ハルメク編集部が選ぶ大人の女性におすすめの書籍情報

【書評】『さんさん録【新装版】』他2冊

公開日:2022.11.19

雑誌「ハルメク」の編集部員がおすすめする新刊情報を毎月お届けします。今月は、『この世界の片隅に』などで知られる漫画家、こうの史代(ふみよ)さんの初期名作の新装版など3冊をご紹介します。

牛越 博文『介活入門 将来の介護に備えて、今やるべきことがわかる本』

誰もが、ある日突然、直面するかもしれない介護。日本には介護保険制度がありますが、サービスを受けるにも、お金の負担を減らすにも、とにかく「申請」しなければいけません。

これまで多くの場合、介護が必要になると、子どもや配偶者など「家族が申請」してきましたが、今後ますます高齢化が進んで、子どもにも頼れなくなると、「自分のことは自分で何とかする」が新たな常識となるかもしれないのです。

そこで今こそ重要なのは「終活ならぬ“介活”」だと本書は訴えます。元気なうちから情報を集め、手配まで準備するのが介活。介護の入門書として読んでおいて損はありません。

樹木希林『樹木希林120の遺言死ぬときぐらい好きにさせてよ』

2018年に亡くなられた樹木希林(きき・きりん)さんが残した数々の言葉を、「生・老・病・死」など普遍的なテーマごとに収めた本書。

「自分の判断を超えるものに対して、拒否したり溺れたりしないでもう少し自然でいたいなあと思うのね。だって、それほどわたしは強くも弱くも偉くも駄目でもないんだもの」「どうぞ、物事を面白く受け取って愉快に生きて。あんまり頑張らないで、でもへこたれないで」などのメッセージが、見開きに一つ、エピソードとともにまとまっています。

75年の人生の折々で、樹木さんが物事をどう捉え、向き合ってきたのかに触れられ、静かな力が湧いてきます。

こうの史代『さんさん録【新装版】』

3年前に定年を迎えた参平(さんぺい)は、突然の事故で妻に先立たれ、息子家族と同居することになります。新たな生活に戸惑う参平を支えるのは、妻が生前に記した1冊のノート。

そこには、肉じゃがの作り方、ボタンの付け方、かぜをひいた人の看病の仕方、孫娘の喜ぶこと……など、生活の知恵や息子家族との付き合い方のコツが細やかに綴られていました。

定年まで仕事一筋で家庭を顧みなかった参平は、やがて息子家族の頼れる「主夫」として暮らしに根を下ろし、ほのかな恋も生まれて……。『この世界の片隅に』などで知られる漫画家、こうの史代(ふみよ)さんの初期名作の新装版。やさしさとほろ苦さに浸れます。

※この記事は2022年12月号「ハルメク」に掲載された内容を再編集しています。

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