50代からの女性のための人生相談・98

人生相談:母が介護施設を拒否して帰りたがる…

太田差惠子
回答者
介護・暮らしのジャーナリスト
太田差惠子

公開日:2022.10.22

更新日:2022.12.09

読者のお悩みに専門家が答えるQ&A連載。53歳女性の「特別養護老人ホームに入居した母が、娘たちとの生活を望んでいるけど難しい…」というお悩みに、介護・暮らしのジャーナリスト、太田差惠子さんが回答します。

53歳女性の「施設を嫌がる母の介護」についてのお悩み

数年前に脳梗塞を起こして救急搬送された母が、リハビリ病院を経て、姉の家の近くの特別養護老人ホームに入居しました。

しかし、本人(母)は施設を気に入っていません。

 母は娘との生活を希望していますが、姉の家も私の家も自宅での介護は難しい状況です。施設を変えることも検討しましたが、経済的に、あまり高い有料のホームは難しいです。 

姉も私も、母のためにどうにかしてあげたいとは思うのですが、いい解決策を見つけられず、悩んでいます。 

(53歳女性・ジャクリーヌさん)

太田さんの回答:家族は動じず待つことが大切

太田さんの回答:家族は動じず待つことが大切


脳梗塞を発症され、現在、特養(特別養護老人ホーム)に入居中のお母様についてのお悩みですね。入居できても、ご本人が施設になじめないと、家族としては、どうしたものかと頭を抱えてしまいます。

ジャクリーヌさんのお母様は、特養に入居されているので、重度の要介護度だと推察します。施設を気に入っていないとのことですが、それはジャクリーヌさんのお母様に限った話ではありません。

「帰りたい」「家族と暮らしたい」と訴える親は珍しくない、というか……「普通のこと」と言っても過言ではないでしょう。

そして、それは特養に限った話ではなく、有料老人ホームでも同じです。つまり、別の施設に移しても、お母様が気に入るとは限らないということです。

いわゆる高級有料老人ホームを取材したときのことです。共用スペースには、シアタールームまであり、居室もラグジュアリーな雰囲気が漂っていました。スタッフの方たちもにこやかで、穏やかな空気が流れていました。

さぞ入居者は満足しているのだろうと思いきや、インタビューをすると、「ほんとは、家に帰りたい」「子どもがうるさく言うから仕方なく、ここに居る」とため息まじりに話す人の多いこと……。

実際、施設に見学や取材に行くと、「帰る」とスタッフに訴えている入居者を見かけることは少なくありません。

ポジティブな言葉を掛けながら、様子を見て

ポジティブな言葉を掛けながら、様子を見て

家族がオロオロすると「退去できるかもしれない」と思って、さらに不平不満を口にすることがあります。「ここは、いいホームね」と前向きな言葉掛けをして、多少のことでは動じない姿を示しましょう。
 
お母様の自宅にあったお気に入りの置物や額などを施設の居室に飾ってみるのも手。健康上、問題がなければ、好物を差し入れるなど、親の気持ちが和むことを考えてみましょう。

また、施設のスタッフから、普段の様子を聞くと同時に、お母様の趣味や得意なことなどをスタッフに伝えます。普段のお母様との会話に取り入れてくれるでしょう。

時間はかかるかもしれませんが、「ここが自分の居場所なのだ」と納得してくれるのを待ちたいものです。

施設への不信感は放置してはダメ!

施設への不信感は放置してはダメ!

ただし、少数ではありますが「高齢者虐待」など見過ごせないことが潜んでいる施設もあります。

お母様から話を聞いたり、様子を見たりして、適切なケアがなされていない(適切なケアがなされていないから、お母様が嫌がっている)と不審に思う場合は、施設長に直接相談してください。

お母様が施設内での人間関係に悩んでいるような場合も、相談してみるといいでしょう。

また、各施設には、苦情を受け付ける窓口があるはずです。直接言いにくいなら、自治体の介護保険課などで相談することもできます。

もしも、相談や要望をしても不信感を払拭できない場合は、お母様の命と尊厳を守るために施設を移す検討が必要かもしれません。

回答者プロフィール:太田差惠子さん

回答者プロフィール:太田差惠子さん(介護・暮らしジャーナリスト)

おおた・さえこ 介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長、AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)。京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」 等の視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。著書に『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと』(翔泳社)など多数。最新刊は『子どもに迷惑をかけない・かけられない!60代からの介護・お金・暮らし』(翔泳社)。


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