50代からの女性のための人生相談・141

人生相談:子どもへの相続…手続きを簡単にするには?

畠中雅子
回答者
ファイナンシャル・プランナー、CFP(R)
畠中雅子

公開日:2023.07.25

「50代からの女性のための人生相談」は、読者のお悩みに専門家が回答するQ&A連載。今回は62歳女性の「子どもに苦労させない相続の準備」についてのお悩みに、ファイナンシャルプランナー・畠中雅子さんが回答します。

62歳女性の「相続の今からできる準備」についての相談

昨年、親の遺産相続の手続きなどを、私が取り仕切って行いました。何冊も本を読んで勉強し、税理士さんとも綿密にコミュニケーションをとって……という大仕事でした。

そんな自分の経験から、「子どもには同じ苦労をさせたくない!」と思うようになりました。できるだけシンプルで、手間がかからないように財産を残したいです。

節税や生命保険の加入、生前贈与など、今からできる準備や方法などのアドバイスをお願いします。

62歳女性・みちゃさん

畠中さんの回答:シンプルな相続より、内容を明確に伝えて

畠中さんの回答:シンプルな相続より、内容を明確に伝える!

「相続をシンプルに」という点だけにフォーカスすると、預貯金や運用商品のように、換金しやすい財産を多く保有することを目指す形になってしまいます。

ですが、預金や運用商品は、亡くなった日(運用商品はいくつかの日付の選択肢があります)の残高で相続財産として評価され、評価額がそのまま相続財産になってしまいます。

これに対して不動産は、実際の売却価格よりも、相続財産としての評価額の方が低くなるのが一般的。さらに、亡くなった方と同居していた親族、あるいは別居はしていたけれど、賃貸住まいの親族が親の住んでいた家を相続すれば、小規模宅地の特例といって、評価を80%も下げてもらえる特例も使えます。

また配偶者間での相続については、法定相続分か1億6000万円までのいずれか高い方の金額までは、配偶者の特例(配偶者の税額の軽減)が使え、相続税が課税されません。ただし小規模宅地の特例も配偶者の特例も、相続が開始してから10か月以内に相続税の申告書を提出することが、特例を使うための条件になっています。

「特例を使えば基礎控除内に収まるから、申告書は出さなくても大丈夫だ」と勘違いしている方もいますが、それは間違った認識です。申告書の提出をしないと、特例を使えなくなる可能性がありますので、注意してください。

2024年から生前贈与のシステムが変わる!

2024年から生前贈与のシステムが変わる!

さて、みちゃさんもお考えになっているように、相続財産を減らすために、贈与税の基礎控除内での生前贈与を行う方はたくさんいます。贈与税の基礎控除は110万円ですので、毎年110万円までのお金を、子や孫に贈与していく方法です。

継続して贈与を続ける方も少なくないようですが、生前贈与の注意点は、お子さん自身が管理していて、お子さん自身の意思で引き出しが自由にできる口座への贈与でないと、贈与として認められないこと。親自身が管理している口座に110万円を振り込んでも、贈与としては認められないのが原則になります。

また、生前贈与で気を付けたいのは、亡くなる前の3年間に行った生前贈与分は、相続が発生した際に相続財産に加算しなければ(戻さなければ)ならないことです。

さらに2024年からは、相続財産に加算する年数が「7年間に延長」されます。2023年の税制改正で、7年間に延長されることが決まったからです。

62歳のみちゃさんであれば、生前贈与できる期間はまだまだありそうですが、すでに80代などになられている方は7年に延長された点を理解して、生前贈与を行う必要があります。

死亡保険金には法定相続人の非課税枠がある

死亡保険金には法定相続人の非課税枠がある

次は、保険について考えます。死亡保険金を法定相続人が受け取ると、1人につき500万円の非課税枠が使えます。お子さんが2人いれば、1000万円までは非課税になるわけです。

みちゃさんのご家庭で、死亡保険金の金額が法定相続人の人数に満たないのであれば、生命保険を活用して相続対策を行う考え方もあります。

ここからは、まとめになります。

みちゃさんが希望されているシンプルな相続対策は、お子さんたちにとってわかりやすいかもしれませんが、シンプルさを追求すると、納税資金が増える可能性もあります。

シンプルさを追い求めるよりも、保有している財産の状況をきちんと書き出して、誰に、何を、どのくらい相続させるつもりなのかを、お子さん全員に説明してはいかがでしょうか。

基礎控除を超える相続財産をお持ちだったり、何らかの特例を使うなどで相続税の申告書の提出が必要であれば、説明時には親御さんの相続の際にお世話になった税理士さんなどに同席してもらうのがおすすめです。

税理士さんが同席していれば、間違った解釈については修正してくださるはずですし、親も子も正しい知識が身に付くはずだからです。

お子さんたちが相続財産や相続の仕組みを理解していれば、実際に相続が発生したときに、みちゃさんが経験されたような、大変な思いをしなくてすむのではないでしょうか。

回答者プロフィール:畠中雅子さん

畠中先生

はたなか・まさこ 1963(昭和38)年生まれ。ファイナンシャル・プランナー、CFP(R)。『70歳からの人生を豊かにするお金の新常識』(高橋書店刊)他、著書は70冊以上。また「ミニチュアワールドと観光列車」に造詣が深くブログを開設している。


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