シニア版恋愛ドキュメンタリー番組「シニアノアイ」

平均70歳の恋愛番組!大人に恋が必要になる瞬間とは

公開日:2023.12.07

シニアが恋愛に踏み出したくなる時、それはどんな時なのでしょうか。「ハルメク」の元編集長であり、コラムニストの矢部万紀子さんが、参加者の平均年齢70歳の恋愛ドキュメンタリー番組「シニアノアイ」を鑑賞。世にも珍しい恋愛番組で気付いたこととは?

「シニアノアイ」は「恋愛リアリティーショー」のシニア版

63歳から76歳までの男女3人ずつが海辺の素敵スポットに集まり、1泊2日でゲームをしたり、デートをしたり……最後の告白タイムでカップル成立を目指すーーそんな番組「シニアノアイ」をYouTubeで見ました。

と、ここまで読んで、「あら、アマゾンプライムの『バチェラー』みたい?」と思った方、その通りです。「シニアノアイ」は「恋愛リアリティーショー」のシニア版。そもそも、トヨタ自動車の免許がなくても乗れる新しいモビリティ「C+walk(シーウォーク)の移動の楽しさを伝えるために作られた、30分番組なんだそう。

見始めるとすぐ、出演者のほとんど(全員?)がシニア向け通販のCMで見たことのある人だと気付きます。「あら、お仕事で参加?」と少し冷めた目になるけれど、徐々に気分が変わります。語る言葉にウソがなく、「お仕事かもしれないけど、リアルだなー」と引き込まれます。どんな言葉に?という話の前に、登場順に6人を紹介します。

「シニアノアイ」登場人物を紹介

「シニアノアイ」登場人物を紹介

まず男性陣。

「シニアノアイ」登場人物を紹介

マーさん(63歳)が「最年少の元銀行マン」。

「シニアノアイ」登場人物を紹介

ぶっちゃん(75歳)が「神社仏閣を修復する現役職人」。

「シニアノアイ」登場人物を紹介

まるさん(70歳)が「『ズンバ』を踊る天然シニア」。

次が女性陣。

「シニアノアイ」登場人物を紹介

ヤッコちゃん(64歳)が「包容力満点、癒し系キャラ」。

「シニアノアイ」登場人物を紹介

マジちゃん(76歳)が「石油王とも恋愛経験のあるピアニスト」。

「シニアノアイ」登場人物を紹介

チコちゃん(74歳)が「料理上手の元国際派キャリアウーマン」。ちなみにカギカッコの中は、番組がつけたと思われるキャッチコピーです。

離婚歴のある人たちのデートでの会話が興味深い!

離婚歴のある人たちのデートでの会話が興味深い!

C+walkでお出掛けし、1対1で語り合う「デート」で引き込まれたのが、離婚歴のある人たちの言葉でした。

チコちゃんがニュージーランド人の夫と別れたのは、彼の浮気が原因だったそうです。「そのときの対処が、あまりにもひどかったので」というチコちゃんに、17年前に妻を亡くしたというまるさんが「失礼ですけど、(それは)おいくつぐらいのときに」と尋ねました。「7年前」とチコちゃん。現在74歳だから、別れたのは67歳。サラリと答える様子に、強さがにじみます。

次にチコちゃんと話したのは、マーさんでした。「今後の相手に望むこと」を尋ねるマーさん。「浮気しない人ですね。誠実な人」とチコちゃん。僕も同じだ、過去の話で恐縮ですがと言って、マーさんは「相手から離婚したいと言われた」と明かしました。「別に僕、浮気もしたことないですし、お金遣いが荒いっていうことでもないし」。チコちゃんが「じゃあ突然いなくなって、つらかったんじゃないですか」と返します。マーさんは、「海沿いの、広めのマンションにいたもんですから、一人になったらもうその静けさが」と語ります。

離婚歴のある人たちのデートでの会話が興味深い!

こんな“大人の会話”と同時に、笑えるシーンも。昔の写真で誰かを当てるというコーナーがあり、レオダード姿の女性は、かつてのマジちゃんでした。「素敵」「スタイルいい」という声に、マジちゃんは「今は別人100号になっちゃって」。そう、アニメにもなった「鉄人28号」。同世代だからこそのギャグです。

自分の秘密をメモに書いて渡すというコーナーで、まるさんは「右目は二重テープを貼っています」と明かしました。「今度、アイプチ教えてあげたら」と反応したのはヤッコちゃん。ナイスツッコミ。笑ってあれこれをやり過ごす。そんなのお茶の子さいさいなのが、大人というものです。

シニアが恋愛に踏み出すのはどんなときか

シニアが恋愛に踏み出すのはどんなときか

ヤッコちゃんは30数年前に離婚をしたそうで、子育てをし、仕事をし、今は「毎日テレビ見てるような状況なんですけど」と笑って自己紹介をしていました。まるさんとのデートでは、「次に進んでいかないと、このまま寂しい人生になっちゃうかな」と言い、でもすぐに「楽しくニコニコ暮らしてますけど」と続けていました。

ああ「寂しい」と「ニコニコ」の天秤なのが「シニアノアイ」なんだ。そう思いました。

年齢とともに体が弱っていくことは、62歳になった私が太鼓判を押します。体と心はパラレルかどうかはわからないけど、たぶん心も弱っていくのでしょう。

だから「ニコニコ」を基本にしていた人も、徐々に「寂しい」が増えていく。そんな可能性はあると思うのです。天秤は日々揺れるでしょうし、「寂しい」を認めるには勇気がいります。寂しい=弱さ→認めたくない。長く生きると、そんな考え方も強くなる気もしています。

それでも心の奥の奥にある「寂しい」がじわじわ増えて、「ニコニコ」を超える。そんな日が来たら、その時が「シニアノアイ=恋愛」の出番なのではないでしょうか。

あ、出番が来ても、そこからの判断は人それぞれだと思います。若い人にもシニアにも、「恋愛」は目標ではありませんから。

ツッコミ不可避の「昭和の男性」の恋愛観

ネタバレになってしまいますが、最後に「告白タイム」の結果発表を。カップルがひと組、成立しました。ヤッコちゃんとマーさん。女性陣3人は、全員が違う人の名前をあげました。ところが男性は、全員がヤッコちゃんだったのです。

ヤッコちゃんのキャッチコピーは、「包容力満点、癒し系キャラ」でした。年齢も職業もバラバラの男性が、みんな「包容力&癒やし」を求めていたんです。もー、昭和の男性ってば、わかりやすいんだからー。と思った次第です。



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矢部 万紀子

1961年生まれ。83年朝日新聞社に入社。「アエラ」、経済部、「週刊朝日」などで記者をし書籍編集部長。2011年から「いきいき(現ハルメク)」編集長をつとめ、17年からフリーランスに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』(幻冬舎新書)

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