやわらかくなるまで火を通す。しょうがたちはサヨナラして、豚は皿に盛る。

(2)ゆで汁1/2カップを残して、砂糖、醬油、蜂蜜、紹興酒(または酒) 各大さじ1杯を小鍋に入れ火にかける。仕上げに水とき片栗粉でとろみをつけ、たれを作る。

(3)豚を食べよく切って、とろみのついたおいしいたれにつけて食べる。

そんなふうに考えると、いつも食材が私を待っててくれるような気がして、「今日は何にしようかな」って一回一回の料理が楽しくなるんです。

春夏秋冬、旬の食材の生かし方

春夏秋冬、旬の食材の生かし方

料理の最初は、まず買い物。「カレーを作ろう」と思ってうちを出ても、お店に新鮮な筍が泥つきのまんま並んでたら、「カレーはやめ。今日は筍にしよう」って、その場で変わっちゃう。

これも人間と同じ。出会いが大切。旬のものはやっぱり元気があって、何でもおいしいの。安いしね。

春先はタラの芽がおいしい。九州の人が「山の中に入って泥だらけになってとってきたよ」ってどっさり送ってくれたの。

まず天ぷらにして食べて、残った分をお吸い物に入れました。そしたらしっかり苦いのね。とっさに思いついて入れたもんだから、アク抜きをしてなかったの。「タラくん、あなたの気持ちはわかったよ」って言って、熱湯の中にタラの芽を入れて、アクをとってから水に通して、もう一度お吸い物に入れたらちやんとおいしくなってくれた。

考えて手をかけてあげないと、タラの芽もいやなんでしょうね。

「アクとってから食べて一」って、ちゃんと主張するのよね。お肉もタラの芽も人格を持ってるんだと思って、ひとつひとつコミュニケーションとって、「これでいい?」って聞きながらやってくと、ちゃんとおいしくなってくれるんです。

夏においしいキュウリの場合。豚肉と一緒に炒めようと思ったとき、キュウリを切ってそのまま豚肉と一緒に火を通しても、キュウリから水がどんどん出てぐったりしちゃうの。ここはキュウリの人格を尊重してあげる。キュウリの人格は歯ごたえ、シャキシャキ感でしょ。それを大事にするために、キュウリを切ってから塩をふるのね。そうすると中から余分な水気が出てくるから、キッチンペーパーで拭きとる。で、先に豚肉を炒めておいて、最後にキュウリをパッと入れて、チャッチャッとからめて、塩で味をつける。こうすればキュウリがパリッとしておいしくできます。「キュウリのいちばんいいところはどこかな」って考えて、尊重してあげるの。

秋はナスがおいしいわね。ナスは皮の紫色がきれいでしょ。その特徴を生かしてあげたいと思ったら、煮たいときもすぐ煮ないで、一度さっと油で揚げてから煮るの。いきなり煮ると皮の色が溶け出しちゃって、ナスが色あせて、煮汁の方が黒っぽくなって、味が変わるわけじゃないんだけど、見た目がおいしそうじゃなくなる。それでさっと揚げて油で皮をコーティングするの。そうすると色あざやかなままでいられるから。

冬はレンコン。薄切りにして、さっとゆでて、甘酢につけると「酢ばす」ができます。口あたりはパリパリシャキシャキ。このシャキシャキ感がレンコンの基本的な人格で、煮るときもふたをしないで煮ると、シャキシャキのまま。でもふたをして煮ると、ホクホクになって、人格が変わるのね。生のまますりおろして、丸めて蒸すと、ネットリネバネバの口あたりになります。こんなふうにやり方によってレンコンの人格がいろいろになるのもおもしろいでしょ。

 

平野レミさんのプロフィール

平野レミさんの『家族の味』

ひらの・れみ
料理愛好家。“シェフ料理”ではなく、“シュフ料理”をモットーに、テレビ、雑誌などで活躍。講演会、特産物を使った料理で全国の村おこしなどにも参加し好評を得ている。また、レミパンなどキッチン用品の開発も手がける。新刊『家族の味』(ポプラ社刊)では、夫の和田誠さんを偲ぶ心境もつづられています。
http://www.remmy.jp

 

※この記事は、平野レミ著『家族の味』(ポプラ社刊)の一部を抜粋し掲載しています。

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