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- 89歳の母から学ぶこと
1人暮らしとなった母を実家に通いながら介護している朝川さん。介護生活を送る中で、夫亡きあと母と同じく1人暮らしとなった自身の「老い」についても考えるようになったと言います。
1人暮らしをする者同士
父が他界して2か月後に私の夫が亡くなりました。
私は2か月の間に大切な2人と別れたことになります。当時、夜になると家の中が妙に静かに感じラジオを持ち歩いて音を出していました。そんな時母のことを思い出しました。
60年以上ずっと一緒だった父がいなくなった家で、父に頼り切っていたあの母は今何をしているのだろう。
84歳の母が1人で暮らしているのなら59歳だった私も1人で生活できるはずだと思いました。
今年の認定調査も要介護2
母は5年前から要介護2の認定を受けています。
今は週に1日訪問看護で看護師さんに薬の管理と体操をお願いしています。また週に1日1時間ヘルパーさんが訪問し話し相手になります。デイサービスは週に2日。夜の配食サービスは週に4日でこちらは安否確認を兼ねています。
私は誰も行かない日曜日に実家へ行き、家事をします。お昼ご飯も一緒に食べます。実家通いは父が闘病中からなので7年くらいになります。
母はまだ身体は動くけれど年々物忘れや勘違いが多くなっています。難聴のためか幻聴もよくあります。補聴器をしていれば問題はないけれど自分からは使いません。
気持ちを尊重する難しさ
父が元気な時から夫と一緒に同居を提案していました。母が1人になってからは折に触れ私の家での同居をすすめているけれど、まだ1人がいいと言います。
今は数か月ごとに私の家に来て1週間ほど一緒に過ごします。いずれ同居した時にお互いが慣れていた方がいいと思うからです。
1人が不安なことはある。でも1人の気楽さがあるようです。
私が高齢になり娘達から同居の話があったらと考えます。2人の娘たちの家族とは仲よくいい時間を持っています。
でも私も「この家で1人で暮らしていたい」と思うでしょう。
毎日朝夕母に電話をしているけれど補聴器をしていないのでなかなか通じません。病院のこと、体調のこと、宅配便のこと日々いろいろなことでいらいらすることがよくあります。私は何にいら立っているのでしょう?
それは私個人の都合によるものです。
母が電話に出なければ安心して外出ができない。今日は約束があったのに母のことでまたキャンセルしなくてはいけない。体調が悪いのに往復3時間かけてまた様子を見に行かなくてはいけない。
全部私のペースが乱れることに対してのいら立ちが多いことに気づきました。
老いの時間を共有して思うこと
私が老いたとき、娘たちが来て真っ先に私の家の冷蔵庫の食品を処分していく――。そうなったらたぶん悲しくなるでしょう。
そんなため息をつかないで! 声を荒らげないで! 不機嫌になってまで来てもらわなくて結構!
毎週母は私に対してそう思っているのかもしれません。
1年に1回は、1泊ですが一緒に温泉に行っています。その度に母は旅行の記念にとお揃いのお土産を買いたがります。同じ物を持っている、使っているということで私のことを身近に思いたいのかもしれません。強がっている母の弱さを感じる時です。
「老いとはどういうことか」
母が身をもって示している最後の教えだと思っています。
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