人生相談:高齢の母と暮らすため、夫と離婚したい

2024年10月31日

50代からの女性のための人生相談・198

人生相談:高齢の母と暮らすため、夫と離婚したい

「50代からの女性のための人生相談」は、読者のお悩みに専門家が回答するQ&A連載。今回は54歳女性の「離島で一人暮らしになった母と暮らすため、夫と円満に離婚したい」という相談に、夫婦問題カウンセラーの岡野あつこさんが回答します。

54歳女性の「離婚して高齢の母と暮らしたい」という相談

遠い離島で一人暮らしになってしまった母と暮らすため、離婚を考えています。

うちは夫婦それぞれが自立しているので、別々に暮らしてもいいのではないかと思っています。

ですが、特に夫婦仲が悪いわけでもないので、離婚に至る決定的な理由がありません。

「母と暮らしたいだけ」という理由で、穏便に事を進めるにはどうしたらいいのでしょうか?

今は、夫よりも母のことを思う毎日です。母とはたったの15年しか一緒に暮らせなかったので、これからはできるだけ傍にいたいと思ってしまいます……。

(しなのさん・54歳)

岡野さんの回答:まずは「母の様子を見に行きたい」と相談を

人生相談:高齢の母と暮らすため、夫と離婚したい
Taka / PIXTA

夫婦問題カウンセラーの岡野あつこです。
しなのさんのご相談を受けて、遠い離島に住むお母さんを想像してみました。

 しなのさんは54歳、たぶんお母様は80代ではないでしょうか。お母様とたった15年しか一緒に暮らせなかったという思いがあるから、これからの残り少ない人生をそばにいて見届けてあげたいと思う気持ちはよくわかります。

私も18歳で家を出たので、離れて暮らす親が年を重ね、怪我や病気で弱っていくのを見るのは忍びなかったです。しなのさんもお母様が、そうなるのが目に見えているから、気持ちが急いているのかもしれません。

離島暮らしと聞くと都会のような便利さもなく、年寄りのためのサービスも少なく大変なイメージがあります。

ですが、そういう小さな島にはコミュニティが充実していて、実は元気にやってる人が多いと聞きます。

私の友人の母も沖縄の離島に嫁いで90歳ですが、先日、シンガポール旅行にもついてきたくらい元気な上、地域のコミュニティでの習い事が忙しく、一人暮らしを満喫しています。

誰もがこんなに元気とは限りませんが、地域の福祉サービスなども調べておくに越したことはありません。

15年しか暮らしていないから、今から離島で一緒に暮らし、最後まで看取りたい。そんな、しなのさんの気持ちをお母様が喜んでくれて、二人で仲良く幸せに悔いなく暮らせるかもしれません。

でも、15年しか暮らしていないからこそ、知らないこともあるでしょう。

お互いのライフスタイルや価値観の違い、食べるものや寝る時間、テレビの音量の好みなどの違いも出て、実の母子だから遠慮なくぶつかり合うこともあるかもしれません。

だから夫とは「離婚して母と暮らす」一択で話をするのではなく、「年老いた母が心配でたまらないから、数週間様子を見に行ってもいい?」という相談から始めてはいかがでしょう。

「人生の最後まで一緒にいて、面倒みたい」という極論は、押さえて言わないこと。

相談の仕方にもよりますが 、あなたがすでに答えを決めていて、夫に事後承諾を求めるという形では、夫も面白くないものです。

離婚せず、お互いに自立した関係を目指すのも手

人生相談:高齢の母と暮らすため、夫と離婚したい
8x10 / PIXTA

いきなり離婚の話を切り出せば、問題が大きくなりかねません。ひとまず事情を理解してもらい、お試しとして短期間、母と暮らしてみる。この繰り返しでもいいのです。

数週間~数か月、お母様と一緒の暮らしを続けてみて、最後まで看取るという覚悟が決まったら、いったん夫のもとに戻ってください。

そこで「15年しか一緒に暮らしていない母が年老いて、一人で弱っていくのが不憫でたまらない。だから悔いのないように、母の傍で暮らしながら介護も含めて親孝行したい」と真剣に話をしてみましょう。

もしできなければ、夫を恨んだり、自責の念が生まれたりして、後悔してしまうかもしれない。そのことも伝えるといいと思います。

それでも夫がしなのさんの気持ちをわかってくれず、反対するようであれば、そこで初めて離婚の話を持ち出してみるのです。

最近では 「卒婚」といって離婚をしないまま、お互いが自立した関係で、それぞれの生き方を尊重するのが理想とも言われてます。

しなのさんご夫婦は、浮気をされ、モラハラ、暴力などで離婚したくてたまらないという夫婦とは事情が違います。

だからこそ、離婚ではなく卒婚や、単身赴任のような別居という形で協力してもらえるように、心を込めて夫と話し合いましょう。

諦めず根気よく思いを伝えて、自立した関係の「卒婚」を目指してださい。

 

回答者プロフィール:岡野あつこさん

岡野あつこさん

おかの・あつこ 夫婦問題研究家、公認心理師。離婚診断士(R)。NPO日本家族問題相談連盟理事長。
自らの離婚経験を生かし、夫婦の問題に悩み苦しむ人を一人でも多く救いたいという思いから、離婚カウンセリングという前人未踏の分野を確立。30年間で3万5000件以上の相談を受け、その成功事例ノウハウを数多く持つ。近著に『夫婦がベストパートナーに変わる77の魔法』(サンマーク出版)がある。

離婚相談救急隊運営
・YouTube「岡野あつこチャンネル

★新刊『なぜ「妻の一言」はカチンとくるのか? 夫婦関係を改善する「伝え方」教室』(講談社)11月20日発売!


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