人生相談:老いた母親に優しくできない私はダメな娘?
2024.09.162024年12月20日
50代からの女性のための人生相談・199
人生相談:陰口を言う人と上手に距離をおくには?→3つの助言で心が軽くなる
読者のお悩みに専門家が回答するQ&A連載。今回は50歳女性の「グループLINEで陰口をたたく同僚と距離を置きたい」というお悩みに、仏教の教えをわかりやすく説いて「穏やかな心」へ導く住職・名取芳彦さんが回答します。
50歳女性「陰口ばかりの同僚に辟易。でも距離を置くのは怖い」
週3でパートに通っている職場は女性が多く、30代から60代まで幅広い世代がいて、活気があります。ときどき、誘い合ってお茶をしたり、軽く飲みに行ったり、楽しくやっています。
ところが、半年前にA子さんが入ってきてから、職場の雰囲気が変わってきました。
A子さんが、私を含め親しくなった人たちを誘ってLINEグループを作ったのですが、はじめのうちは、なんてことない楽しい会話でした。
それが、だんだん職場の不満やLINEグループに入っていない人の陰口を書くようになったのです。
なんとなくみんな「そういうところあるよね~」と合わせていたのですが、あまりにしょっちゅう書いてくるので、うんざりしてきました。
しかも、A子さんはこの手のLINEグループを他の人とも作っているようで、そちらでは私たちの誰かの悪口を書いているらしいと、別の人から聞きました。
せっかく楽しく働いていたのに、自分が悪口を言われているのではないかと気になり、パート先に行くのがつらく感じることさえあります。
LINEグループのメッセージを読むのも苦痛だし、既読スルーしたら何か言われるのではないかと不安にもなるし。どうしたらいいのでしょうか。
(コビトカバ・50歳)
名取さんの回答:悪口を言われることは、大した問題ではない
コビトカバさんのお悩みには、ご自身で整理しているように、
(1)A子さんの行動
(2)自分も悪口を言われているのではないか
(3)既読スルーしたときの反応が怖い
という3つの不安が絡んでいます。
ですから、どこかで線を一本引けば解決するものではなさそうです。
そこで、心おだやかに暮らすために、3つの問題の対処法を一つ一つお伝えします。ご参考になれば幸いです。
不安への対処法1:A子さんの行動
まず、A子さんについて。
「人の悪口、蜜の味」といわれます。この場合の悪口は、相手に直接言うものではありません。“告げ口”“陰口”の類です(直接言えるならアドバイスの一種でしょう)
悪口はおいしい蜜の味をしているかもしれませんが、それに夢中になれば暗い穴に落ちます。
釈迦の遺言ともいわれる『遺教経』に“わがまま”に関する一節があります。“わがまま”を告げ口、陰口に読み替えてみてください。
「蜜を探す人が蜂蜜ばかりに心が動けば、蜂蜜を取ることばかりに夢中になって、足元の深い穴に気付きません。わがままというのは、習慣性があって、なかなか直りません」
A子さんはこのままでは穴に落ちるでしょう。その穴は「いつか我が身が板挟みになる」という、彼女にとって、とても困った事態です。
仮に、コビトカバさんたちのLINEをグループ1、A子さんがつくっている別のLINEをグループ2としましょう。
今のところ、1と2のグループに接点はありませんが、A子さんは両方のグループに参加しています。2つのグループには接点がないので、A子さんは別のグループにいる人の悪口を言えます。
しかし、1と2のグループに接点ができたら、A子さんの立場はとても危うくなります。これが板挟み。双方にはさまれたA子さんは精神的に固まるか、ぺちゃんこになる可能性があります。
穴には、他にも「悪口を言っても“この人は観察眼がするどい”とは誰も思わない。悪口を言ったからといって自分が偉くなるわけではない。これらのことを、まだ知らないようだと呆れられる」という面もあります。
多くの人は、思春期にこうしたことを学び、告げ口や陰口を慎むようになりますが、A子さんは、告げ口、陰口が我が身に及ぼす弊害をこれから学ぶことになるのでしょう。
私としては、試練を受けるであろうA子さんにエールを送りたい気分です。
不安への対処法2:自分も悪口を言われているのではないか
次に、コビトカバさんの不安についてです。
不安に思わなくても、悪口は必ず言われていますから安心(?)してください。人の口に戸は立てられません。
私たちは、人が持っている多くの側面のうち、一つの側面を見てその人を評価します(職場に対するA子さんの不満も同様です)。その評価も、言い方一つでほめ言葉にも悪口にもなります。
例えば
「頭がいい=あざとい=抜け目がない」
「やさしい=お人よし=おせっかい」
「臨機応変=いきあたりばったり」
「人当たりがいい=優柔不断=自分がない」
「おおらか=ちゃらんぽらん=いい加減」
などです。
この「一つの側面だけで評価する」「評価する人の善意や悪意によって、表現が変わる」ということをわかっていれば、悪口を言われても、大した問題ではありません。
コビトカバさんの全体を見ているわけではないし、悪意のある表現ならそれをプラスイメージに変換して受けとればいいのです。いちいち気にしなくてもいいのです。
不安への対処法3:既読スルーしたときの反応が怖い
LINE上のやりとりは、言葉のキャッチボールのようなものでしょう。
キャッチボールの基本は、相手が受け取りやすい球を投げることです。LINE仲間にとって、A子さんが書きこむ職場の不満や他人の悪口は、受けとりにくい剛速球のようなものかもしれません。
それに対して
「A子さんの意見は理解できるけど“同意”はしない。I understand, but I don’t agreeです」
と剛速球を投げ返すこともできますが、変化球くらいは投げてもいいかもしれません。
私なら「ハ行」でコメントを返して楽しむかもしれません。
どのようにも解釈できる「はぁ……」「ひぇ~」「ふーっ」「へぇ~」「ほう……」だけで対応するのです。
そんなことをすれば、A子さんとの間に溝ができるかもしれません。
しかし、「たった一人に嫌わるかもしれない」と不安に感じたり怖がったりしなくても、コビトカバさんにはすでに一緒にいて楽しく愉快に過ごせる仲間がいますよね。
ですから、そのくらいの余裕(アソビ心)で対応してもいいと思います。それくらいしても罰は当たりません。
「少し前はA子さんに辟易し、接し方で悩んだっけなぁ」と、3か月後には笑顔で仕事を続け、楽しい日々に戻られていることをお祈りしています。
50歳になったコビトカバさんには、実現できる力が十分に備わっているはずです。
回答者プロフィール:名取芳彦さん
なとり・ほうげん 1958(昭和33)年、東京都生まれ。元結不動・密蔵院住職。真言宗豊山派布教研究所研究員。豊山流大師講(ご詠歌)詠匠。写仏、ご詠歌、法話・読経、講演などを通し幅広い布教活動を行う。日常を仏教で“加減乗除”する切り口は好評。『感性をみがく練習』(幻冬舎刊)『心が晴れる智恵』(清流出版)『心がほっとする般若心経のことば』(永岡書店)など、著書多数。
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