マリメッコ日本人デザイナー・石本藤雄さんの個展へ
2019.06.262018年10月19日
コバミカのおいしい編集生活 第4回
きものリフォームに出合い、おしゃれの新境地を開拓
ハルメク編集部員のコバミカが、企画立案、取材、執筆をする編集生活の中で味わった、おいしい話をお届けします。今回は、先日亡くなられた樹木希林さんが愛用し、読者からも根強い人気がある「きものリフォーム」のお洋服について。
入社した7年前、私は“遅れている人”でした
秋も深まり、おしゃれが楽しい季節がやってきましたね。
カジュアル系、コンサバ系、モード系……おしゃれの系統っていろいろありますが、私コバミカ、7年前に編集部に入って、ひとつ新しいカテゴリーを覚えました。
KR系。
ご存知ですか? ちょっと勝手に略しちゃいましたが、KR、すなわち「きもの(K)リフォーム(R)」。
着なくなったきものをほどいて、そのきもの地で作った服が「きものリフォーム」です。
みなさんの周りには、KR系、いらっしゃいますか?
これですね、ハルメクで「なにそれ~」「初耳~」なんて言っていると、「何、あの無知な子」的な“遅れている人”になるわけです。
7年前、入社したての私はきものリフォームなんて聞いたこともありませんでした。このきものリフォームの作り方を紹介した連載が長年続いていることを聞いて、「そんな世界もあるんだなあ」と思った程度。
しかし、そんなマインドでいたら、完全に私、編集部で“遅れている人”であることを思い知らされました。きものリフォームは、ほかの企画の追随を許さぬほどに圧倒的人気連載として君臨していたのです!
当時、きものリフォームの連載を担当していた先輩は、部員から「すごい、今月のきものリフォーム、いいコーディネートだね」とか「え~、作り方超簡単そう!」「次に紹介するアイテムって何?」といろいろ声を掛けられていて、少女マンガのヒロインのごとく、キラキラとまぶしく私の目に映ったのを覚えています。
なんだなんだ?この奥が深い世界は!
しかし、配属から1か月ほど経って、上司から衝撃の宣告を受けました。
「コバミカさん、あなたにきものリフォーム担当してもらうから」と。
震えました(本当に)。だって、雑誌の看板連載です。入社してまだ間もない私にできっこない。それに何より、まだきものリフォームの世界を理解できていない、私には荷が重過ぎる……。
しかし、固辞する理由も立場にもなく、それから3年近くきものリフォームを担当することになりました。
きものリフォームはいろいろな意味で奥が深いものでした。
きものリフォームファンの多くは、母親や祖母が遺したきものを、きものとして着ずとも捨てずに洋服に作り直し、その思いをも受け継いでいきたいと思っています。流行のデザインの服が安く手に入る時代に、あえて大切な人が着ていたきものに手を掛け、ふたたびの命を吹き込み、着る。これはひとつの継承のかたちであるということに気づかされたとき、人気連載であることが腑に落ちました。
そして、昭和初期や大正時代のきものの中にも、驚くほどモダンでステキな柄がたくさんあることにびっくり。さらに、きものは解くと、36~38㎝幅と18㎝幅の長方形の布に分解されます。このパーツを組み合わせて洋服に仕上げていくパズルのような手技に、なるほど~と感嘆。
で、今ではすっかりきものリフォーム女子です。
連載の担当を交代した今でも、通勤に、休日のお出かけに、海外旅行に着ております。
きものリフォームは世界に通じる“褒められ服”!
きものには紡、絣、小紋、留袖、お召などいろいろありますが、私が好きなのは銘仙。銘仙とは大正から昭和にかけて女性のふだん着として着られていたきもので、色柄が実にモダンなんです。シンプルな無地の洋服も銘仙のリフォーム服を合わせると、一気に華やかになります。例えば、こんな感じで…。
きものリフォームスカートのある日のコーデ。柄がモダンで「本当にきもの?」と聞かれます。
どちらも別々のきものをはぎ合わせています。
きものリフォームのすごいところは、着ているだけでコミュニケーションツールになるということです。しかも、ワールドワイドに。
街中で信号待ちをしていると、ときどき見知らぬ方から「それ、きもの?」と声を掛けていただきます。ずいぶん積極的なマダムにいきなりスカートをタッチされたこともありました。でも、そこからきものの話題になって、だいたい和やかなひとときが流れます。
この夏、台湾に行ったときのこと。
日本語が少し話せる現地の女性に「それは、きものの生地で作ったのですか?」と尋ねられました。きものに興味のある方のようで「ビューティフル!洋服に仕立て直すのはいいアイデアね」と褒められ、ちょっと誇らしくなりました。それもまた、すてきな旅の思い出。
台湾の書店にて。この日も銘仙のスカート。
蒸し暑い日でしたが、通気性がいいので、はいていてとっても気持ちがいいんです。
編集部の現きものリフォーム担当M。正絹のきもの地のワイドパンツをさらりとはきこなします。
こんなふうに、KR系女子がいるハルメク編集部。
あの樹木希林さんも、きものリフォームを愛していました
ハルメクの編集者になっていなかったら、KR(きものリフォーム)系というジャンルを開拓することは、きっとなかったでしょう。
ああ、ありがとう、ハルメク。
ハルメクの連載をまとめた書籍も出ています。右から『毎日着たくなるきものリフォーム』と、『直線で作れて素敵に見えるきものリフォーム』(いずれも税別1400円/ハルメク刊)
そういえば、先日お亡くなりになった女優・樹木希林さんも、きものリフォームをよくお召しになっていました。ご自分で手作りされていたそうです。そして、樹木さんは生前、きものリフォームについてこんなふうに言おっしゃっています。
「きものとしていまひとつなものほど、洋服にしてみるといいものに化けるのよ。そこが面白いの」
きものリフォームって、深いです。
連載「きものリフォーム」の立ち読みがしたい方は、雑誌ハルメクのサイトへ。
ハルメクの本は、全国の書店、ハルメク通販、Amazonでもご購入いただけます。