村上祥子さん「おせちは買って手作りをプラスが正解」
2021.11.052021年11月08日
村上祥子さんのお手軽正月料理レシピ
おせちに一品!村上祥子さんの「がめ煮」のレシピ
料理研究家の村上祥子さんが正月料理として、いつも人に振る舞ってきたと話す「がめ煮」のレシピをご紹介します。「がめ煮」は、村上さんの出身地である福岡の郷土料理でもあるんです。
村上祥子さんのプロフィール
1942年生まれ、福岡県出身。管理栄養士。公立大学法人福岡女子大学客員教授。27歳のときに料理教室を開き、50年以上たった現在も継続中。現在は福岡県で一人暮らし。電子レンジを活用したレシピ本など著書多数。
「がめ煮」とはどんな料理?
「がめ煮」とは福岡県の北西部(筑前国)の郷土料理で、全国的に知られている「筑前煮」の由来となった料理です。「がめ煮」の名前の由来は、鶏肉や根菜などのいろいろな材料を混ぜ合わせた様子を、博多弁の「がめくり込む」と表すことから、という説が有力です。
では、いつ「がめ煮」が「筑前煮」になったのかというと「学校給食で作られたことがきっかけだった」と語る、村上祥子さん。
「調理員さんと栄養士さんが、福岡県の郷土料理である『がめ煮』と、東京の『いり鶏』のいいとこ取りをして作り、『筑前煮』という名前を付けたんです。2020年に、福岡のテレビ局が『おたくのがめ煮の作り方は?』と街頭インタビューをしていました。だいたい10人中9人が、鶏肉と根菜を油で炒めて煮込む『筑前煮風』と答えていました」
村上さんによると「筑前煮」と「がめ煮」は、調理の工程が違うそう。
「筑前煮と異なり、本来の福岡のがめ煮は炒めません。炒めないので、鶏肉を加えて煮るうちにアクがどんどん浮いてきます。それを片っ端からすくって煮続ける料理です。里芋が煮くずれると粘りが出るので、ふたはしません」
がめ煮は「ハレ」の料理にも「ケ」の料理にもなる
「夫が製鉄所の工場勤務だった頃の元旦の朝は、部下の方たちに「がめ煮」とお屠蘇をふる舞い、『あけましておめでとうございます』と新年を寿ぐことがお約束でした。三交代制で夜通し働いた現場を上がったその足で、200人近くの方が年賀に見えるので私は大忙しでしたね。『がめ煮』は、めでたい料理としておせちと同様、人に振る舞うのにもいい料理なんです」
また、お正月版「がめ煮」レシピの鶏肉を油揚げに変えれば、不祝儀版の「ケ」の日の料理にもなるそう。
「母が亡くなったとき、私は1歳と0歳の2人の子どもを連れて東京から実家に戻り、葬儀の準備をしました。通夜はひと晩中、お線香を絶やしません。親類縁者、知人の訪問を受けます。お手伝いさんや学校時代の友人が手伝ってくれ、簡単な精進のお膳を出しました。
その時のレシピは油揚げの入った煮しめに、香の物、かやくめし、豆腐とわかめのすまし汁などでした。年末年始や葬儀のような忙しいときでも、アクを拾うことだけ気を付ければ手軽に作れる料理ですので、ぜひ作ってみてくださいね」
今年の正月はおせちに「がめ煮」をプラスしてみませんか?
村上祥子流!がめ煮のレシピ
がめ煮の材料(6人分)
- 水…6カップ
- 和風だしパック…2個
- 干ししいたけ(小)…10枚(中なら5枚)
- 大根…500g
- こんにゃく…250g
- れんこん…200g
- ごぼう…200g
- にんじん(花形に抜いたもの)…10枚
- 海老いも(冷凍)…小10個
- 鶏もも肉…200g
- さやえんどう…8枚(筋を取ってゆで、冷水に移し、1枚を2つに切る)
【A】
- しょうゆ…小さじ1
- ごま油…小さじ1
【B】
- うすくちしょうゆ…大さじ1
- 塩…小さじ1
- みりん…1/3カップ
- 酒…1/3カップ
- 砂糖…大さじ1
【C】
- かたくり粉…大さじ1
- 水…大さじ2
がめ煮の作り方
1.鍋に水を入れ、だしパックと干ししいたけを加え30分おく。火にかけて、煮立ったら中火で5分煮て、だしの黄金色になったら火を止め、だしパックを取り出す。
2. 干ししいたけを取り出して、軸を取る。大きければ2つに切る。
3.大根は皮をむいて縦十字に4等分し、乱切りにする。
4.こんにゃくは8~9mm厚さに切って、中央に切り目を入れる。片方の端をくぐらせて通し、手綱形にする。
5.れんこんは皮をむいて乱切りにする。ごぼうは皮をこそげて1cm幅の斜め切りに、細いときは4cm長さに切る。水に10分さらし、ざるへ上げる。
6.にんじんは皮をむいて、幅1cmに切り、花型で抜いたものを用意する。
7.鶏肉は10個に切り【A】をまぶす。
8.3~5を鍋に入れ、海老いも、しいたけ、にんじん、鶏肉を置く。
9.【B】を加え、具材が少し頭を出す程度に1のだしを注ぎ、強火にかける。煮立ったらアクをすくい、落としぶたをして、煮汁があらかたなくなるまで強火で煮て、火を止める。
10.ボウルに【C】を合わせ、鍋の煮汁を移して泡立て器で混ぜ、とろみがついたら鍋に戻し、全体に混ぜる。
11.器に盛り、さやえんどうを添える。
※冷蔵で1週間保存できます。
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撮影=田中大造 取材・文=小林さやか(ハルメク 健康と暮らし編集部)